貨物列車、こんな物も運びます 鉄道車両、家庭ゴミから自衛隊装甲車まで

鉄道ファン必見・動画
東大阪市の近畿車両から甲種輸送される東武鉄道の電車

 長距離トラックの運転手不足を受けて注目度が増している貨物列車。運ぶ物として、工業製品や部品、野菜や果物、引っ越しや宅配の荷物などがよく知られているが、意外な物も請け負っている。鉄道車両の輸送もそのひとつだ。「甲種輸送」と呼ばれ、車両メーカーで完成したばかりの車両を、発注元の鉄道会社まで届ける。首都圏の私鉄車両が関西のJR線を走るケースもあり、ファンの人気を集めている。

製品として「出荷」

 1月のある日の午後、JR学研都市線の放出駅(はなてん=大阪市)のホームや周辺では、カメラを構えた大勢の人々がある貨物列車を待ち構えていた。やがて徳庵方面からJR貨物のディーゼル機関車DE10の姿が。後ろに従えているのは7両編成の電車。ただ、パンタグラフは下りたままで無動力。銀色のボディーに赤と黒のラインが入った見慣れない電車が機関車に引かれるレアなシーンに、集まった人々は盛んにシャッターを切っていた。

 この列車の「積み荷」は東京、埼玉、栃木などを走る東武鉄道伊勢崎線の通勤型電車70000系で、東京メトロ日比谷線直通用として増備が進んでいる。今回、JR学研都市線の徳庵駅(とくあん=大阪府東大阪市)に隣接する車両メーカー、近畿車両で製造された「製品」を、JR貨物の貨物列車を使って発注元の東武鉄道に「出荷」されたのだ。列車は同駅を出発し、城東貨物線で吹田貨物ターミナルに到着。ここで電気機関車に付け替えて東海道線を東上し、武蔵野線などを経由して終点は埼玉県の熊谷貨物ターミナルだった。

 全国各地に始発駅

 鉄道車両を運ぶ「甲種輸送」の始発駅は日本車両がある愛知県の豊川、川崎重工業がある神戸市の兵庫、日立製作所がある山口県の下松など、全国各地の車両メーカーの数だけある。

 鉄道ファン向けの雑誌には「甲種輸送」のダイヤが掲載されている。それによると、この年末年始、川重で製造された京浜急行の通勤型電車、新1000形が兵庫から神奈川県の逗子まで、新潟トランシスで完成したJR北海道の特急型気動車、261系1000番台が新潟県の黒山から、青函トンネルをくぐって函館まで運ばれている。

 JR貨物の機関車が牽引し、引き渡される新製車両の内部には発注元の鉄道会社の社員が乗り込み、冷暖房などの電源確保のため、ディーゼル発電機が持ち込まれることもあるという。また、レール幅がJRと異なる会社の車両は、出荷時は仮の台車が使用され、納品された時点で正規の台車が取り付けられる。

 ちなみに東海道、山陽、東北などフル規格の新幹線車両は車体が在来線より大きいため、貨物列車での輸送ができず、基本的にはトレーラーによる陸送、船による海上輸送となる。

 演習支える機材輸送

 鉄道車両のほかにも、貨物列車はインパクトのある物を運んでいる。「クリーンかわさき号」といわれる列車の積み荷は川崎市の家庭から出た「ゴミ」だ。

 臨海地区に新しいごみ処理センターを整備したが、内陸部のゴミをトラックで輸送した場合、交通渋滞や排ガスによる大気汚染のおそれがあるため、貨物列車のゴミ輸送が平成7年に始まった。専用コンテナを使用し、休日を除いて片道20キロあまりを1日1往復。運行開始から20年以上経過した現在も、川崎市の効率的なゴミ処理、CO2削減に貢献している。

 まだまだ異色の荷物はある。陸上自衛隊が演習を行う際に見られるのが機材輸送列車だ。設営用の機材のほか、装甲車や偵察用車両も運ばれ、一般の貨物列車とは全く異なる雰囲気を醸し出している。

 レールや産業廃棄物、発電所で使う大型変圧器のほか、リニア中央新幹線の工事による発生土も内陸部から臨海部へ運んでいる。

 JR貨物は3月のダイヤ改正で関西と仙台を結ぶコンテナ列車を新設するほか、各列車のスピードアップを図る。これからも貨物列車が運ぶ物は量も種類も多くなりそうだ。