【関西の議論】不発弾の撤去、費用は誰が払うのか 各地で訴訟も - 産経ニュース

【関西の議論】不発弾の撤去、費用は誰が払うのか 各地で訴訟も

信管の取り外しが終わり、つり上げられる不発弾。後方は「なんばパークス」=大阪市浪速区
付近での不発弾処理のため規制された南海難波駅=大阪市中央区
不発弾処理のため通行止めとなった堺筋=大阪市浪速区
 工事現場などで見つかることが時々ニュースになる不発弾。撤去のため自衛隊などが出動し、周辺が立ち入り禁止になって封鎖されることもあるが、そうした必要経費は誰が支払うのだろうか。大阪・ミナミでもマンションの建設現場から1トン爆弾が見つかり、警備費用などを負担した土地所有者が、国や市が支払うべきだとして提訴し、このほど判決が下された。決して安くはない不発弾の処理費用。戦時下のものなので国費負担するのか、地域住民の安全確保となれば自治体なのか。またはあくまで、不発弾が見つかった土地所有者の負担なのか-。
土地所有者が約580万円負担
 平成27年3月16日。商業施設「なんばパークス」や電器店街として知られる「でんでんタウン」からも近い大阪市浪速区のマンション建設現場で、不発弾が見つかった。先の大戦の最中に米軍が投下したとみられる1トン爆弾で直径60センチ、長さ180センチ。起爆装置の信管も残っていた。
 陸上自衛隊による撤去作業が行われたのは5月9日午前。普段は買い物客や観光客らでにぎわう土曜日だが、大阪市は住民約2200人とおよそ500の事業所に避難を要請。南海電鉄難波駅南側の一帯など半径約300メートル以内が立ち入り禁止になり、周辺の商業施設は営業開始を遅らせ、同駅を発着する電車の一部も運休した。
 この不発弾処理が、訴訟に発展した。
 陸上自衛隊による爆弾の安全化処理費用は国が担った。大阪市は広報費と、自衛隊や消防、警察など関係機関で組織する不発弾処理対策本部の運営経費約190万円を拠出した。
 だが、不発弾が見つかった土地の所有者が、土嚢(どのう)の設置や周辺の警備にかかる費用約580万円を支払っていたため、土地の所有者3人が「戦後処理の一環として、行政が処理責任を負うべきだ」などとして、国と大阪市に同額の支払いを求めて提訴したのだった。
神戸、八尾市も一部負担求める
 不発弾処理にかかる費用は誰が支払うべきか。実は法令などによる明確な決まりがないため、自治体によって対応が分かれているのが現状だ。
 大阪市危機管理課によると、記録が残る昭和30年以降、市内で発見された不発弾は87個。うち67個が私有地から見つかった。市は以前から所有者に処理費用の一部負担を求めてきた。
 神戸市は平成19年~28年の4件で、所有者に一部の費用の負担を求めた。市危機管理室によると、26年に同市兵庫区の商業施設予定地で見つかった不発弾や、28年に同市中央区のマンション建設地で見つかった不発弾の例では、いずれも所有者が数百万円を負担し、対する市の支出は200万円程度だった。
 また、25年1月に関西電力の八尾変電所(大阪府八尾市)から見つかった不発弾のケースでは、同社が安全対策に関する費用をはじめ、交通規制や避難を周知するチラシやポスターの作成費用を負担。八尾市の負担は、処理にあたって設置した対策本部の事務経費約30万円にとどまった。市危機管理課は「関西電力との協議の結果、こうした分担となった」と説明する。
費用負担の宮崎市「市民の安全守るため」
 これに対し、市民の安全確保という観点から費用を負担する自治体もある。
 「市の地域防災計画に不発弾の処理に関する規定があり、それに沿って市が費用を出した」。こう振り返るのは宮崎市の担当者。
 26年に市内のホテル跡地で発見された不発弾をめぐって、土嚢の設置▽チラシの印刷費▽周知のための広告料▽警備に必要なコーン標識などのリース代▽警備費-などを市が負担した。総額で1千数百万円に上ったが、市危機管理課の担当者は「市民の安全を守るための判断。所有者の負担はゼロだった」と話す。
 群馬県高崎市でも25年5月、竹林を畑に整備する工事中に不発弾を発見。市が土嚢の設置や警備費用約500万円を全額負担し、「所有者への請求はなかった」(市の担当者)。
大阪市長も「土地所有者に落ち度なし」
 「不発弾の処理に関する国の指針があればと思ったこともある。(費用負担に)一石を投じることになるかもしれないという思いで(大阪地裁の)訴訟には注目していた」
 こう話すのは神戸市の担当者。そして注目された2月の地裁判決は、土地の所有者が費用負担することは妥当という判断だった。
 原告側は「災害の発生抑止は自治体が行い費用を負担するなどとした災害対策基本法は、不発弾処理にも適用される」として大阪市の費用負担を訴えたが、地裁は、同法の適用は行政機関に裁量があるとして、大阪市の判断は「妥当でなかったとはいえない」とした。
 同様に、不発弾処理を自衛隊が担うことができるとした自衛隊法の規定も、地裁は「(国に)不発弾処理や費用を負担する義務を課すものではない」と指摘。国が費用負担すべきとした原告側の訴えを退けた。
 そして、不発弾の処理費用は「国民が等しく受忍しなければならない戦争損害」とも指摘した。
 判決を受け、吉村洋文大阪市長は「正当な判決が下された」としながらも、相手方を代弁するかのようにこう言及した。
 「土地所有者には何の落ち度もない。戦争を起こしたのは国。本来なら、不発弾の処理の費用は国が負担すべきではないか」
 所有者は判決を不服として、大阪高裁に控訴した。