一度決めた「定数削減」覆し「増員」決めた三重県議会…「議員の自己保身」「県民への背信」の声

関西の議論
県議定数を51に増やす条例に賛成するため起立した23人の県議=3月22日、三重県議会

 1票の格差是正のため定数削減という「身を切る改革」を成し遂げた-はずだった三重県議会が、定数を45から元の51に戻した。3月の本会議でわずか1票差で可決。4年前に成立させた定数削減条例は結局、一度も選挙に適用されずじまいだった。議会内でも後戻りへの批判は強く、「議員の自己保身」「県民への背信だ」との声も出たが、なぜ、こんな事態になったのか。背景に定数を減らされる議員の反発に加え、自民と民進系の議会内での主導権争いを指摘する声もある。

委員会で否決、本会議で可決

 「一票の格差の重みはあるが、(人口減が進む)県南部の活性化が急がれている。議員を増やすことが先決だ」

 「(定数削減撤回は)議会経費の節減を求める県民の気持ちをまったく無視することになる」

 3月22日の県議会本会議。定数を45から51に戻す条例改正案をめぐって賛成派、反対派がそれぞれの持論を展開した。採決では2人が退席し、賛成23、反対22のわずか1票差で定数増の条例改正案が可決された。

 「否決されると思っていたが…」。条例改正案を提出した県南部選出の西場信行議員(自民)は安堵(あんど)の表情をみせた。実際、1週間前の特別委員会では否決されている。その後の多数派工作が実を結んだというわけだ。

三重の南北問題

 定数削減条例は人口減少が進む県南部の7選挙区を6選挙区に、定数を15から9に減らすもので、25年から26年にかけて議論し26年5月に可決、成立した。周知期間を置くため27年4月の県議選では適用せず、31年春の次回選挙から実施することになっていた。

 これにより、一票の格差は2・93倍から1・66倍に改善、議会の経費も年間5億円超削減できると見込まれていた。

 しかし、間もなく定数削減見直し論が台頭した。工業地帯を抱える四日市市など北部と、過疎化が進む熊野市など南部との格差が広がる「南北問題」に取り組むためにも、南部の議席を減らしてはいけない、との理由だ。

 県議会は再び特別委員会で定数問題を取り上げ、28年から今年2月まで2年間にわたり審議した。しかし賛否は拮抗(きっこう)し、結論を出せなかった。

 ところが2月末、南部選出の議員5人が突如、定数を51に戻す条例改正案を提出した。県民への周知期間を考えると、定数の再変更は4月がリミットだったのだ。

背景に「自民VS民進」

 ここにきての条例改正案の提出は「禁じ手」との指摘もあった。「一度決めたことを覆すなど無責任だ」「議員の保身」との批判も強く、本会議に先立って審議した特別委員会は定数増の条例案を否決した。にもかかわらず「本会議での採決の行方は分からない」との見方が議会内では大勢だった。

 ベテラン議員らの解説を総合すると、その理由はこうなる。

 南部の各選挙区は自民と民進系(新政みえ)が共存し、議席を分け合っている。定数削減には双方とも危機感を持っているが、今の政治状況からみて不利なのは民進系だろう。三重県議会は民進系が多数を占め、全国で唯一議長ポストを握る牙城。自民は南部の定数減をテコに勢力図を塗り替えたい。民進は阻みたい-。

 定数問題の背景には、こうした構図があるというのだ。

 そして迎えた本会議。蓋を開けてみると、民進系は定数増に賛成15人、反対3人で、1人が退席。一方、自民は南部選出の4人が賛成したものの、13人が反対した。前回の削減条例可決の際の投票行動と矛盾する議員もおり、議会は混乱。これを機に民進系、自民とも会派は分裂した。

 「結局は自己保身だ」。こうつぶやく議員もおり、後味の悪い結末となった。何より、こんなことをしていては県民の理解を得られるはずがない。県議会では経費削減を検討すべきだとの声があがるが、審議の日程にはまだ組み入れられていない。