【関西の議論】意外にもハードな乗馬、癒やし効果も 女性、お年寄りにも人気 - 産経ニュース

【関西の議論】意外にもハードな乗馬、癒やし効果も 女性、お年寄りにも人気

乗馬体験をする記者。かわいい馬にすっかり癒やされた=京都府八幡市
 優雅で高級志向のイメージが強い乗馬。実は馬を操縦するには相当な体力が必要で、コートを走り回るテニスよりもハードというデータもあるという。その一方で、馬による癒やしの効果は医学的にも認められており、触れ合いを心身の機能改善に役立てる「ホースセラピー」も盛んだ。女性やお年寄り、子供にも人気という乗馬の魅力を取材した。(南里咲)
同い年の相棒
 京都府八幡市の乗馬クラブ「クレイン京都」。「相棒」になってくれたのは、サラブレッドの牡馬(おす)ダンディで、筆者と同じ23歳。馬としては、ずいぶんとおじいちゃんだが、名前の通り、クラブを紹介するパンフレットによく登場する容姿端麗な馬だ。性格も穏やかなことから体験乗馬などで初心者を乗せることが多いという。
 ブーツ、安全ベスト、ヘルメットの装具3点を着用し、まずはダンディの鼻面をなでてごあいさつ。慣れない手つきで触ると顔をすり寄せてきた。「心を開くと顔を寄せてくることもありますよ」。インストラクターの岡本雄哉さん(35)の言葉に、リラックスした気分になった。
 いよいよ背中にまたがる。地面から馬の背までは約170センチ。いつもと違う視界が広がり、姿勢を正していないとバランスを崩しそうになる。慣れてくると、馬の背に揺られるのが楽しくなってきた。時折気が緩んで姿勢が悪くなることもあり、岡本さんに何度か声をかけられた。
 両足で腹を蹴ると「進め」、手綱を手前に引くと「止まれ」の合図。スピードを上げたい時は腹を何回か蹴るのだが、おっとりとしたダンディは指示が伝わって身体が動くまで少し時間がかかる。このように、それぞれの性格も踏まえて馬とつきあうのも魅力の一つに思えた。
 約20分間の騎乗を終えると、体にほどよい疲労感があった。ダンディから降り、感謝の意を込めて首筋を軽くたたくと、目を細めていたのがかわいらしかった。短い時間だったが、心なしか距離が縮まった気がした。
ダイエットも癒やしも
 乗馬は高級志向とのイメージが先行していただけに、クレイン京都に小学生から80代の高齢者まで幅広い年代の人々がレッスンに通っていると聞いて驚いた。同クラブでは利用者全体の約6割を女性が占める。実際に体験してみて「年齢に関係なく楽しめ、何歳からでも始められる」との岡本さんの言葉に納得する。
 岡本さんは、「(テレビ番組の)暴れん坊将軍のように走りたい」と思い、大学生の頃から習い始め、乗馬の楽しさに魅了されていくうちに「仕事にしたい」と思うようになったそうだ。
 冬にもかかわらず、なんだか体がぽかぽかしてくる。「実は乗馬はカロリー消費量が高いんですよ」と岡本さん。意外にも、乗馬はジョギングやテニスより単位時間あたりのカロリー消費量が高いというデータがある。
 馬に乗っているだけと思われがちだが、バランスを取るために全身の筋肉を動かすため、体脂肪を燃やして体重を減らす有酸素運動になるのがその理由だという。さらに姿勢矯正や筋力強化などにも役立つことから、筆者のように運動不足に悩む人が始めることが多いようだ。
 同クラブに通う80代男性は腰の筋力の低下で、歩くときにはつえが手放せなかったが、乗馬をきっかけに筋力が上がりつえが必要なくなったという。
医学的「癒やし」効果も
 ダンディに乗ってみて、身体的な効果だけでなく生き物である馬との触れ合いで心が落ち着いてくることも実感した。
 こうした「癒やし」効果は医学的にも認められており、乗馬や馬の世話を通じて人間の心身機能を向上させるリハビリテーションは「ホースセラピー」と呼ばれ、注目を集めている。理学療法士などの専門職がいる乗馬クラブなどで行われており、発達障害の子供や身体障害者が主な対象となっているが、健常者でも受けられる。
 ホースセラピーでは、乗馬で体幹が鍛えられて平衡感覚が良くなるほか、馬の世話を通じて馬の気持ちを読み取ろうとすることで知覚が発達するという。さらに「馬に乗れた」という満足感から自信や自己肯定感にもつながる。
 ホースセラピーの普及に努める一般財団法人ホースコミュニティ(滋賀県栗東市)は平成8年に北海道で初めてホースセラピーを行ったといい、今では全国で実施団体が200以上あるという。担当者は「アニマルセラピーといえば犬や猫が主流だが、(馬は)乗ることができるのが大きな特徴。繊細な生き物である馬との触れ合いは、社会復帰を早める手助けとなる」とその効果を語る。
 「馬と一心同体になって走り、時間を共有できるのが乗馬の魅力。長く続けられる趣味としてもおすすめです」とクレイン京都の岡本さん。心なしか姿勢もよくなり、運動後のほどよい爽快感に包まれながら、再会を楽しみにダンディに別れを告げた。