【関西の議論】海に浮かぶ巨大ホテル「クイーン・エリザベス」豪華だけでない魅力とは… - 産経ニュース

【関西の議論】海に浮かぶ巨大ホテル「クイーン・エリザベス」豪華だけでない魅力とは…

グランド・ロビーにはエリザベス女王のおいで世界的な彫刻家、リンリー子爵の作品が飾られている(前川純一郎撮影)
大阪港に入港したクイーン・エリザベス=3月15日午前、大阪市此花区(須谷友郁撮影)
大阪港に入港したクイーン・エリザベスの写真を撮ろうとカメラを構える人たち=3月15日午前、大阪市此花区(須谷友郁撮影)
ロイヤル・コート・シアターの15番ボックス(写真手前)は人気席だという(前川純一郎撮影)
2代目のクイーン・エリザベスから受け継がれたエリザベス女王の銅像(前川純一郎撮影)
ダンスホールのクイーンズ・ルーム。高い天井には豪勢なシャンデリアが輝く(前川純一郎撮影)
屋外プールも備えられている(前川純一郎撮影)
キュナード・ライン初の女性キャプテン、インガー・クレイン・トーハウガさん(前川純一郎撮影)
クイーン・エリザベス大阪寄港乗船取材。ブリタニア・レストラン=15日、大阪市港区(前川純一郎撮影)
シャトル船からクイーン・エリザベスを見る人々。左には天保山大観覧車、右には大阪府咲洲庁舎が見える=15日午前、大阪市此花区(須谷友郁撮影)
平成27年3月、神戸港に入港した「クイーン・エリザベス」=神戸市
 「海の女王」「洋上の貴婦人」-。誰しもこの美しい別名を持つ船の名を耳にしたことがあるのではないだろうか。英国女王の名前を冠した世界一有名な豪華クルーズ客船「クイーン・エリザベス(QE)」。この春、世界一周の途中で大阪港(大阪市港区)に寄港し、初めての大阪発着の区間クルーズが実現した。乗客だけでなく、その華麗な姿を一目見ようと港には多くの見物客が押し寄せた。今回、報道陣に公開された船内の取材を通し、時を超えて世界中の人々を引きつけ続けているQEの魅力を探った。そこで見えてきたものとは。(杉侑里香)
港に“巨大マンション”出現
 3月15日の朝。地下鉄大阪港駅を出て約500メートル先の天保山客船ターミナルへ目を向けると、いつもは海が見える場所に、巨大な建物と見まがう船が出現していた。この日の早朝に来港したQEだ。
 294メートルの全長は、日本一高いビル「あべのハルカス」を横倒しにしたほどの長さで、海面からの高さ56・6メートルは20階建てのマンションに相当。2092人もの乗客を乗せることができる。
 真横にある大観覧車の半分ほどに達する大きさに、真下から見上げると首が痛くなるほど。カメラを手にした人は「まるでマンションみたい」と目を丸くしていた。
 QEの大阪への寄港は一昨年の春以来、2年ぶり2回目。今回の航海は1月に英・サウサンプトンを出港し、アフリカやアジア、アメリカなどの各地域を127日間かけてめぐる世界一周クルーズだ。
 インバウンド(訪日外国人客)の増加に加え、欧米などの富裕層だけでなく日本人の利用も拡大傾向にあるといい、日本へ寄港するクルーズ船は近年増加傾向にある。特にQEなどの有名客船の寄港は、港の“格”が大きく向上し、世界的な知名度アップにつながるとあって国内でも誘致競争が激しくなっている。
 さっそく取材のため船内へ…と思ったが、さすがに世界中をめぐる大型客船ということで、セキュリティーはかなり厳重だった。
 まず乗船前に、運転免許証と引き換えにバーコード入りのIDカードを「交換」で受け取る。入り口で機械にバーコードをかざし「乗船」を登録すると、続いて手荷物検査が。空港にあるようなゲート式の装置を抜けてようやく、船内に入ることができた。
https://www.youtube.com/watch?v=zQecmzK_DZw
 ほっとしたのも束の間、「下船の際にも必ずバーコードをかざすのを忘れずに。乗客以外の登録が残っていたらいつまでも出港ができないので」と担当者にくぎを刺された。それだけ徹底して安全にこだわっているのだ。
まるで一つの「街」
 QEを運営するキュナード・ライン(英国)によると、現在の船は2010年にデビューした3代目。約500億円をかけて建造された船内の内装は1938年に建造された初代の伝統を受け継ぎ、当時のはやりだったデザインを現代風にアレンジしている。
▼【写真ずらり】まるで映画の主人公…500億円の船内(こちらをクリック)
 船に一歩入ると、そこは日常を離れた別世界だ。入り口にあたる「グランド・ロビー」は3層吹き抜けの開放感あるつくりながら上品な雰囲気が漂い、まさに高級ホテルのよう。中央の大階段にはエリザベス女王のおいで世界的な彫刻家、リンリー子爵による初代QEを題材にした、高さ約6メートルの大きな寄せ木細工が飾られていた。
 そして、旅の大半を過ごす船内をめぐると、驚くほど娯楽施設が充実していた。
 ロビーと同じく、3層吹き抜けの構造でつくられている「ロイヤル・コート・シアター」は、他の船にはほとんどみられない全860席を備えた本格的な劇場。個室型のプライベートボックス席も完備され、船の命名式でエリザベス女王が座った「15番ボックス」は、すぐに予約が埋まるほどの人気席だという。
 さらにQE最大の特徴といえるのが、ダンスホール「クイーンズ・ルーム」。高い天井に豪勢なシャンデリアが輝く広々とした空間で、昼間は英国伝統のアフタヌーンティーを楽しむことができ、夜には生演奏の楽団が入り社交ダンスの会場となる。「ダンスのためにこの船を選ぶ人もいる」(担当者)のだそうだ。
 ほかにも外国船ならではのスロットやルーレットなど各種ゲームを備えたカジノ、日の光を浴びながら楽しめる屋外プール、6千冊を備えた図書室、汗を流せるスパ&フィットネスルーム、ショッピングモール…。挙げればきりがない。バーやカフェも両手でおさまらないほどの数で、まさに一つの「街」が集積しているように感じた。
長い伝統と歴史を味わって
 豪華クルーズ客船の旅といえば、庶民には縁のない世界、憧れはあるけれども、時間やお金がなく手が届かない-。こう思いがちだが、QEでは料金や日程にさまざまな選択肢があるという。
 例えば、今回初めて実現した大阪発着の区間クルーズは、15日夜に出港して高知や鹿児島、韓国・釜山などをめぐり再び大阪へ寄港する1週間という比較的短期間の旅。料金は最高クラスの客室では約140万円(2人1室利用での1人分)だが、お手頃なクラスの客室では約16万円で楽しむことができる。1泊2~3万円と考えれば、「手の届かない範囲ではない」と思う人もいるのでは。
 つい豪華な設備ばかりに目が行きがちだが「船の伝統と歴史もぜひ見てほしい」と話すのはQEのキャプテン(船長)を務めるインガー・クレイン・トーハウガさん。170年以上の歴史があるキュナード・ラインで初の女性キャプテンとなり、クルーズ全体を仕切る存在だ。
 トーハウガさんの言うとおり、船内のいたるところには、初代QE時代から受け継がれている芸術品や銅像のほか、関わりの深い英国王室の歴史を示す写真などさまざまなものが残されている。船に刻まれた思い出の数々にふれ、その歴史に思いをはせるのも伝統ある船での旅の醍醐味の一つだろう。トーハウガさんは「長い歴史をもつという点で日本と共通しており、日本人の方も、きっとこの船での旅を楽しんでいただけると思います」と笑顔を見せた。
 1時間半あまりの船内取材だったが、まるで小旅行をした気分を味わった。「今度は乗客として絶対乗ろう」と心に誓い、バーコードをかざして港を後にした。