【衝撃事件の核心】「殺すぞ、任意やろ」叫ぶ刃物男に警察官が発砲…休日の繁華街、緊迫したやり取りの一部始終 - 産経ニュース

【衝撃事件の核心】「殺すぞ、任意やろ」叫ぶ刃物男に警察官が発砲…休日の繁華街、緊迫したやり取りの一部始終

刃物を取り出した男に警察官が発砲したJR京橋駅近くの現場=2月18日午後、大阪市都島区(恵守乾撮影)
 日曜日の白昼の出来事だった。「パン」と1発の銃声。大勢の買い物客が音のした方を振り返った。「撃ったな!」。首筋から入れ墨をのぞかせた金髪の男(25)=公務執行妨害罪などで起訴=はそう叫び、周囲の警察官にその場に組み伏せられた。大阪・京橋の繁華街で2月に起きた公務執行妨害事件の一幕。職務質問を受けた男が刃物を取り出し、警察官から発砲を受けた。男は右太ももを撃たれ、銃弾は貫通したが、全治2週間の軽傷だった。跳弾によるけが人もなく、大阪府警は適切な拳銃使用だったとみている。銃社会の米国やドラマの世界とは違って、現実の発砲までには、実に多数の手続き要件を踏まなければならない。緊迫した状況下、現場ではどんなやり取りがあったのか-。
不審事由
 「殺すぞ、任意やろ!」
 2月18日正午前、大阪市都島区のJR京橋駅近くの路上で、男が声を荒らげた。
 男は、都島署の男性巡査長(38)から職務質問を受けていた。体のふらつきがひどい-。薬物使用者に特徴的な歩き方だと、巡査長は見て取ったのだ。
 警察官職務執行法(警職法)2条1項は、不審事由がある場合に、その相手を「停止させて質問することができる」と規定している。これが職務質問の根拠条文だ。
 ただし強制的に行うことは許されず、あくまで任意でなければならない。男が「任意やろ!」と叫んだのは、そういう意味だ。
 ここで男は、ズボンのポケットからバタフライナイフを取り出し、再び「殺すぞ」と迫った。巡査長は拳銃を抜き、じりじりと後ずさりした。
4つのステップ
 一般に拳銃使用には、4つのステップがあると言われる。(1)取り出し→(2)構え→(3)威嚇射撃→(4)相手に発砲する-という流れだ。
 法的には(1)取り出しは拳銃使用に当たらず、(2)以降のステップで要件を充足する必要がある。
 そもそも使用にあたっては▽犯人の逮捕もしくは逃走の防止▽自己もしくは他人に対する防護▽公務執行に対する抵抗の抑止-の、いずれかに該当していなければならない(警職法7条)。
 今回の事件に当てはめてみると、男はナイフを示して「殺すぞ」と脅していたわけだから、少なくとも自己・他人の防護、公務執行に対する抵抗の抑止といった要件は満たしていた、といえそうだ。
にらみ合いの末
 男と巡査長はにらみ合ったまま、繁華街の路上を数十メートル移動した。異様な事態に気づいてスマートフォンのカメラを向ける人もおり、周囲が騒然となっていく。
 この間、巡査長は「撃つぞ、ナイフを捨てろ」と繰り返していた。
 拳銃を撃つときは原則、「予告」をしなければならないことになっている(拳銃使用規範6条)。巡査長の「撃つぞ」は、この予告の手続きに当たる。
 通常はこの後、ステップ(3)威嚇射撃-が行われるが事態が急迫している場合は威嚇射撃はしなくてもいいことになっている。
 この時点でも、男はナイフを捨てるそぶりを見せず、刃先を向けて巡査長との距離を詰めようとしていた。
 男がビルを背にしたときのことだった。巡査長はついに2~3メートルの至近距離から発砲した。
 相手がビルを背にした瞬間というタイミングは、跳弾に配慮した結果だろう。発砲には相手以外の者に危害を及ぼさないよう、必要な注意を払わなければならないからだ(同8条)。
 男はその場で取り押さえられ、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。
過去5年で10件
 巡査長の今回の拳銃使用については、射撃技術や通行人の安全確保、男の受傷が軽いものにとどまったことも含め、「適切な職務執行だった」という評価が府警内部では一般的だ。
 府警は3月、男に対する任意の尿検査で覚醒剤の陽性反応が出たとして、職務質問までに覚醒剤を使用した容疑で再逮捕している。
 警察庁によると、警察官が発砲により人に危害を与えた件数は、過去5年で計10件だった。昨年、一昨年はそれぞれ1件だった。