【関西の議論】日本の「ラーメン」韓国人には不評?…「ラミョン」似て非なるもの - 産経ニュース

【関西の議論】日本の「ラーメン」韓国人には不評?…「ラミョン」似て非なるもの

韓国の代表的なインスタントラーメン「辛ラミョン」。激辛だが、あっさりした味が特徴
訪日外国人らでにぎわう夜の道頓堀=大阪市中央区
訪日外国人らでにぎわう夜の道頓堀=大阪市中央区
道頓堀の回転ずし店の前にできた訪日外国人らの長い行列=大阪市中央区
 ラーメンは日本人の大好きなメニューだ。しょうゆやみそ、トンコツ、鶏ガラ、魚介系などのスープや具材で多様なジャンルがあり、日々進化。欧米など海外でも人気を集めている。だが、韓国人の一部は違うようだ。訪日外国人でにぎわう大阪・道頓堀(大阪市中央区)で、急増している韓国人旅行者に尋ねてみると、特にトンコツラーメンに「脂っこい」「臭みがある」などと不満の声が聞かれた。大阪は韓国でもグルメ都市として知られ、旅行者にとって食べ歩きが大きな楽しみだが、韓国のラーメンと日本のラーメンが「似て非なるもの」であることが、背景にありそうだ。(張英壽)
「もう一度は結構」人生初のトンコツラーメン
 道頓堀は訪日外国人客の一大聖地といえるほど、旅行者でにぎわう。夜になると、夕食を楽しもうと、あちこちの店で長い行列ができる。初春のある夜に訪ねると、普段にもましてにぎわい、聞こえて来る言葉は圧倒的に韓国語が多かった。最近、韓国では日本旅行の人気が高く、日本政府観光局によると、昨年1年間の来日韓国人は前年比40.3%増の714万人。延べ人数だが、単純計算すると韓国人の7人に1人の割合で日本を訪れていることになる。日本の都市の中で「くいだおれ」のまち大阪は、特に食に対する期待が大きい。
 その大阪の繁華街・道頓堀を歩く韓国人旅行者は、日本の食べものをどう感じたのか。直撃してみた。
 「神戸ビーフやたこ焼き、お好み焼き、そば、すしはおいしかったけれども、日本のラーメンは脂っこくて嫌いです。食べたけど、残しました。臭みがあるし、二度と食べません」
 来日3日目という南西部の大都市・光州(クァンジュ)市からやって来た男性会社員、任理榮(イム・イヨン)さん(34)はそう打ち明けた。どんなラーメンかと尋ねると、「ベーシックなもの。豚肉が入り、脂が多く…」という答えが返ってきた。トンコツラーメンのことではないかと見当をつけ、タブレット端末で画像を見せると、「そうだ」と教えてくれた。
 ただ韓国人だからといって、全員が嫌いなわけはなく、任さんは「日本のラーメンが好きな人は好き、嫌いな人は嫌い」という。
 南東部の大都市・大邱(テグ)市の男性会社員(52)は「韓国では毎朝、辛いラーメンを食べている。トンコツラーメンは韓国でも食べたが、脂っこく、臭みがある。スープがもう一つだ」と注文をつけた。ただ韓国ではインスタントラーメンが主流のため、麺については一定の評価をした。
 任さんと男性会社員の「臭みがある」という表現は、韓国語では「ピリダ」という形容詞。韓国の国語辞典を引くと、「魚や動物の血などから出る味やにおい」とある。
 「人生で初めて日本のラーメンを食べた」というソウル市の男子大学生(20)は、トンコツラーメンに挑戦し、「韓国のラーメンとだいぶん異なる」と感じた。脂っこいため、辛い調味料を追加したが、「もう一度は結構」という。「ラーメンは辛いのが本当の味。日本のラーメンは違う」と感想を述べた。
消費量世界一「ラミョン=即席麺」
 韓国でラーメンは「ラミョン」と発音し、基本的にインスタントラーメンを指す。日本ではラーメンという料理がまずあり、次にインスタントラーメンが生まれたが、ラーメンを食べる習慣がなかった韓国では五十数年前、即席麺を「ラミョン」として売り出したため、「ラミョン」イコール即席麺と認識されている。
 韓国初のインスタントラーメンは「三養(サミャン)ラミョン」で、日本の明星(みょうじょう)食品の技術提供を受け、三養工業(現・三養食品)が1963(昭和38)年に発売。以降、さまざまなインスタントラーメンが「ラミョン」の名で、つくられるようになるが、人気を集めているのは農心(ノンシム)の「辛(シン)ラミョン」など、激辛だが、脂っこくないあっさりした味の商品だ。
 韓国人のインスタントラーメン好きはすさまじい。日清食品ホールディングスなどでつくる「世界ラーメン協会」(本部・大阪府池田市)の統計によると、韓国の1人あたりのインスタントラーメン消費量は世界一で、群を抜いている。2016(平成28)年では1人あたり年間約74食で、日本の約45食よりかなり多い。
 韓国では、まちの食堂でも「ラミョン」は提供されるが、出てくるのは即席麺。チーズや卵、おでん、「トック」と呼ばれるうるち米のもち、ギョーザなどの具は楽しめるが、日本のような本格的な料理としてのラーメンの伝統はない。
 近年は韓国でも、日本風のラーメンを出す店が現れているが、一部にとどまっている。
 「日本のラーメンは違う」という感想は、こうしたラーメン文化の差異から生じているとみられる。韓国では一般的に特にトンコツの濃いスープに違和感があり、辛くてあっさりした味を求めるのだ。
 一方、韓国人の中にも日本のラーメンが好きな人もいた。道頓堀では次のような声も聞かれた。
 兵役に就く直前に来日したシェフを目指しているというソウル市の男性(21)は「口に合う。3日目ですけど、1日1回食べていた。もっと食べたい」と打ち明けた。ソウル市の男子大学生(19)は「トンコツラーメンを食べた。脂っこいのを抑えるために、ニンニクをたくさん入れて調節したから大丈夫で、満足しました」。
 ソウル市から南に約100キロ離れた天安(チョナン)市の男性コンピュータープログラマー、金正彬(キム・ジョンビン)さん(36)は「日本のラーメンは好きだけど、トンコツはちょっと脂っこい。おなかを壊したこともある。あっさりしたしょうゆラーメンがいい」と語った。
 日本のラーメンが好きかと質問すると、「好き」と答えた人でも、よく聞いてみると、辛い調味料やニンニクを加えて脂っこさを抑えて食べるという回答が目立った。
日本料理「すごくしょっぱく、すごく甘い」
 日本の食べ物は全体としてはどう感じるのだろうか。これについてはラーメンも含め「しょっぱい」という感想が多かった。
 中部の大都市・大田(テジョン)市の女子大学生(20)は「ラーメンはおいしいけど、しょっぱい。嫌いなのは団子で、甘すぎます。しょっぱいのは、すごくしょっぱく、甘いのはすごく甘い」という。
 このほかの回答では、「生ビールは韓国では水を入れたような味だが、日本では麦の味がする」「日本の焼き肉は韓国と微妙に違う。しょっぱいけど、ご飯と食べたらおいしい」「お好み焼きはマヨネーズが脂っこくおいしくない」「たこ焼きは韓国にもあるけど、大阪が柔らかく最高」「うどんはスープが韓国と似ていて好き」-などがあった。すしも人気があった。
 韓国と日本の食文化にどんな違いがあるのだろうか。
 大阪市のJR・近鉄鶴橋駅前で韓国料理店「山賊」を経営し、宮廷料理に詳しい韓国料理シェフ、金定用(キム・ジョンヨン)さん(44)は「韓国人が好きなのは、舌がヒリヒリするほど辛く、さっぱりして、淡泊な味」という。日本料理は甘辛いものが多く、「韓国人が日本に初めて来たら、しょっぱくて甘いと感じるだろう」と語る。
 金さんが挙げる日韓の差はダシのとり方。日本ではみそ汁や吸い物などをつくる際、かつお節やコンブでダシをとるのが基本だが、スープ類が多い韓国でも、ダシは重要だ。「イワシの煮干しや乾燥エビ、日本と同じくコンブも使いますが、味付けはしょうゆよりも塩を多く使う。日本はしょうゆが多いので、韓国人はしょっぱいと感じる」と分析する。
 韓国料理研究家の本田朋美さんは、肉の脂や臭みを除く韓国料理の調理法をあげる。韓国にはカルビタンやソルロンタン、コムタンなど肉類を使ったスープが多いが、脂っこさがあまりない。そうしたスープ類は「肉や骨をしばらく水につけて血や臭みをとり、煮込んだ後に冷まし、浮いてきた脂をていねいにとる。こうすると脂っこさがない」という。
 ふだんからこうして調理されたスープを味わっていると、ときに豚の背脂なども使う日本のラーメンは脂っこいかもしれない。
 ただ韓国人が日本のラーメンを食べて感じることは、ほかにもある。本田さんはこう指摘する。
 「韓国人は、食べ慣れたラミョンはこういうものという基準がある。日本のラーメンを食べてみると、その基準と異なり、『あれ』という『発見』がある。発見がいい意味だとおいしいとなるし、悪い意味だと脂っこいとなる」
 日韓は「似て非なる」関係といわれ、互いの文化の違いに気付きにくいという指摘がある。実は別物の「ラーメン」と「ラミョン」にも同じことがいえるかもしれない。