あの「ビリギャル」著者が伝授 「どんな難関受験もこの言葉で突破できる」 “バクノビ”術とは

銀幕裏の声
「バクノビ」や「ビリギャル」。坪田さんのビリギャルシリーズはいずれもベストセラーだ

 平成27年の大ヒット作「映画 ビリギャル」の原作の著者で学習塾「坪田塾」塾長、坪田信貴さんの新刊「バクノビ 子どもの底力を圧倒的に引き出す339の言葉」(KADOKAWA)が刊行された。“学年ビリ”だった女子高生の偏差値をわずか1年で40以上も上げ、難関の慶応大に合格させた“秘伝”の技を余すところなく披露。受験生だけでなく社会人にも参考になる言葉が満載だ。この339の言葉を実践できれば、どんな難関受験もクリアできそうだが、坪田さんの口から意外な言葉がもれた。「受験なんて失敗しても構わない。もっと大切なことが人生にはありますから…」。その真意を聞いた。   (戸津井康之)

「グチの多い子にはこの方法を!」

 「グチが多く、勉強から逃げ回る子供には、こう接してみてください」

 坪田さんの指導法はこうだ。

 「話は分かったからさ、とりあえず、この1問だけ解いてみようよ」

 問題が解けたら、「もう解けたんだ。すごいね。じゃあ次の問題をやってみようか」と何度も何度もほめながら、次のステージへと一緒に進んでいく。

 実はビリギャルことさやかさんも、塾に来た当初、家庭内のグチを延々と話し続けていたというが、坪田さんはグチを聞きながらもこの言葉で導いていった。ビリギャルは口を動かしながらもペンを持つ手も動かし続け、1年で英語の偏差値を40も伸ばしたのだ。

 この本の中には、ただ受験技術を身につけるための知識だけでなく、米国の大学で心理学を学み、人間のやる気を引き出す手法を編み出した坪田さんの「人材育成メソッド」のノウハウが凝縮されている。

「受験システムを逆手に取れ!」

 坪田さんの教育法を聞いていると、改めて受験というものの概念が変わってくる。

 「高3年の受験生に『勉強が得意?』と聞くと、たいてい『苦手です』と答える。では『勉強が好き?』と聞くと、たいてい『嫌い』と言う。小中高と12年間もやってきてですよ。例えばテニススクールに12年通った人がこんな答えを口にしますか?」

 坪田さんは「これは子供が悪いのではなく、今の教育システムに問題があるとしか思えません」と強調した。

 坪田さんが日本の受験教育に疑問を覚えた転機は、ニュージーランドの高校へ留学したときだった。

 「もともと得意ではなかった」という英語を独自の学習法で1年で修得。「この“独学の精度”を確かめよう」と米国の大学で心理学を学び、「間違いない」と確信したという。坪田さんの英語の実力は、ネーティブスピーカー並みのTOEIC990点(満点)だ。

ついにビリギャルが映画化

 坪田さんは米国留学から帰国後、名古屋市内の塾で講師の仕事を始める。あらゆるタイプの勉強嫌いの生徒を、坪田さんが考案した独自の学習法で次々と難関大に合格させた後、独立。平成19年、学習塾「青藍義塾」(現「坪田塾」)を創設する。

 塾講師として現在まで約1300人の生徒を指導。ビリギャルもその1人だ。

 彼女の悪戦苦闘の受験記を綴ったノンフィクション「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」はベストセラーとなり、大学入試の過去問題を集めた通称「赤(あか)本(ほん)」の隣に並べる書店も出てくるほど話題を呼んだ。さらに人気の若手女優、有村架純主演で「映画 ビリギャル」が製作され大ヒット。坪田さん役は実力派俳優の伊藤淳史が熱演している。

 「当時、塾に通い始めたさやかさんに、『今、偏差値30台の君が、もし慶応大に現役合格したら、映画化されるような話なんだよ』と励ましていたのが、本当にその数年後に実現してまって…」と坪田さんは笑った。

課題は“教える人材”

 塾長となった坪田さんの現在の課題は、自分と同じ技術を持ち、指導できる講師の育成という。

 今著は、そんな塾講師育成のための講義などで、これまで実際に坪田さんが語り伝えてきた言葉の数々を、塾のスタッフが記録。これを坪田さんがまとめ上げたものだ。

 もともと塾講師らを対象に語られてきた言葉だけに、受験生だけでなく社会人として生き抜くための示唆に富んだ言葉も多い。

 「あなたの目の前に2つの道がある。左はレッドカーペットが敷かれた楽しそうな道。右はトゲトゲが生えたイバラの道。当然、みんなレッドカーペットの道を選ぶでしょうね」と坪田さんは言い、こう続けた。

 「でも実は左の道は1キロ、レッドカーペットが続いた後に、99キロのイバラの道が続く。一方、右は1キロ、イバラの道が続くが、その先99キロはレッドカーペットが敷かれている。さあ、あなたならどちらの道を選びますか?」

 目の前の受験勉強は辛いが、そのずっと先にはきっと充実した人生が待っている-。そんな、長い人生について深く考えさせる言葉なのだ。

学歴社会を疑え

 「中学受験に失敗し、もう人生が終わったように悩む親子は少なくないですが、果たしてそうか? たとえ、いい大学に受かっても、やりたい仕事ができなければ充実した人生とは言えないのではないでしょうか。今、満足していますか?」

 坪田さんは受験生の指導者でありながらも、いまだに学歴社会から抜け出せない日本の現状についてこう皮肉を込めて論じる。

 「日本では、いい大学に行くだけで一生評価される。実際は『5教科が18歳ぐらいのときに良くできました』という程度のことなのに…。しかし現実として、わずか数年の努力と実績だけで一生評価されるのなら、目の前の受験勉強なんて楽なものでしょう」

 この本には、受験勉強と、さらにその先にある、充実した人生を生きていくために習得しておくべき技術のヒントが隠されている。