「万引繰り返す」「暴力振るう」悩める親に少年鑑別所の地域援助、相談3倍以上に

関西の議論

 非行防止のため少年鑑別所が保護者らから相談を受ける「地域援助」が注目を集めている。法務省によると、相談件数は平成28年の1年間で約6千件に達し、2年前の3倍以上に上った。27年6月から少年鑑別所の主要業務の一つに位置づけられたためだが、背景には人口減で少年犯罪の数自体は減りながら、割合は高止まりしている状況がある。関係者は「事件に至らない段階で子供のことに悩んでいる人は多い」と指摘。大阪府内では保護者からの相談はもちろん、「(社会復帰を支援する)福祉関係機関からの相談が多いのが特徴」といい、幅広いニーズに対応している。

心理学などの専門知識活用

 「万引を繰り返してやめない」「親の財布からカネを盗む」「暴力を振るう」…。昨年全国の少年鑑別所の地域援助に寄せられた相談の例だ。

 少年鑑別所は、少年の裁判に相当する少年審判が開始するまでの間、家庭裁判所の観護措置決定に基づいて少年を収容する施設。少年審判に向け、家裁の求めに応じて面接や心理検査を行うほか、家庭環境や交友関係の調査も実施し、結果を家裁に通知する。分所を含め全国52カ所に設置されている。収容期間は通常4週間だが、最長8週間まで延長できる。

 家裁の要請を受けた調査では、少年について、医学や心理学などの専門的知識を用いて非行や犯罪に影響を与えた要因も調べている。このノウハウを生かす形で、非行に悩む保護者らの相談を受け付けているのが、地域援助だ。

 地域援助業務は旧少年院法で「本来業務に支障のない範囲」とされていた。だが、27年6月の少年鑑別所法施行で本来業務に位置付けられ、各地の鑑別所に地域援助の担当として「法務少年支援センター」を設置。26年に1907件だった相談は27年が27年4631件、28年が5981件と急激に増えた。

少年犯罪、件数減も人口比高止まり

 増加の背景には少年犯罪を取り巻く状況も影響している。

 平成28年に検察庁が受理した事件の少年は7万2274人。10年前から10万人以上も減った。鑑別所への入所者も15年から13年連続で減少し、28年は8056人。「鑑別所の持っている知見を外に向けて活用する余裕が出てきた」(法曹関係者)という。

 また、刑法犯の検挙人数を人口比で見ると、成人が人口10万人あたり185・4人なのに対し少年は347・1人と、少年が成人より約1・9倍と依然高い状況が続く。地域援助には、問題行動の早期段階で少年に介入することで、事件化を未然防止する狙いもある。

「暴行」中学生が改善した例も

 「(地域援助)潜在ニーズはもともと高かった」と話すのは、地域援助を担当する大阪少年鑑別所の籔内秀樹・地域非行防止調整官。

 籔内調整官によると、大阪府内では保護者からの相談はもちろん、「(社会復帰を支援する)福祉関係機関からの相談が多いのが特徴」という。同鑑別所で平成29年11月末までに地域援助として受け付けた相談件数は549件。このうち保護者以外の機関が377件だった。

 一般社団法人「よりそいネットおおさか」(大阪市)の山田真紀子所長は「どの程度再犯の恐れがあるのか、それを防ぐにはどう対応をすればいいのか。福祉とは違った角度から助言をもらえる」と地域援助の効果を感じている。

 同法人は、障害者や高齢者で身寄りがないなど自立が困難な出所者を福祉施設に橋渡ししている。少年時代から犯罪を繰り返していた男性について、すぐに腹を立てる傾向があったが、鑑別所が実施したプログラムで改善意欲が見られた。山田所長は「鑑別所は福祉の力強い後方支援」と話す。

 全国的にも同様で、法務省によると、福祉関係のほか学校からの相談もある。中学校の教員から「生徒が別の生徒に暴力を振るう」と相談があったケースでは、生徒に自らの行動を書き出させて客観視させることで反省につなげたほか、カッとなったときに一呼吸置くという対策を一緒に考え、暴力を抑えることができるようになったという。

 籔内調整官は「相談内容は多様で初めて扱うようなケースも少なくないが、時代によって変化していくニーズに応えていきたい」としている。

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 地域援助による相談を利用したい場合は、全国共通相談ダイヤル((電)0570・085・085)に電話を掛ければ、最寄りの法務少年支援センターにつながる。