復興住宅整備に温度差 「古里愛着」「安全優先」九州豪雨10カ月

 

 昨年7月の九州北部の豪雨で被災した福岡県朝倉市で、災害公営住宅(復興住宅)の建設を巡る考え方のずれが鮮明になっている。古里への愛着から山間部での整備に期待を寄せる住民に対し、市側は「安全最優先」で慎重な立場だ。豪雨から5日で10カ月。過疎化が進む山間集落の存続を左右しかねない問題に住民は危機感が募る。

 復興住宅は、災害で自宅を失い自力再建できなくなった人のために自治体が整備する。賃貸だが、高齢の被災者にとっては「ついのすみか」になる可能性もある。

 市は昨年11~12月、被災者の意向調査を実施し、市東部の杷木地域にある小学校跡地など公有地2カ所を建設候補地に選んだ。仮設住宅の入居期限となる来夏の完成を目指している。

 候補地周辺は役所や店舗があり便利だが、同じ杷木地域でも山間部の松末地区からは約3キロの距離がある。坂道が続き、車がないと、高齢者が日常的に行き来するのは難しい。仮設住宅に身を寄せる70代男性は「住めない状況が長引けば、いつか誰もいなくなる」と不安を口にする。

 今回の豪雨で松末地区は、最も被害が大きかった場所の一つ。土砂や流木による住宅損壊が相次ぎ、市営団地も全壊した。地区の自治組織によると、住民約700人のうち、戻った人は約4割にとどまる。伊藤睦人会長(73)は「自力再建は困難でも戻りたいと願う人は多い。候補地での着工に納得が得られるだろうか」と話した。

 一方で、地区では土砂崩れや河川氾濫の対策工事がいっこうに進んでいない現状がある。市側は「復興住宅を整備しても、逆に入居者に不安を与える」とし、溝は深い。

 熊本地震の被災地で復興住宅問題に関わる熊本県立大の沢田道夫准教授(地方自治)は「安全性は分かるが、住民の思いとかけ離れてしまってはいけない。集落再生の道筋を描く中で、復興住宅をどう位置付けるかについて協議を重ね、双方が折り合える点を模索するべきだ」とした。