「きょう打ち明けようと思った」バケツにコンクリ詰めの乳児4遺体、出産から20年後に自首した母親の罪業

衝撃事件の核心
斉藤真由美被告

 「なぜか、きょう打ち明けようと思った」。女は1人で訪れた交番で、20年以上抱え込んできた“秘密”について、唐突に語り始めた。「4人の子供を出産しバケツに入れた」。昨年11月20日の朝のこと。その日のうちに、大阪府寝屋川市にある女の自宅から、乳児4人の遺体が見つかった。ただ奇妙というべきか、父親を含めて周囲は妊娠に気づいていなかったという。女は人知れず出産し、バケツに捨て、コンクリートを流し込んでいたのだ。そして、その重すぎる荷物を押し入れに隠しながら、前後して生んだ2人の子供を育ててもいた。母親の罪業(ざいごう)とは-。

厳重梱包

 現場は、寝屋川市内にある3階建ての集合住宅。無職の斉藤真由美被告(53)=死体遺棄罪で起訴=の自宅は、この3階にあった。

 昨年11月20日午前、捜索・差し押さえ令状を持った捜査員が室内に入った。容疑は殺人。直前に近くの交番にやってきた斉藤被告の説明通り、押し入れから4つの段ボール箱が見つかった。

 うち1つを開けたところバケツが見えた。付属のふたで密閉され、その上から粘着テープが巻かれていた。中にはコンクリートが詰められ、ずしりと重い。破砕しない限り、中身は判別できそうにない。

 大阪府警捜査1課は、CT(コンピューター断層撮影装置)などを使って死因を探る「Ai」(死亡時画像診断)の手法で、バケツの中身の解析に取りかかった。「人骨で間違いない」との結論に至り、日付をまたいだ21日午前1時20分、死体遺棄容疑の逮捕状を執行した。

 逮捕容疑は平成4~9年の間に産んだ乳児1人を、寝屋川市内にある当時住んでいた別の家に放置し、27年夏ごろに現在の自宅に転居した際、持ち運んで遺棄したとされた。

 死体遺棄罪の公訴時効は3年だから、9年に出産していたとしても、とうに時効が完成している。そこで府警は、27年の転居時に斉藤被告が遺体の入ったバケツを搬入したことが、新たな遺棄行為を構成すると判断した。

 20年後の突然の自首。斉藤被告は「金銭的に余裕がなく、育てられないと思った」と供述した。

父親「知らなかった」

 産み捨ての理由に経済的困窮を挙げた斉藤被告だったが、2人の息子を育て上げてもいた。

 捜査関係者らによると、斉藤被告は逮捕時まで、10代後半の息子と同居。すでに別居しているが、20代前半の息子もいるという。自首した際には「1人で死のうとも考えたが、息子もおり、私だけでは死ねない」と話した。

 この2人と遺棄された4人の乳児の父親はいずれも同じ人物で、当時交際していた男性だった。斉藤被告によれば、男性は遺棄された4人の妊娠に気づいていなかった。府警は男性からも任意で事情を聴いたが「知らなかった」と答えたという。

 周囲に妊娠を秘していても、おなかが大きくなれば気づかれるのが普通だ。ただ母親のもともとの体形によっては、分からないこともあり得る。周産期医療にかかっていなければ、医療機関や行政も胎児の存在を把握できない。

 2人は物心がつくまで育てられ、4人はすぐに捨てられた。生死を分けた理由は何なのか。この点について斉藤被告は「周囲が妊娠に気づいたため(2人を)育てた」と供述した。

 つまりは偶然の事情に過ぎなかったことになる。

突然へこんだおなか

 遺棄された4人を出産したとされる当時の自宅アパートは数年前に取り壊され、現在は更地になっている。

 4人は父親にも、だれにも気づかれず、その短すぎる生涯を閉じたのか。

 近所に住む女性に話を聞くと、当時のことをよく覚えていた。しかも「妊娠していたはずなのに、おなかが突然へこんでいたということが3回くらい続いた」と証言した。

 女性は近くの銭湯に通っていた。そこに斉藤被告も来ていたのだという。直接裸を見ていたから、気づくことができたのかもしれない。

 しかし、おなかが小さくなっても、赤ちゃんの姿は見ない。「おかしいな」と思ったが、それ以上深く気に留めなかった。

 生活が困窮していた様子もうかがえた。女性はあるとき、斉藤被告から「通夜に参列するため」として香典代を無心されたことがあるという。いくらか貸したが、催促するまで返してもらえなかった。

殺人容疑での立件は

 府警は4人の遺体について司法解剖を行ったが、死因や死亡時期は分からなかった。斉藤被告は「1人は出産後に動いたので、ティッシュを口に入れた」と殺害を認める供述をしている。一方、残る3人については「生まれたときに泣いたり、動いたりしていなかった」と死産を示唆した。うち2人の遺体が入っていたそれぞれのバケツからもティッシュが見つかっているが、斉藤被告は「乳児の体を拭いた際に、ティッシュをバケツの中に入れてしまったかもしれない」と話した。

 捜査幹部は「20年以上たって自首するくらいだ。嘘をしゃべっているとは考えにくい」とする一方、複数の乳児を殺害した可能性がないか、慎重に捜査を進めている。今後は殺人容疑での立件の可否が焦点だ。

 斉藤容疑者が今になって刑事上の制裁を受けようと決意した理由は、よく分からない。自責の念に駆られ続けた結果なのか、わずかばかりでも残っていた母親の理性がそうさせたのか。4人の出産日は記憶しているのだという。