「元をとるには何を食べる」 おしゃれに進化するホテルブッフェ その魅力は

関西の議論
この冬に行われた新阪急ホテルのグルメバイキングレストラン「オリンピア」の味めぐり。スイーツの実演が始まるとたくさんの人がカメラを片手に並ぶ=大阪市北区

 一定の料金で、たくさんの料理を思う存分に楽しめるホテルのブッフェやバイキング。各ホテルの特徴がもっともよく出るレストランと言えるかもしれない。旬の食材などが2~3カ月でメニューのテーマが切り替わる。家族連れやグループでの利用に人気があり、値段もランチなら3000円~4000円程度(ディナーは約5000円)と、「何を食べれば料金の元がとれるか」にも興味がわく。そんなブッフェの魅力とはどんなものだろう。 (木村郁子)

食のエンターテインメント

 ブッフェは、関西を代表するいくつかのホテルで楽しめる。それだけに集客のためにホテルの企画担当者は頭をひねる。

 「バイキングならこのホテル」と多くの人に言わしめているのは、大阪市北区の新阪急ホテル「グルメバイキング オリンピア」。約300席の周りをぐるりと囲むように、和洋中の料理が縁日の屋台のようにずらりと並ぶ様は圧巻だ。

 「平成13年9月にレストランが改装したこともあって、調理人自らが切り出し、盛りつけて提供するスタイルが定着。温かいものは温かく、一番おいしい状態で食べてもらうことを心がけています」と、同ホテル広報担当の川崎彩美さん。

 料理の種類は約80種類。現在は「大・食楽祭」をテーマに、本マグロ、メバチマグロ、ビンチョウマグロなどのマグロと、牛肉、エビ、イチゴをメーンにグルメフェアを展開中だ。平日のランチは時間を区切って客を2回転させている。多い日では約500人が訪れるという盛況ぶり。昨年9月から11月末まで行った秋のフェアでは、ランチとディナーを合わせて前年比の約一割増。ここ数年では一カ月に2万7千人もの人が訪れている。

 ライブ感を盛り上げようと、できあがり時間を指定したメーン料理をはじめ、時間が経つと味が落ちる雑炊やラーメンなどは、スーパーのタイムサービスのように音楽が流れ、アナウンス担当の永瀬憲司さんたちが軽快なおしゃべりで料理のできあがりを実況中継する。また、大きなケーキを仕上げていくシェフの姿は、まるで一種のエンターテインメントショーを見ているようだ。

元をとるには何食べる

 「(メニューの)テーマは約3カ月で変更され、四季折々の目玉になる食材を取り入れています。企画会議から始まって流通確保まで、約半年間もの話し合いが持たれる」と川崎さん。

 バイキングに行ったらまず頭をよぎるのが「元が取れないのでは」と思うことだ。オリンピアの平日大人料金は3200円。お得な料理の食べ方を聞いてみると、原価率が高いフェアの目玉食材を中心に食べることだそうだ。

 「バイキングやブッフェはいわば、ホテルの玄関口、アンテナショップみたいな役目なんです」というのは、リーガロイヤルホテル大阪広報担当の村田真弓さん。

 ブッフェ会場となるのは「オールダイニングリモネ」。宿泊客をメーンに提供する朝食は、関西色が出る「かすうどん」や「明石焼き」なども並ぶ。また、ブッフェ利用客は、昼夜合わせて年間約20万人、1カ月の売り上げは約1億円にのぼる。

 4月4日までは、英国大型豪華客船「クイーン・エリザベス」の大阪港発着クルーズを記念し、「ヨーロッパフェア」を開催中。平日は大人3200円。船で実際に提供されるメニューを平通利彦シェフがアレンジして再現。「チキンとポロ葱のテリーヌ フレンチマスタードソース」「マグロのニース風 レモンとパセリ香るピストゥー」が登場している。

 「お年寄りからお子さままで、あらゆる世代が食べて『おいしい』と言ってもらわなければならない。ハレの日に家族でホテルで食べに来る、そんな特別感を演出できるダイニングでありたい」と平通シェフ。好評メニューは再度提供することもあるそうだが、基本は毎回新しい料理を提供しようと、構成に頭を悩ます。販促チーム、飲料部長、ダイニングマネジャーが意見を持ち寄り、季節感やトレンド、イベントなどを反映させてテーマを決定する。

目の前で調理するライブ感も

 メーンの食材はパスタと肉・魚から1種選び、前菜とデザートをセミブッフェスタイルで平日に提供するのは、セントレジス大阪(大阪市中央区)のイタリア料理「ラ・ベデューダ」のセミブッフェランチ(3500円)。

 前菜には季節感を盛り込んだ「牛モモ肉のトンナートソース・パプリカのローストマリネ」「ズッキーニのキッシュ」など12種類、デザートは8種の取り放題のブッフェ形式。オープンキッチンのカウンターに並べられ、料理人との距離が近いのも特徴だ。

 「多くのホテルが時間制を取っている中、ラストオーダーまでゆったりと食事できるのが利点。私たちが作っている様子を身近で見てもらい、ライブ感を楽しんでもらいたい」とは総料理長のジャンルカ・ヴィサーニさん。

 20テーブルという空間は、従来のホテルのダイニングに比べて小ぶりだが、アットホームな雰囲気のなかで食事できる。平日限定のせいか、女性客や近隣のビジネスマンがビジネスランチで利用するなど常に満席。隣のバーまで活用して対応している。前菜は無くなればすぐ追加で作るシステムを取っており、できたてが食べられるうえ、メーンは席まで運んでくれるので、特別感も味わえる。

 ブッフェでの人気メニューは意外にも「チーズ」。モッツァレラ、ペコリーノなど約4種類が食べ放題。ホテル側にとって、エビのほか、チーズはコストがかかる食材の一つといわれている。何度もお代わりにくるお客が多いのは、食べ放題のブッフェにチーズが並ぶのはまずないから、だとも。

 「朝食は宿泊のお客さまが利用される場合がほとんどですが、お昼のセミブッフェは、地元の人にもっとホテルに親しみを持ってもらいたい、との意図が大きく占めています」と広報担当の小笹朋美さん。お得感を打ち出しつつも、特別感は失わない。地元・大阪の人々に愛されるホテルを目指している。