【関西の議論】かき氷、今やスイーツ…ふわふわ新食感・インスタ映え 真冬でも大盛況のワケ - 産経ニュース

【関西の議論】かき氷、今やスイーツ…ふわふわ新食感・インスタ映え 真冬でも大盛況のワケ

ほうせき箱の「奈良のいちご氷」。真っ赤なイチゴ蜜とヨーグルトのエスプーマのコントラストが鮮やかだ=奈良市
「かき氷EXPO」で人気店の個性あふれるかき氷を味わう女性客ら=奈良市
「かき氷EXPO」で人気店の個性あふれるかき氷を味わう親子連れ=奈良市
奈良で初めて開催された「かき氷EXPO」。有名店のかき氷を味わおうと、全国各地から駆けつけたファンが行列を作った=奈良市
日乃出製氷の72時間純氷。まろやかな口溶けで評判を呼んでいる=奈良市
かき氷を作る実行委の五島一弘委員長(左)。自動氷削機でも技術の差が出るという
 夏の風物詩「かき氷」が新食感スイーツに進化を遂げ、ブームを巻き起こしている。2月下旬、全国各地の有名店が奈良に集結した「かき氷EXPO」では、2千枚用意された前売りチケットが早々に完売。イベント当日は寒空の下、コートにマフラー姿の老若男女が長蛇の列を作り、お目当ての一品をほおばった。かき氷といえば夏が定番だが、専門店は今や厳寒期も“かき入れ時”の盛況ぶりだ。ブームの背景を探った。(神田啓晴)
全国23の有名店が自慢の一品を提供
 2月24、25の両日、奈良市の奈良春日野国際フォーラム甍(いらか)別館で初めて開催された「かき氷EXPO2018 in NARA」。広島・宮島の老舗旅館がプロデュースする「玉氷」や、ふわふわの食感で評判の岡山の「おまち堂」など、北は新潟から南は熊本まで全国の有名23店が自慢の一品を振る舞った。開店3年以内の店が味や美しさを競う大会や、参加店が東軍と西軍に分かれて人気を競う対抗戦も開かれた。
 当日は熱心なかき氷ファンが全国から詰めかけ、イベント開始前から長い列を作った。注文したかき氷をシェアして味わう若い女性のグループ客がいれば、一人で黙々とかき込む中年の男性客も。カメラやスマートフォンで写真撮影しながら、満足そうにスプーンを口に運ぶ姿があちこちで見られた。
2千枚の前売りチケット完売、うれしい誤算
 「寒い時期だけど、コアなかき氷ファンに来てほしい」。1月17日、奈良市役所でイベントをPRした実行委員会のメンバーはそう期待を込めた。
 季節を限定せず、かき氷を味わってもらえるファンを増やしたいとの思いからだ。ただ、確たる勝算があったわけではない。用意した前売りの入場チケットは2千枚。実行委のメンバーで、奈良市のかき氷専門店「ほうせき箱」の平井宗助さん(47)は「千枚は売れるだろうと思っていたが、あと半分は未知数だった。売れなかったら当日券を出そうとも考えていた」と打ち明ける。
 半信半疑で企画した季節外れのイベントだったが、ふたを開けてみれば、予想をはるかに上回る反響があった。同19日から販売を始めた前売りチケットは3日足らずで1700枚近くが売れ、約2週間で完売。平井さんは「コアなかき氷ファンをターゲットにしていたので県外のお客さんが多いだろうと思っていたら、奈良が一番多かった。地元の方に応援していただいていることをひしひしと感じた」と喜んだ。
「インスタ映え」間違いなし
 かき氷がこれだけ人気を集めるのはなぜか。奈良市内で屈指の人気と知名度を誇るほうせき箱を訪ねてみた。
 開店前の午前9時前、店頭の名簿に入店希望時間を書き込み、開店の11時に店に戻ったところ、すでに行列が。30分ほど待って入店し、奈良県産のブランドイチゴ「古都華」が盛りだくさんの「奈良のいちご氷」(1100円)を注文した。
 ジャムのような味わいの真っ赤な蜜と、ヨーグルトをムース状に加工した「エスプーマ」が氷の表面を覆い、紅白のコントラストが美しい。俗に言う「インスタ映え」間違いなしだ。食感はフワフワの初雪のようで、いくら食べても頭が「キーン」とならない。縁日で売っているような、ジャリジャリと粒の粗いかき氷とはまるで別モノだった。
 かき氷の最近の人気の理由は、種類が豊富で味もよく、見た目も魅力的でスイーツ感覚で味わえるようになったことに加え、写真共有アプリ「インスタグラム」を通じて広まったことも挙げられそうだ。実際、イベントや店舗で商品の写真を撮っている人は多かった。
奈良はかき氷の聖地
 会場周辺には、かつて宮中で用いる氷を製造した「氷池(ひいけ)」や、貯蔵所の役割を担う「氷室」もあり、近くの氷室神社では毎年5月、全国の製氷・冷凍業者が氷柱などを奉納して商売繁盛を願う「献氷祭」が営まれている。平成26年からは全国のかき氷店が同神社に集う「ひむろしらゆきまつり」が始まり、奈良は「かき氷の聖地」とも呼ばれる。
 奈良市内にはほうせき箱のほかにも、お茶を使ったかき氷が有名な「おちゃのこ」、フランス料理店が夏季限定でかき氷を提供する「氷匠ル・クレール」など人気店が多い。
 今回のイベントでは、同市の昭和16年創業の老舗製氷メーカー「日乃出製氷」が、400貫(約1500キロ)もの氷を無料で提供した。かき氷店やバーなどで使われる「純氷」は、家庭の製氷機で作る氷とは違い、48時間かけてゆっくり凍らせたものが一般的。同社の純氷はさらに24時間加え、丸3日かけて高さ1メートル、重さ135キロにもなる氷柱を作る。
 溶けにくく、まろやかな口溶けが特徴で、中孝仁専務(44)は「シロップや蜜の邪魔をしない氷」と胸を張る。奈良県内の50を超える飲食店や「食べログスイーツEAST2018」の百名店に選ばれた「慈げん」(埼玉県熊谷市)にも納品しており、香港のかき氷店からもオファーを受けているという。
震災による節電がきっかけ
 このかき氷ブームはいつから始まったのか。日本かき氷協会の小池隆介代表(45)は「(平成23年に)東日本大震災が起きて以降、電気を使わずに涼を取る方法としてかき氷が再注目されたのが1つの要因だと思う」と話す。
 かき氷店のレビューなどを掲載する「トーキョーウジキントキ」を立ち上げ、各地のかき氷店を紹介してきたayanoさん(45)も「節電で夏にクーラーをつけられなくても、見ているだけで涼しくなる食べ物としてブームになったのでは」と推察する。
 ブームによってメーカーも恩恵を受けている。氷削機の製造販売を手掛ける「中部コーポレーション」(三重県桑名市)と「池永鉄工」(大阪市)によると、売れ行きはここ数年、堅調に伸びているという。
 中部コーポレーションの担当者は「年度ごとに違いはあるが、毎年1・5~3割程度は売り上げが伸びている」と明かす。現在の売れ筋は自動氷削機で、「素人でもフワフワの氷が削れる。この手軽さもブームの一端を担っているのでは」という。
おいしさの決め手「氷の盛り付けと削り方」
 ひと味違うかき氷が自宅で手軽に作れるようになったが、その道のプロにかき氷づくりの極意を聞いた。
 「かき氷EXPO」実行委員長を務めた「茶屋 赤鰐(あかわに)」(岐阜市)の店主、五島一弘さん(53)は平成4年に店をオープンして以来、100万杯以上のかき氷を作ってきたという。イベントでも一心不乱に氷を削り、絶品のかき氷を振る舞った。五島さんは「新規店と銘店では、氷の食感や蜜の打ち方がまるで違う。自動氷削機を使えば簡単そうに見えるが、氷の盛り付けと削り方で味に差が出る」と職人の顔をのぞかせた。
 まだまだ進化を続けそうなかき氷。真冬の今回のイベントも成功裏に終わった。小池代表は「冬は氷も溶けにくく、夏には作れない手の込んだかき氷が提供できる」と寒い時期ならではのメリットも強調。「(かき氷が)ずっと今のように注目されるかどうかは分からない」としながらも、「日本人は夏にかき氷を必ず食べる。新規参入は今後も増え続けると思う」と期待を込めた。