【ビジネスの裏側】なぜ出さない決算公告 法で義務付けも実態は数%? 罰金も適用少なく - 産経ニュース

【ビジネスの裏側】なぜ出さない決算公告 法で義務付けも実態は数%? 罰金も適用少なく

 株式会社に義務付けられている「決算公告」。中小を中心とした非上場企業で、これを行わないケースが多いという。違反すると100万円以下の罰金が課されるものの実際に適用例は少なく、決算を開示せずとも事業、取引は行えるためだ。ただ、会社のコンプライアンス(法令順守)を問う声は年々強まっており、今後、中小企業の決算公告をめぐる環境は変わる可能性もある。(織田淳嗣)
 いまだ160件
 会社法440条では、定時株主総会の終結後「遅滞なく」、貸借対照表またはその要旨を公告しなければならないと定めている。規模の大きな会社はさらに損益計算書も必要となる。より詳細な「有価証券報告書」を提出が義務づけられている上場会社や、会社法施行以前に決算公告義務がなかった特例有限会社(旧有限会社)は、これらは必要ない。
 公告の方法は、会社の事業目的などを記した「定款」に定めがない場合は、官報となる。官報以外には日刊で発行されている新聞への公告のほか、平成13年の会社法改正によりインターネットで掲示ができるようになった。5年間の掲載が義務づけられている。自社のウェブサイトがない場合は、専門業者のサイトでの掲載もできる。
 中小企業関連の約2万7千団体が加盟する全国中小企業団体中央会(東京)は13年当時、ネットでの公告を同会のサイトで請け負うサービスを開始。担当者は「当時は、かなり宣伝を行って利用を呼びかけた」と振り返る。結果150件の応募があったが、その後の利用はほとんど伸びず、現在も160件程度だ。
 また、決算公告代行サービスを行っているCSCによると、決算公告を行っている企業は株式会社全体の数%にとどまっている。
 銀行も無視
 決算公告を怠った場合の罰則は、100万円以下の科料処分(罰金、976条)となる。しかし適用された例は極めて少ない。法務省や経済産業省では罰が科された前例について統計をとっておらず、法務省民事局の担当者は「実際に罰せられた例は聞いたことがない」という。
 一方、同会によると年間に数件、決算公告を行わずに罰金を科される企業があるが、担当者は「企業自体が開示していないため、明らかにならない」と解説する。
 決算公告を行わない理由として、中小企業のコンプライアンスに詳しい湊法律事務所(東京)の野坂真理子弁護士は「他社に経営状況を知られたくない企業が多いことや、費用がかかり手続きが面倒であることが挙げられる」と解説する。
 また、決算を開示しなくても業務上に支障がないことも大きな要因。都市銀行の営業経験者は「決算公告の有無を融資の際に気にすることはほとんどない。融資にあたって必要な書類でより詳細な情報が網羅されているためだ」と説明する。コンプライアンス上、問題があるはずの「非開示」の状況は、現時点で融資に影響を与えていない。
 今後マイナスに
 実際に決算公告を行う場合はどのような手続きが必要か。
 官報に掲載する場合は6センチ四方程度の最も小さなサイズで7万2978円。新聞への公告では数十万円の費用がかかるケースがある。中小企業は貸借対照表については要旨のみの掲載で足りる。自社、他社を問わずウェブサイトに掲載する電子公告の場合には、数万円程度で代行するサービスがあり、官報や日刊紙より安くすむが、全文の掲載が必要になる。
 野坂氏は「CSR(企業の社会的責任)が声高に叫ばれる波は、中小企業にも来ている。決算をオープンにしていないことが、今後マイナスに働く可能性がある」と指摘する。