12年かけて育てた桜、根元から切られる 心ない行為に怒りと悲しみの住民

関西の議論
伐採された桜の切り株。横には住民らが設置した怒りの立て看板が(トンガの鼻自然クラブ提供)

 花見シーズンまっただ中だが、桜をめぐって悲しい出来事が和歌山市であった。紀伊水道に面する同市雑賀崎の雑賀崎緑地公園に12年前、地元ボランティアらが植樹した約40本の桜のうち、もっとも大きく成長した1本のオオシマザクラが何者かによって根元から切断され持ち去られているのが2月に見つかったのだ。「一体誰が何のために…」。丹精込めて桜を育ててきた住民らの間に怒りと悲しみが広がっている。

突然消えた桜

 「一番大きかった桜が切り株だけになっている」。2月5日、雑賀崎周辺の環境整備に取り組むボランティア団体「トンガの鼻自然クラブ」の中口重喜代表(76)は公園を訪れ、目を疑った。高さ約5~6メートルまで成長し、植樹した桜の中でもひと際大きかったオオシマザクラが、直径約20センチの切り株だけを残してなくなっていたのだ。切断面はのこぎりで切られたように平らで、周囲には切断の際に出たとみられるおがくずが散乱していた。

 トンガの鼻とは雑賀崎にある岬の呼び名で、「トンガ」という鍬(くわ)に由来するとの説もある。歴史的遺構もあり、同クラブが植樹も含め自然環境を守る活動を続けている。

 切られた桜は、地元の景観を少しでも良くしようと会員たちが植樹し、育ててきたうちの1本。毎年4月の上中旬には白い花を咲かせ、今年も間もなく開花の時期だった。

 昨年12月に中口代表らが別の桜を植樹しに訪れた際は無事だったという。何かの工事のために伐採されたのかとも思い、会員や公園の所有者の和歌山県にも確認したが、そうした事実はなかった。

 何者かによる意図的な伐採だと考えた同クラブは翌2月6日、和歌山西署に被害届を提出。松川靖副代表(72)は「12年間愛情を込めて育ててきたのに、こんな心ないことをされるのは本当に残念だ」と憤りを隠さない。

もとは埋め立て地

 緑地公園の一帯は埋め立て地で、もともと海や磯が広がっていた。県が企業誘致のために平成6年に海を埋め立てて造成を開始。公園周辺は現在、工場などが並ぶ工業団地となっている。

 団地ができた当初の公園一帯は草木が伸びるなど荒れ放題で、テレビやタイヤ、冷蔵庫など大量の粗大ゴミや生ゴミが不法投棄され、野良犬やカラスがゴミをあさる光景もよく見られたという。

 「地元の景観が荒れていくのを放ってはおけない」。見かねた住民らが土地を所有する和歌山下津港湾事務所の許可を得て、アジサイやツツジなどの植樹やベンチの設置、定期的な草刈りなどに取り組んできた。

 その後、同クラブを設立し、18年度からは有志の住民とともに桜の植樹を開始。埋め立て地のため桜の成長には適さない土壌だったが、ショベルカーを使って土を掘り起こし、真土や肥料とかき混ぜるなどして改良。約2年かけてオオシマザクラやカワヅザクラなど約40本を植樹した。

 今では成長した桜やベンチなどが並び、不法投棄も減少、桜のシーズンには花見客が訪れる。「市民の憩いの場として定着してくれれば…。そんな思いで整備を続けてきた」と会員の松川由喜子さん(68)。

二度と切らせない

 「無残にも伐採されて泣いています。二度と伐採しないでください」。桜が伐採された後、会員らは残された切り株の横に犯人への憤りなどをつづった立て看板を設置。見守りや草刈りのため、これまで以上に頻繁に公園を訪れている。

 切断面から菌が入り込むのを防ぐため、切り株に木材保護塗料も塗った。「可能性は少ないけど、ちゃんと手入れしたら新芽が出るかもしれない」(松川副代表)と期待をつなぐ。

 心ない行為を二度と繰り返させない。活動からは、何年もかけて作り上げてきた「憩いの場」への住民らの思いが伝わってくる。

▼【関連ニュース】ブームの影で増加「保護猫カフェ」の厳しい実情 医療費・エサ代…

▼【関連ニュース】ソメイヨシノ桜は「韓国が原産」のトンデモ論…「イタチ+カナブン、サンマ産む」!?