造園工事で談合疑惑、発注の大阪・和泉市「把握の必要ない」 何が起きているのか

衝撃事件の核心

 大阪府和泉市発注の造園工事で数十件の談合が行われたとして、地元の市民オンブズマンが4月、不当に支出された公金の返還を求めて、住民訴訟に打って出た。オンブズが指摘する疑惑は極めてシンプルだ。地元業者でつくる組合のメンバーだけで入札が実施された場合は、落札率(予定価格に占める落札額の割合)が9割超。非組合の業者が参加すると、とたんにその率が下がる-。市議会でも取り上げられた問題だが、当の和泉市役所といえば「組合の存在すら知らない」と、調査に及び腰どころか、とりつく島もない対応なのだ。一体何が起きているのか。

9割超続々

 「和泉造園緑化協同組合というものがあることを把握していないので、お答えのしようがない」

 入札事務を担当する和泉市契約検査室の担当者は2月、「談合疑惑についてどう考えるか」との記者の問いに、こう言い放った。

 同市発注の工事では、上限額に当たる予定価格と、下限額に当たる最低制限価格がいずれも事前公表されている。

発注した工事について、市民オンブズマンが談合の疑いを指摘する大阪府和泉市の市役所

 いわば“フルオープン”のこうした入札では、何としても仕事を取りたい業者同士の「たたき合い」になり、落札額が最低制限価格に近接するのが一般的だ。

 ところが平成24~29年度の造園工事の入札結果を調べてみると、計約90件の入札のうち実に76件で落札率が9割を超え、予定価格に極めて近い金額となっていた。ちなみに9割超の落札率は、全国市民オンブズマン連絡会議の定義では「談合の疑いがある」とされている。

 そして、この76件を調べてみると興味深い事実が浮かぶ。これらの入札は実質的にすべて、冒頭の「和泉造園緑化協同組合」の加盟業者のみで行われていたのだ。

 一方で組合の非加入業者も参加した計15件の入札では、いずれも最低制限価格で各社が横並びになり、くじ引きで落札者が決まっていた。

市側「把握の必要ない」

 落札率が高いからといって、もちろん談合とは言い切れない。とはいえ、不自然な結果であることは確かだ。そこで市の担当者に聞くと、「組合の存在すら把握していない」という、にべもない回答が返ってきたのだ。以下、記者との一問一答。

--把握していない?

 担当者「はい。把握する必要がない」

--組合業者のときは(落札率が)高く、新規業者が入ったときはくじ引きになる。疑問視しないのか

 担当者「予定価格と最低制限価格を事前公表して、その範囲内の価格になっているので」

--独自に調べないのか

 担当者「価格的には法令上問題がない」

--組合員と非組合員の入札では10%近く落札率に開きがある

 担当者「(どの業者が)組合員であるか把握していないので、おっしゃっている数字の信憑性(しんぴょうせい)は分からず、お答えのしようがない」

 造園工事での談合疑惑を指摘しているのは、オンブズマンだけではない。平成27年12月の市議会でも、市民から情報提供を受けたという市議が質問を行っている。このときも市幹部は「ご指摘の談合の疑義につきましては、ないと認識しております」と述べ、それ以上の踏み込んだ答弁はしていない。

市側もリスト保管

 行き届いたきめ細かな対応を意味する「神対応」の対義語として、「塩対応」という言葉があるが、談合疑惑に関する市役所の態度にはかなりのしょっぱさを感じざるを得ない。

 ここに産経新聞が独自に入手した和泉造園緑化協同組合の名簿の写しがある。このリストをもとに入札結果を調べてみたところ「組合業者のみで入札が行われた場合は落札率9割超」という数字が浮き彫りになった。

大阪府和泉市が提出を受けていたものと同じ和泉造園緑化協同組合の名簿。産経新聞が独自に入手した(画像の一部を加工しています)

 問題はこの名簿の信憑性だが、実はこれ、組合の存在すら知らないはずの市役所にも、きっちりと保管されている代物だ。

 何のことはない、市側が災害時に復旧作業などに協力してもらえる企業の連絡網を作るため、組合から名簿の提出を受けており、契約検査室は28年4月の段階で入札参加資格の格付けの際に確認していたのだ。

 この点を追加取材の際にただすと、市側は後日になって名簿受領の事実を認め「組合員を認識できる状況にはあった。事実を失念していた」と回答を寄せた。

不可解処分も

 同市の造園工事をめぐっては、職員が処分される事態も起きている。この処分がまた一風変わっている。

 関係者によると、市契約検査室の別の職員が26年、指名業者選定に関連する調査で市内のある造園業者の事務所を訪れた際、偶然にも別の業者が作成した造園工事の見積書を発見した。

 本来、ライバルであるはずの他社の見積書がなぜここにあるのか-。職員は不正の証拠とみて書類を写真撮影した。しかし無断で撮影したことが問題視され、この職員は辻宏康(ひろみち)市長から厳重注意とされている。

 その注意書には、こんな記載がある。

 《当該調査は実態把握上必要であるが、事務所内の写真撮影にあたっては、施設管理権を有する相手方の同意を得た上で行う必要があり、同意無しに行った行為は違法である》

 そして今に至るまで、疑惑に関する抜本的な調査は何も行われていない。

住民訴訟に発展

 市民オンブズマンは4月20日、組合員同士で談合が繰り返され、計3100万円の公金が不当に支出されたとして、辻市長に対し、同額の返還を組合側に請求するよう求める住民訴訟を大阪地裁に起こした。

 辻市長は「今後の動向を注視し適切に対応したい」とコメントした。

 一方、組合幹部は取材に対し「市民団体が主張しているような談合の事実はない。組合と入札の結果は関係ない」と疑惑を全面的に否定している。