家庭に潜む重大リスク…ドラム式洗濯機で5歳男児窒息死 子供の命守る手立ては

関西の議論

 不幸な事故だった。堺市堺区の民家で1月、ドラム式洗濯機内で男児(5)が意識不明の状態で見つかり、搬送先で死亡した。大阪府警は家族が目を離した隙に男児が誤って密閉空間に入り込み、窒息死したとみている。メーカー各社は設定を解除しなければふたが開かない「チャイルドロック機能」のほか製品改良を進めているが、ハード面での機能が家庭に潜むリスクをすべて排除できるわけではない。安全対策の担当者は「洗濯機はそもそも危険なもの」と強調している。

ロックはかからず

 1月27日午後3時ごろ、昼寝から目を覚ました30代の父親は、すぐに異変に気付いた。2階で一緒に寝ていた男児がいない。家中をくまなく捜したが、見当たらない。もしかしたらと洗濯機のふたを開くと、中にぐったりしている様子の男児がいた。

 「子供が洗濯機の中に入っている。意識がない」

 父親の119番で病院に搬送された男児だが、約1時間後に死亡した。

 男児は両親と3人暮らし。母親は外出中だった。

 洗濯機は1階の洗面所に設置され、高さ約1メートル、幅約70センチ、奥行き約60センチ。発見当時は稼働していなかった。男児の身長が約120センチだったのに対し、洗濯機のふたの最下部は約40センチで自力で入ることができる高さだった。

 捜査関係者によると、洗濯機は国内大手家電メーカーの平成26年製。一家は27年に購入した。外から開けられないようにするチャイルドロック機能が付いていたが、父親は府警に対し「ロックは普段からかけていなかった」と話した。ふたが閉まると、洗濯機は中から開けられない構造だった。

 府警は男児が1人で中に入った後、何らかの拍子でふたが閉まってしまい、脱出できなくなったとみている。捜査幹部は「親御さんの気持ちを考えるといたたまれない」と語った。

より安全な製品へ、メーカーも対策

 節水効果や乾燥力に優れているとして、ドラム式洗濯機は12年ごろから国内で流通。洗濯槽が横向きのため、縦型と比べて誤って子供が中に入ってしまうリスクがある。

 事故は過去にも起きている。

 27年6月には、東京都青梅市の住宅でドラム式洗濯機の中に閉じ込められた小学2年の男児=当時(7)=が搬送先の病院で死亡。当時からすでにチャイルドロック機能はほどんどのドラム式に備わっていたが、このときもふたが閉まると内側からは開けられない機種だった。

 この事故が契機となり、メーカー側も機種の改良に乗り出した。

 パナソニックは同年、内側から押した場合、子供の力でも開けられる新機種を発表。入り込んでしまっても自力で出やすい設計に見直した。担当者によると、ふたと本体をつなぐ接合部を改良したという。

 日立もこの年、チャイルドロック機能の使い方を記したラベルを、正面上部の見やすい位置に変更。洗濯機内に入らないよう示したイラストも貼り付けた。

 国内の洗濯機市場の販売台数はここ数年480万~500万台前後で推移している。市場調査会社のGfKジャパンの推計によると、29年に国内で販売された洗濯機のうち、ドラム式は13%。改良機種の普及は進んでいない。

命にかかわる-大事なのは大人の意識

 子供は好奇心が旺盛で大人が思いもよらない行動を取りがちだ。ハード面の見直しだけでは不慮の事故を完全に防げない。

 消費者庁は(1)子供が勝手に入らないよう、使っていないときでも必ずふたを閉める(2)チャイルドロック機能がない洗濯機では、ふたにゴムバンドをかけるなど工夫する-といった対策を挙げている。

 業界団体の日本電機工業会によると、今や国内メーカーの多くのドラム式には内側から開けられる機能がついているという。

 それでも担当者は「幼い子供にとって洗濯機はそもそも危ないものだ」と指摘。「チャイルドロックは有効だが、100%安全とは言い切れない。子供を洗濯機のそばに近づけないように各家庭で注意してもらうことが何より大事だ」と話す。

 国民生活センターも「親の注意を理解できる年齢の子供には、ドラム式の中に入れば息ができなくなることなどの危険性をよく説明してほしい」と、子供に直接伝えることの重要性を訴えた。