【関西の議論】2年連続で予算案が廃案、議会は流会続き…異常事態に揺れる奈良・河合町 - 産経ニュース

【関西の議論】2年連続で予算案が廃案、議会は流会続き…異常事態に揺れる奈良・河合町

認定こども園の建設をめぐり、議会が割れている奈良県河合町の町役場
 大阪のベッドタウンとして発展を遂げた奈良県河合町の議会が、昨年の6月定例会を最後に1年近くにわたって審議が事実上ストップするという異常事態に陥っている。3月定例会では一般会計当初予算案が2年連続で廃案に。住民からは「議員はいったい何をしているのか。仕事をしてほしい」と怒りの声が噴出している。背景には、賛成派と反対派が真っ二つに割れた「認定こども園」の建設をめぐるせめぎ合いがあるとみられ、「来春に任期満了を迎える町議選まで、議会を開かないつもりではないか」と疑念を抱く関係者もいる。(石橋明日佳)
厳しい財政
 奈良県北西部に位置する河合町。大阪市内まで電車で1時間圏内というアクセスの良さから、住宅地として急速に発展した。昭和40年代以降、隣の上牧町にまたがる「西大和ニュータウン」が開発され、人口は右肩上がりに増加。だが、高齢化に伴い、平成12年以降は減少の一途をたどっている。
 町税、地方交付税はおのずと減収し、財政は悪化。平成28年度決算では、収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率が19%に達し、新たに地方債を発行する際に県の許可が必要な「起債許可団体」(18%以上)に転落した。ある町職員は「河合町は周辺自治体に比べて早く成熟しすぎた。高齢化と人口減の波が一気に押し寄せてきている」と話す。
 財政健全化を目指し、町はさまざまな施策を行ってきた。周辺の王寺、広陵、上牧の各町を含む北葛城郡の4町合同で、子育て世代を呼び込む「移住プロジェクト」を実施。また、TBSの人気番組「ナイナイのお見合い大作戦!」のロケ地に手を挙げるなど、あの手この手を打ち出している。
 中でも、肝いりの政策が認定こども園の建設だ。町内にある3つの保育園と幼稚園は、いずれも建物が老朽化。町は幼保一体型のこども園設置の計画を立てているが、これをめぐって議会が割れている。
こども園建設めぐる攻防が表面化
 こども園の建設については、平成28年3月の臨時議会で4300万円の設計予算を可決。だが、設計の入札を終えた同10月ごろから反対派が台頭し、現在まで賛成派と激しい綱引きを繰り広げている。
 反対派は町の経常収支比率の悪化を問題視。園の建設費は約12億円で、うち半分は国の補助金を充てるとしているが、残りの約6億円は町が負担することになる。
 反対派の一人、疋田俊文議長は「財政が悪い中でこども園を建設すれば、将来の子供たちの負担になる。そもそも費用が12億円もかかるのか、納得のいく議論がなされていない」と主張し、白紙に戻すよう求めている。一方、賛成派のある議員は「今後の将来を担う子供を育てる施設を早急に作らなければ、町が衰退してしまう」と一歩も譲らない。
 現在、町議13人のうち反対派は6人。賛成派は7人いるが、1人は病欠中だ。勢力は6対6と拮抗(きっこう)しているとはいえ、反対派の議長は採決に参加できない。今の状況で採決されれば、こども園建設が可決され、計画が進む可能性が高いとみられる。
 ところが昨年9月の議会運営委員会では、委員6人のうち反対派の3人が病気を理由に欠席。必要な人数がそろわず委員会は開会できず、9月定例会は流会になった。
 12月定例会も一般会計補正予算案など8議案が上程されたが、反対派の欠席などで大半の議案が審議未了で廃案となった。
 さらには年が明け、30年度一般会計当初予算を決定する3月定例会も議案が審議されず流会となり、予算案は廃案に。流会続きの議会には、傍聴の町民から「ちゃんと仕事せえ」「税金の無駄遣いや」といったヤジも飛び交う始末だ。
 岡井康徳町長は当初予算案を含む25議案について、年度内の議会承認が難しくなったとして専決処分した。前年も同様の混乱で当初予算案が審議されず、2年連続で専決処分となる異例の事態。岡井町長は「議会が開かれない中、このまま待つわけにはいかないと思い、決断した」と苦渋の表情で語った。
「後払い」が慣例化
 混乱に拍車をかけているのは、町営住宅やごみ焼却施設の修繕をめぐり、町の不適切な会計処理が相次いで発覚したことだ。
 同町では昨年12月、平成27~29年度の町営住宅(全79棟)の修繕費計5200万円が業者に未払いとなっていたことが判明。町住民生活部によると、同部の担当職員が「住宅の老朽化が進み、緊急性が高い」として、業者から後払いの了承を得て工事を発注。業者には日付のない請求書を提出させ、次年度に予算を盛り込んで後払いする手法が慣例化していたという。
 また、昨年の12月議会にごみ焼却施設の修繕費として1800万円を計上しながら、実際には同8月に工事を終えており、町がこの事実を隠していたことも明るみに。同部は「緊急性が高いとはいえ、工事を先決するという判断は今となっては誤っていたと思う」と釈明した。
町の失態に乗じ、勢いづく反対派
 反対派はこうした町の相次ぐ失態を批判する形で攻勢を強め、修繕費の未払い金計7千万円を含む一般会計補正予算案が提案された3月臨時議会でも、一部町議が「説明が不十分」と反発、議案は審議されず廃案となった。
 反対派の町議が審議を事実上ボイコットして流会を繰り返す背景には、認定こども園は設計から2年以内に着工しなければ国の補助金が出ないという事情が関係しているとの指摘がある。賛成派のある町議は「計画を進めたくないから、不適切な会計処理の説明不足を理由に議会をストップさせている」と指摘。その上で「自分の意見に沿わないからといって議会を開かないのは、議会の私物化以外の何ものでもない。堂々と審議しないと、住民にも説明がつかない」と憤る。
 一方、反対派は審議拒否の理由について「納得できる説明が得られず、町の議案が信用できない」(疋田議長)などとしている。
 地方自治に詳しい高崎経済大の岩崎忠教授は「(当初予算案を)2年連続で専決処分したのは異例」とした上で「こども園の問題だけのために、議会がストップしているのは住民にとって不幸なこと。一刻も早い議会の正常化が求められる」と話す。
 こども園については、タウンミーティングなどでも町民の意見は二分しているが、子育て世代の間では建設を待ち望む声が根強い。建設するにせよ、計画を白紙に戻すにせよ、まずは議会の場で話し合うことが必要だろう。騒動が長期化して割を食うのは、他ならぬ町民だ。