人目を気にせず「好き」なことを…「オタク女子」ターゲットの店舗がサブカル街に続々オープン

関西の議論
オタク女子限定のカフェサロン「アタラシキア・カフェ」を作った青山奈々さん(右)と上野まどかさん=大阪市浪速区

 関西有数のオタク街で知られる大阪・日本橋で、コスプレ衣装を製作するためのミシンを設置したサロンや居間風のカフェなど女性をターゲットにした店舗が増えている。「オタク」といえば、アニメやゲームなど特殊な趣味を持つ根暗な男性のイメージが強かったが、最近ではアニメ好きを公言した人気女優がコスプレ姿を披露するなど、少しずつ「オタク女子」の社会的認知度が上がっている。それでも、周囲の目を気にする女性たちにとって、こうした店舗は人目を気にせず「好きなものは好き」と言える場所として人気を集めているようだ。(中井美樹)

「1人よりもみんなで…」世界が広がった

 「オタク女子限定カフェサロン」と銘打って2年前にオープンした「Ataraxia cafe(アタラキシア・カフェ)」(大阪市浪速区)では、漫画や同人誌を読めるソファ席や、パソコンでイラスト制作などができるカウンター席、コスプレ衣装づくりができるワークスペースなどを完備。ミシンやアイロン、パソコンなどは無料で貸し出しており、オタク女子たちの創作活動をサポートしている。

 また、コスプレーヤーらを対象にしたウイッグカットの講習会も不定期で行われている。美容師が講師になり、アニメキャラクターの髪形を例に挙げながらカットの仕方を指導。仕事帰りのOLやソーシャルゲーム好きの大学生らが熱心にはさみを動かしていた。

 この講習会に参加していた常連客の女性会社員(23)は「1人よりも誰かと一緒に作業するのが楽しい。この店に来るようになって、自分の世界が広がった」と声を弾ませた。

 同店を経営する青山奈々さん(32)と上野まどかさん(26)もアニメや漫画好きで、コスプレも楽しむオタク女子だ。「私たちが『こんな空間が欲しい』という理想を集めてオープンした」と説明する。

 当初は1人での来店が多いと見込んでいたが、グループでの来店も多く、週末になると昼過ぎに約50席が満席になる人気ぶり。キャラクターの誕生日にファンが集まってパーティーを開いたり、おすすめの漫画を回し読みしてオタク談義に花を咲かせたり…と店の使い方はさまざまだ。

 「オタク女子って、『根暗』とか『気持ち悪い』と見られるのが嫌で、普段は好きなアニメの話題で盛り上がることにすごく遠慮してしまいます。しかし、この店なら安心して自分が好きなことを『好き』と言えます」と青山さんは話し、2号店をオープンする構想もあるという。

家庭持ち「趣味を我慢」…羽伸ばせる場所を

 入り組んだ細い路地沿いに中古家電店や工具店、骨董(こっとう)店などの小さな店舗が集積している「日本橋商店会」(通称・五階百貨店)内に1年前にオープンしたカフェ「tidy(タイディ) cafe」では、「居間」をイメージした店内で、漫画を読んだり、おしゃべりを楽しんだりできる空間を提供している。

 もともと特撮好きの女性店主(44)が「オタク女子たちが思いっ切り羽を伸ばせる場所をつくりたい」と一念発起して、前の仕事を辞めてオープンした。

 店主によると、年齢を重ねるにつれて「家でオタクの趣味が楽しめなくなった」という女性の声をよく聞くようになったことがきっかけになった。「結婚して家庭を持つと、夫や子供の目を気にして我慢している女性は多い」と指摘する。

 近くの専門店で購入した同人誌を店内で読む際には、ブックカバーも用意されている。これなら周りの目を気にすることなく安心して読むことができ、こうした心遣いも人気の理由だ。午後10時まで営業しており、女性会社員(39)は「手作りスイーツもおいしいし、職場から自宅に帰る間に自分の時間が持てるのがうれしい」と話していた。

マイナスイメージが一変…SNSで仲間見つけ

 関西テレビ系で放送中のドラマ「海月(くらげ)姫」では、NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」(平成28~29年)の主演女優、芳根(よしね)京子さん(21)が、クラゲを愛するオタク女子を好演。また、モデル出身の女優、山本美月(みづき)さん(26)は、アニメ「鋼(はがね)の錬金(れんきん)術師」の大ファンであることを公言し、アニメキャラクターなどのコスプレ姿を雑誌で公開するなどしている。

 オタク女子が認知されてきたことについて、アタラキシア・カフェの青山さんは「昔は『オタク』という言葉は、マイナスイメージでしか語られなかったが、最近ではオタク女子を公言しやすい雰囲気になってきたと思います」と話す。以前は、アニメや漫画といった趣味を他言できず、共通の趣味を持つ女性を見つけることは難しかったが、SNSの急速的な普及でつながりやすくなったという。

 業界に詳しい専門家は「趣味を極めた人を『オタク』と定義するなら、日本人全員がオタクといっても過言ではない。アニメ好きな女性も多いはずで、潜在的な需要は非常に高い。最近になってようやく顕在化してきた」と指摘する。

 日本橋界隈(かいわい)の出店退店情報を調査し続けているフリーペーパー「pontab」の楠瀬航編集長は「日本橋に女性客は確かに増えていて、そこをターゲットとした店もでてきている。現在は日本橋独自のビジネスモデルかもしれないが、成功例がでてくれば他の地域に広がる可能性もある」と話している。