【衝撃事件の核心】一度出回ると無限に拡散…それでも自画撮りしてしまう心理・原因とは - 産経ニュース

【衝撃事件の核心】一度出回ると無限に拡散…それでも自画撮りしてしまう心理・原因とは

SNS上では現在も自画撮りの購入者を募集する投稿がみられる(画像を一部加工しています)
 元手がかからないし、なんぼでも稼げる-。そんな軽はずみな動機から自分のわいせつ画像を販売していた二十歳の女子大生が今月、大阪府警に逮捕された。昨今問題となっているいわゆる「自画撮り」は、半ば強要されて行うケース以外にも、今回の事件のように撮影者が自発的に発信したり、SNS(会員制交流サイト)上で無防備に相手に送ったりと、その類型は多岐にわたる。ネット上で無限に拡散し、一生残り続けるリスクがありながら、なぜ危険な自画撮りはなくならないのか。
「体は減らない」
 「下着、制服、画像売ります」
 昨年10~11月、サイバーパトロール中の大阪府警黒山署員が、こんな書き込みを発見した。同署がSNSの運営者側に当該人物のアカウントを照会したところ、同府八尾市の私立大2年の女子大生(20)のものと判明した。
 女子大生は書き込みに返信してきた滋賀県内の50代の男性会社員に対し、ダイレクトメール(DM)で自身の口座番号を伝え、報酬の振り込みを請求した。
 画像は1枚平均で約1千円。5千円が振り込まれたのを確認すると、自分の下半身などを写した画像5枚をDMで送った。
 同署は今月13日、わいせつ電磁的記録頒布容疑で女子大生を逮捕。堺簡裁は同月中旬、罰金30万円の略式命令を出した。
 「楽してお金が欲しかった」。女子大生は同署の調べにこう供述。昨年10月から今年1月までに、全裸画像などを5、6人に送り、計約6万円を稼いでいたという。接触してきた客のリクエストに応じてポーズをとって自画撮りしたり、郵送で着用済の下着を販売したりもしていた。
 なぜ自画撮りなのか。捜査関係者によると、女子大生は「元手がかからないし、体は減るものではないから、なんぼでも稼げる」と説明。「私の身体の写真なら買ってくれると思った」と、自分のプロポーションに自信がある旨も話したという。
 女子大生が売りつけた自画撮り画像には自身の顔もばっちりと収まり、モザイクなど加工も施されていなかった。
 捜査関係者は「『万が一ネット上に流出したらどうするつもりだったのか』とただしても、そこまでは意識していなかったようだった。ここまで危機意識が低いとは…」とあきれた。
一生のリスク
 自画撮りを見知らぬ相手に送れば、脅迫の手段として使われるリスクがある。警察庁のまとめによると、平成27年12月、無職の30代男がインターネット上の掲示板で、アイドルグループのコンサートチケットを求めていた女子高校生に、チケットと引き換えに裸の画像を送信するよう持ち掛ける事件があった。
 送った画像に顔や制服などが写っていれば個人が特定されてしまう。こうしたわいせつ画像は一度ネット上に出回ると、不特定多数のユーザーによるコピーが繰り返され、一生好奇の目にさらされる恐れがある。
 受け取った人物が「公開されたくなければ、もっと過激な写真を送れ」と脅しをかけ、悪循環に陥るケースもある。
 大阪府では27年6月、30代男がSNSで知り合った女子中学生を「言うことを聞くまでとことんやる」と脅迫。裸の自画撮りを無料通信アプリのLINE(ライン)で送信させていた。府警は同年12月、この女子生徒を脅して乱暴したとして、強姦容疑で男を逮捕している。
 親しい人に送る場合でも危険は伴う。交際関係を解消した後に、一方当事者がネット上に流出させる報復行為は「リベンジポルノ」と呼ばれ、東京都三鷹市で25年、高3女子生徒が刺殺されたストーカー事件で犯人の男がこの行為に及び、一気に社会問題化した。
被害防ぐには
 なぜリスクのある自画撮りはなくならないのか。お茶の水女子大の坂元章教授(社会心理学)は(1)性的な写真を招き寄せるネットの特性(2)自画撮りの日常化(3)加害行為の特性-を挙げる。
 (1)については、スマートフォン(スマホ)の普及が大きい。ユーザーが、ネット上は必ずしも匿名ではないことを意識しないまま、従前より簡単な操作で自分の画像を発信できるようになったことから、サイバー空間に性的画像があふれる結果を招来した。
 (2)については、スマホなどで撮影者側に向いた「インカメラ」や、写真加工アプリの性能が向上したことで自画撮りを気軽に楽しむ文化が浸透。これによって自分の体を撮影することに抵抗感が薄まっているという背景もあると考えられる。
 (3)の加害行為の特性とはSNS時代ならではの、加害者の特徴や個人特定の手口のこと。加害者はネットを駆使して多くのユーザーに写真を要求できるうえ、得た画像は加害者同士で交換されてしまう。たとえ顔を隠していても、ネット情報、画像情報をつなぎ合わせることで自画撮りの主を特定し、脅しにかかるといったことさえありうる。
 しつこい脅しを受けた場合、被害者は「画像を送ってしまえばすっきりする」と安易な結論に走りがちだ。特に中高生は将来の危険性を過小評価する傾向があり、児童ポルノ事件の増加につながっている可能性があるという。
 自画撮り被害を防止するため、東京都では今年2月、18歳未満の児童生徒に自画撮りの送信を要求する行為を罰する条例が施行された。坂元教授は「法令による規制に加え、保護者の見守りやフィルタリング、教育現場で子供のころから被害や回避方法について学ぶことが、被害を減らすことにつながる」と話す。