異例広告「先にお詫びしときます」…年頭の決意表明、近大の思惑

関西の議論
2018年正月の近大の年頭全面広告。今年も新年からインパクトの強さをみせた

 謹んで新年のお詫びを申し上げます-。近畿大学が年頭から、また新聞各紙の全面広告(関西版)でやらかした。昨年、議員や芸能人の不倫・暴言、企業などの不祥事の謝罪が相次いだことを逆手に取り、“お詫び広告”のオンパレード。ただ、謝罪文を読むと近大の実績をちゃっかりアピールしている。近大は、SNS(会員制交流サイト)につぶやかれた感想などから「隅々まで読んでいただけた様子がうかがえた」と手応えを感じているという。異例の手法が入試の志願者数5年連続日本一につながるかが注目される。  (松岡達郎)

はしゃいだけど、たった1年で…

 「早慶近中東立法明上」

 メーンのお詫びは、漢字ばかりの9字がひときわ目を引く。実はこれ早稲田、慶応、近畿、中央、東海、立命館、法政、明治、上智の9大学の頭文字を並べたものだ。英国の教育情報誌「タイムズ・ハイヤーエデュケーション」が発表した最新のTHE世界大学ランキングに基づき国内で1000位以内と評価された私立総合大学をくくっている。

 昨年の年頭広告では、その前年の発表で日本の私立総合大学で601~800位に入ったのが早稲田、慶応、近大ということで「早慶近」のキャッチコピーで大々的にアピール。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)を飛び越え、早慶と並ぶという大胆なくくりを提示し「日本は語呂の良いだけの大学の“くくり”に、依存してませんか?」と問題提起してみせた。

 お詫びは、昨年発表された最新のランキングでは近大は801~1000位に位置付けられ、601~800位の私立総合大学が早慶だけになったことに対してだ。近大の1000位以内で大学をくくると早慶近だけでなく、中央、東海、立命館、法政、明治、上智とも肩を並べてしまうことに「『早慶近』という新しいグループを作り、はしゃいだものの、(中略)たった1年で『早慶近』じゃなくなったことを重ねてお詫び申し上げます」と謝った。

 その上で「ただ、大学界にちょっとした問題提起をしたことはそれなりの意義があったと思っています。『早慶近中東立法明上』これでも、すごいと思っているんですけどね」と自慢が入る。

 考えてみると関西で「産近甲龍」(京都産業大、近大、甲南大、龍谷大)のくくりで関関同立より下位に位置づけられる近大が世界基準の評価で立命館と肩を並べ、関関同の上位になるだけでなく、関東の「早慶上理」に入る上智大や「MARCH」(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の多くと並ぶことは、確かにすごいことかもしれない。お詫びと言いながら、さりげなく近大の実力をアピールする。

近大は狭き門に

 もうひとつは「2018年問題に関するお詫び」と銘打つ。

 謝罪文は「近年、大学界におきましては、今年から加速する18歳人口の減少、いわゆる『2018年問題』に戦々恐々としております。これにより、受験生は大学に入りやすくなるというのが定説と言われています」と始まる。

 ところが、途中から近大は「志願者数が倍増し、倍率も急上昇しました。そこで昨年4月には入学定員を920人増加させ、少しでも門戸を広げる努力をしましたが、志願者はさらに増加」「私たちにとっては非常に嬉しいことなのですが、『2018年問題』に期待している受験生の皆様に、入りやすくなっていないことをお詫び申し上げます」と謝罪した。

 要するに、大学受験の対象となる18歳人口が減り続けている近年、どこの大学も昔と比べると確実に入りやすくなっているとされるにもかかわらず、近大は志願者数の増加によって、逆に以前より狭き門になっていることをお詫びと称して誇示している内容なのだ。

 このほか、今や名物となりつつある“ド派手”な入学式に対し「これはLIVEか?」といった印象を与えると入学式プロデューサーを務めるOBのつんく♂さんがお詫び。近大マグロの料理を味わえる大阪・キタと東京・銀座の近大直営の養殖魚専門料理店の予約がとりにくく、ランチ時間帯には行列ができることも謝罪した。

 昨年4月に東大阪キャンパスにオープンした図書スペースの蔵書約7万冊のうち約2万2千冊がマンガで占められ、マンガから新書や文庫本に導入する試みを始めたことに対しても「“マン喫”と誤解を与えてしまったことを深くお詫び申し上げます」とした。

今年もやらかすので先にお詫び

 「近大の改革実績を伝えることを考えたが、列挙するだけでは面白みがない。そんな中で昨年を振り返ったとき、不正や不祥事で相次いだお詫びがテーマとして浮かんだ」

 近大広報室の今井雄一さんは、今回の広告制作の経緯をこう説明する。

 近大は平成23年の年頭から学内外への決意表明の意を込めて新聞に全面広告を掲載してきた。

 これまでも「早慶近」だけでなく「固定概念を、ぶっ壊す。」「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」など毎年インパクトのあるデザインとキャッチコピーで固定化された大学のくくりに挑む姿勢を強調してきたこともあり、今井さんは「お詫び広告は新聞ならではの手法で、毎年新聞広告を活用して年頭の宣言をしている近大らしい企画だと考えた」と説明する。

 この掟破りとも言える今年の決意表明について、SNSなどで大きな反響が寄せられたという。「ふざけるな」などの批判もある一方、「攻めている」「おもしろすぎるやろ」などと肯定的な意見も目立ち、「つぶやきからは謝罪文の隅々まで読んで感想をつぶやいた様子がうかがえた」(今井さん)という。

 年始早々、世間をざわつかせた広告を仕掛けた近大の世耕石弘総務部長は「今年もさまざまな注目される取り組みを続け、盛大にやらかしますんで、先にお詫びしときます」と話している。