京都の注目エリアに小学校新設 市内で26年ぶり、児童急増で

関西の議論

 京都で教育熱心な子育て世代に人気がある京都市中心部屈指のエリアに今春、26年ぶりに新たな小学校が誕生した。その名も市立御所(ごしょ)東小学校(上京区)。全国的にも教育内容が注目される近くの御所南小(中京区)が児童急増で校舎が足りなくなり新設されたのだ。「御所南」は学区、居住区として一大ブランドを確立したが、一方の御所東小も、京都ならではの理由で、保護者だけでなく地元住民も新設に期待を寄せているという。(田中幸美)

児童増えすぎて…

 「学校が分かれるのは寂しかったけど、今いる友達とよりよい学校を作りたい」。4月3日、御所東小で行われた開校式で、6年生の女子児童(11)は声を弾ませた。式には2~6年の児童214人や地域住民ら約530人が出席し、新たな学び舎の門出を祝った。

 京都御所(御苑)のすぐ東側に位置する御所東小。新1年生を除く児童はもともと南に約550メートル離れた御所南小の在校生だった。4小学校、9学区を統合して平成7年に開校した御所南小の児童は当初は662人だったが、21年度には千人を突破。29年度は1252人に上った。

 背景には、教育レベルの高い公立小ということが大きな要因としてあげられる。「読解力育成に重きを置いた教育や、京都御池(おいけ)中学と連携した小中一貫教育がメディアで紹介され、全国的に知名度と人気が高まった」(市教育委員会担当者)

 5年前に長女の入学を機に御所南小の学区内に転居した医師の男性(42)は「4人の子供全員を私立に通わせるのは難しい。いい公立小学校に通わせたくて引っ越した」。

 このように学区外から転居してくる児童が多く、増加する児童数に既存の施設だけでは足りずにプレハブ教室などで対応するようになった。その結果、市教委は9学区のうち、御所の東側で隣り合う春日、銅駝(どうだ)の2学区を分離させて御所東小の新設を決めた。

日本初の学区制

 「番組小学校がどんどんなくなる中で、春日小(平成7年閉校)跡地にまた小学校ができて本当にうれしい」

 春日学区自治会の松本修一会長(68)は語る。他の都市部でも子育て世帯の都心回帰の傾向は強まっているが、京都市で26年ぶりとなる小学校の新設は、地元には別の意味合いをもたらした。

御所南小学校から分離独立して開校した御所東小学校=4月3日、京都市上京区

 そこには、小学校の成り立ちが他の地域とは少々異なる京都の事情がある。京都では150年前、幕末の動乱や、東京への遷都でまちが衰退するなか、都市再興には教育が不可欠だという考えの下、室町期から続く「町組(ちょうぐみ)」と呼ばれる自治組織ごとに小学校を建てることが計画された。

 明治2年に有志の寄付で、町組を再編した「番組」ごとに64校の小学校が開校した。これが番組小学校だ。同5年の明治政府による「学制」創設に先立つもので、番組小は「日本初の学区制小学校」とされる。

 番組小は名称を変えながら存続したが、平成に入って市中心部のドーナツ化現象や少子化の影響による統廃合で次々と姿を消し、今では上京区の4校を残すのみとなった。だが、現在も自治会は番組小の旧学区単位で活動するなど、地域住民の番組小への思いは強い。

 こうしたなか、御所東小は番組小の一つである旧春日小跡地に建てられた。平成7年に周囲の小学校と統廃合されて閉校となっていただけに、地元の喜びもひとしおだ。

 「実は新設が決まった当初、『校名は春日に』という地元の声もあった」と春日学区の住民らは明かす。番組小が統廃合されることはあっても、復活するのはレアケース。だからこそ、住民の間では「春日小」待望論もあったという。

 ただ、校名は最終的に春日、銅駝の両学区から公募した結果、多数を占めた「御所東」に決まった。

地域で子供育てる

 番組小の跡地利用としては、いずれも中京区の京都国際マンガミュージアム(旧龍池小)や京都芸術センター(旧明倫小跡)といった文化施設や、地域住民が活動するスペースを確保しながらホテルなどを併設した複合施設に転用するケースが相次いでいる。

 旧春日小跡地は文部科学省の施設として使用された後、デイケアセンターとして使われ、その後の具体的な活用策は決まっていなかった。こうした中での小学校復活という選択肢は、地元にとっても願ったりかなったりだった。

 さらに地元の活性化にも期待は高まる。「学校は地域の核になる存在。もういっぺん学校を盛り上げて、子供たちを地域で育てていこうと思っている」と松本会長。市教委は御所東小に御所南小の教育方針を継承させる方針で、担当者は「御所南以上に発展させたい」と意気込む。

居住区ブランド化も

 御所南小の人気が上がり、学区だけでなく居住区としてもブランド価値を確立した御所南エリア。対して、御所東エリアも閑静な住宅街として人気が高く、今後、御所東小の運営が成功するなどの付加価値次第では「御所東ブランド」も現実味を帯びる。

御所東小学校の校舎は木材をふんだんに使い、廊下も広々としている=京都市上京区

 昨年10月に御所東の学区に転居してきた会社経営の男性(42)は「御所南も評判はいいが、子供が多過ぎるので、あえて御所東の学区内に決めた」と語る。御所東学区では今年度、私立小学校に入学した新1年生の数がここ数年と比べて減ったとの声もある。

 銅駝学区自治連合会の辻本仁志会長(74)は「運動会や盆踊りも子供なしでは話にならない。子供あっての地域」と語り、御所東小にこう期待を抱く。「御所南小から独立したが、同じ『御所の仲間』としてこれからも連携したいし、御所南小よりもいいものを目指したい」

 来年は番組小誕生から150年の節目となる。番組小跡地に誕生した御所東小は地元の後押しを受け、どんな将来像を描いていくのか。目が離せない。