「違いのわかる大人の女性」ターゲット 今年のバレンタインは作り手も“女子押し”

関西の議論
オーストラリア在住の中村有希さんが手がけるナカムラチョコレートは珍しいアボリジニの食材が使われる=あべのハルカス近鉄本店

 バレンタイン商戦まっただ中の各百貨店は、見た目がかわいいインスタ映えするチョコレートや会場でのイートインなど、女性の目や舌を楽しませ、訪れる客の滞在時間を長く、何度でも来店してもらえるようにあの手この手で工夫を凝らしている。今年は「違いが分かる大人の女性」をターゲットに、今まであまり注目されていなかった女性ショコラティエが作るチョコレートを押す百貨店が増えている。(木村郁子)

「女性らしさ」を特徴に

 ショコラティエと呼ばれるチョコレート職人は、他の料理人と同様に、男性が多いのが特徴だ。チョコレートに触る手の温度が男性より高いうえ、体調によって味が一定しないことから、女性が少ないとも言われている。ただ、百貨店が女性ショコラティエをプッシュするのは、この時期、購入する客のほとんどが女性のため。見た目や味の好みなど、女性のほうが女性のことを理解しているからだ。

 高島屋大阪店は今年、ギリシャの「ミナ・ハンドメイドチョコレート」、フランス・ボルドーの元ファッションモデルが手がける「アスナ」をはじめとする海外ブランドのほか、兵庫・西宮発の「デリスモア」、大阪・上本町発の「ル・プティ・ボヌール」など女性ショコラティエ6人のブランドを展開する。

 高島屋大阪店洋菓子バイヤーの古川泰照さんは、「約4年前から女性が作るチョコレートの取り扱いを増やしています。百貨店側としても、買い手のほとんどが女性であるなら、作り手である女性を応援したい、と大阪から始まりました。今では全店に広がっています」という。

 「メゾン・ド・ショコラ」といわれる高級チョコレート店のショコラティエはほとんどが男性。上質なカカオ、おいしさを追及するのは男性ならではのこだわりの視点だ。ところが、女性の作り手は、母親であることも多く、自分の子供が食べても安全であることに重きを置くのが特徴ともいう。

女性目線で梅酒トリュフ

 厚労省が1月29日に発表した「平成28年国民健康・栄養調査」で「飲酒習慣者の割合の年次推移」によると、男性の飲酒習慣者の割合が減少傾向をたどるものの、女性は平成15年の6・6%から8・6%と増加傾向にある。お酒好きな女性のためのチョコレートを女性の作り手とともに製作したのは、阪急百貨店梅田本店だ。

 阪急は今年、日本酒発祥の地である奈良・葛城市の日本酒醸造元「梅乃宿」と、老舗洋菓子店「モロゾフ」(神戸市中央区)との三社共同で梅酒を使ったチョコレートを作った。「梅乃宿」は日本酒業界では珍しく女性社長が手がける蔵元として知られ、モロゾフの担当者も女性、同店バイヤーも女性という、3人の女性担当者からバレンタイン限定の梅酒トリュフが生まれた。

 「トリュフに使われる梅酒は、吉野梅を贅沢に使った梅酒と、梅の果肉が口の中に広がる梅酒を使用し、洗練された味わい」と梅乃宿酒造の戦略推進部長の福山和子さんは話す。

 阪急百貨店バイヤーの高見さゆりさんは、「お酒のチョコレートというと、チョコの中からどろっと液体が流れる男性が好きなウイスキーボンボン。実は女性は苦手な人が多い。お酒を楽しむ女性が増えたこともあり、華やかな香りとすっきりとした甘酸っぱさが女性にも喜ばれるはず」とアピールする。

女子学生ともコラボ

 あべのハルカス近鉄本店では、オーストラリア・パース在住の日本人ショコラティエ、中村有希さんが監修した「ナカムラチョコレート」が今年初お目見え。オーストラリアの森林で暮らす先住民、アボリジニと交流を続けていく中で学んだ伝統的な食材であるフィンガーライムに加え、ネイティブピーチと呼ばれるクワンダンの実、ユーカリなどを使用したチョコレートが好評だ。中村さんのレシピを忠実に、本高砂堂(神戸市東灘区)が生産を手がけ、昨年12月に兵庫県西宮市にショップをオープンしたばかり。

 「中村さんの手によるチョコレートは、中身を追及した製品。日本人にはなじみのない素材は、研究職として働いていた彼女ならではのユニークな試みがマッチしました」と、本高砂堂のセールスマネジャーの藤沼寿一さん。

 例えば見た目はイチゴのホワイトチョコなのに、中身は抹茶。イチゴの酸味がプラスされたジュレをプラスしたことで、抹茶の深みをさらに深くした味わいが持ち味だ。

 また、近鉄百貨店では、四天王寺大学(大阪府羽曳野市)の女子学生らとともにイートインコーナーも設置。テーブルやイス、壁紙に至るまで、インスタグラムに映えるシンプルさを学生たちが提案し、会場を訪れる客たちを楽しませている。