ディスコ、おでん屋台、お化け屋敷…奇抜なイベント列車人気 ローカル鉄道存続の切り札なるか

鉄道ファン必見
神戸電鉄のディスコトレインで踊る人たち=平成29年12月

 都市部の鉄道と違い、高齢化や過疎化に伴う沿線人口の減少で、地方の鉄道は苦戦を強いられている。そんな状況を打開しようと、ローカル鉄道が開催しているディスコ、おでん屋台、お化け屋敷といったイベント列車が話題を呼んでいる。移動手段としてだけでなく、列車に乗ることそのものを楽しんでもらい、新たな利用客確保につなげる狙いで、鉄道との意外なコラボは人気も上々だという。生き残りをかけた取り組みが今、注目を集めている。(木下未希)

踊れ!!ディスコトレイン

 軽快な音楽が鳴り響き、ミラーボールが回る薄暗がりの中、所狭しと男女が汗だくになりながら踊っている。ここは繁華街のダンスフロア…ではなく電車内だ。

 神戸電鉄は昨年12月、兵庫県の谷上-岡場駅間を往復運行する列車内で1970~80年代のディスコを再現するイベント「神戸ディスコトレイン」を開催した。中高年のディスコ世代を対象に利用客増を狙った企画で、3年前から毎年12月に開催している。昨年は男女約170人が「乗車」した。

 車内に足を踏み入れると、バブル時代を象徴するファッション「ボディコン」のワンピースに真っ赤な口紅を塗った女性の姿や、アフロ姿に赤色や青色の派手なサングラスを身につけた男性の姿が。

 高校生の「バブリーダンス」で再び注目を集めている荻野目洋子さんの代表曲「ダンシング・ヒーロー」など、当時のヒット曲が流れると、乗客らは歓声をあげ、車内でハイタッチ。曲に合わせて体を揺らしながら肩を組んで歌ったり、ステップを刻むなどして往復約2時間のディスコの旅を満喫した。

 同県姫路市の自営業、大塚史枝さん(66)は「若いころはストレス発散のためによくディスコに通った。普段は公共の場として利用している空間で、思い切り踊れるのは快感」と笑顔。

 会社の上司に誘われて参加したという徳島県の中田侑里さん(20)は「いろいろな世代の人と同じ曲で好き勝手に踊れるのが楽しい。電車でこのようなイベントができるなんて、日常空間に非日常が広がっているようですてきな気分」と少し照れながら話した。

苦しいローカル線

 電車に乗ることをもっと楽しんでもらおうと、神戸電鉄は約10年前から行き先を告げずに走行する「ミステリートレイン」や、車内でクリスマスソングの演奏を楽しむ「電車に乗ってハッピークリスマス」など、さまざまなイベント列車を運行し、家族連れを中心に人気を集めている。

 背景には利用客減少への危機感がある。神戸電鉄は、有馬温泉(神戸市)に向かう有馬線など兵庫県内で5路線を運行。高度経済成長期の昭和40年ごろには沿線の住宅開発が進み、通勤・通学客らを中心に利用客は増加を続けた。

 しかし、近年は少子高齢化による沿線人口の減少や、道路網の整備などによるマイカー通勤者の増加、路線バスの充実などを理由に利用客が徐々に減少。平成4年度の約6600万人をピークに、28年度は約4100万人まで落ち込んだ。なかでも神戸と三木、小野の3市にまたがる粟生(あお)線は28年度の利用客が4年度の半分以下の約620万人となり、存続の危機に陥っている。

 神戸電鉄の担当者は「沿線の人口減少が進む中、今後も利用客の減少は避けられない。観光資源として県外から客を呼び込むなど、新たな電車の活路を見いださなくては」と話す。

ローカル線の可能性

 神戸電鉄に限らず、利用客の減少に悩まされる鉄道会社は少なくない。国土交通省によると、12年度以降に全国で39路線が廃線になるなど、ローカル鉄道の廃止が相次いでいる。

 一方で、ユニークな車両イベントが功を奏し、新たな利用客の確保につなげた事例も増えてきた。

 愛知県の豊橋鉄道は、車内で温かいおでんを味わえる冬の特別列車「おでんしゃ」を19年から毎年運行。のれんや赤ちょうちんがぶら下がる車内で、地元企業の手がける特製おでんを味わえるほか、冷たいビールが飲み放題だ。

 11月から2月末まで期間限定で運行され、会社帰りのサラリーマンやカップルのほか、県外からの観光客も数多く訪れる。運行開始当初は500人程度だった利用客が、28年度には4000人以上に増えるなど、人気観光スポットになった。今年は2月25日まで運行するが、すでにほとんどが予約で埋まっているという。

 また、千葉県の銚子電鉄は27年から、夏の期間限定で「お化け屋敷電車」を運行している。怪談話が流れる薄暗い車内の中、ゾンビや落ち武者が襲いかかってくる破天荒な企画が話題を呼び、多数のメディアに取り上げられた。沿線の観光客減少に悩まされていた同社はその後も「電車プロレス」など数々のユニークな企画を打ち出し、電車そのものを観光スポットにすることでブランド化に成功している。

 「これほど多彩なイベントを車内で開けるのはローカル線ならではだ。利用客が少ないことを逆手にとった柔軟な発想で、新規需要を取り込み確実な増収につなげた」と評価するのは、茨城県のひたちなか海浜鉄道社長で、ローカル鉄道経営の手法などを伝える「ローカル鉄道・地域づくり大学」の代表理事も務める吉田千秋さん(53)。

 沿線人口が減少するなかローカル線が生き残るには、イベント列車のような固定観念に縛られない攻めの集客が必要と指摘。そのうえで沿線の住民や行政との連携が重要だといい、「ローカル線と沿線地域の活性化は一心同体。イベントを同時開催するなど連携を深めることで、さらなる利用者の増加が見込めるはずだ」と強調している。