自衛隊に新装備続々 イージス・アショア、長距離誘導弾に国産対艦ミサイルも…

軍事ワールド
米ロッキード・マーチン社によるLRASMの広報画像。外部からの情報支援がなくとも単独で任務を遂行できるとされる(ロッキード・マーチン社HPより)

 北朝鮮の核・ミサイル開発に加え、尖閣諸島近辺での中国の不穏な動きなど、日本の安全保障は厳しい環境に囲まれている。こうした動きに対処するため、政府は自衛隊には過去なかった新装備の導入を次々と決定した。イージス・アショアや長距離誘導弾といった新装備は、自衛隊の装備体系を現実の脅威に即したものへ刷新することになる。(岡田敏彦)

 陸のイージス艦

 1月10日、小野寺五典(いつのり)防衛相は米ハワイで、日本の防衛力を大きく高める最新装備「イージス・アショア」の実験施設を視察した。アショアとは陸地や浜辺を示す英語で、イージスは米海軍や日本の海上自衛隊が装備する「イージス艦」にちなむもの。そもそも「イージス」はギリシャ神話に登場する無敵の盾の名前で、米国の艦隊防空レーダー・ミサイルシステムに付けられた名であり、そのシステムを搭載した艦を「イージス艦」と総称している。

 敵戦闘機や攻撃機など約130個の目標を同時に捕捉、追跡でき、搭載するSM2ミサイルで迎撃できる。また高性能なレーダーをいかし、SM3ミサイルを用いれば北朝鮮の弾道ミサイルも迎撃可能だ。イージス・アショアとは、このイージス艦の機能をそのまま陸上に設置したものといえる。

 陸上に設置する利点は多岐にわたる。「アショア」の導入費用(価格)は約800~1千億円で、イージス艦(約1千500億円)の3分の2と割安に済む。さらにマンパワーの省力化も大きなメリットだ。

 現在、海上自衛隊のイージス艦は6隻だが、弾道ミサイル防衛(BMD)対応艦は4隻で、現在は北朝鮮の核・ミサイル危機に対応して任務(出航)期間が長期化するなど、乗組員の負担が増している。しかし「アショア」なら陸上にあるため、任務にあたる隊員らは勤務時間が終われば帰宅も可能で、交代制のシフトも柔軟となる。

 船体のない利点

 また「アショア」は船体やエンジンなどの駆動システムもなく、魚雷や速射砲も当然持たないため、それらを取り扱う人員を艦隊から抽出する必要はない。

 さらにイージス艦の場合は一定期間の航海を終えると整備や補修のためドッグ入りする必要があり、その間は活動できないが、アショアはそもそも船体もエンジンもないので、こうした任務休止期間を考慮しなくて済む。結果、長期的な人件費と維持費はイージス艦より激減するとみられる。そうした利点と引き換えにしたのが「移動できない」という点だ。

 「アショア」は秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場が配備の候補地となっており、この2基で日本全域をカバーできるとされる。強力なレーダーと長射程ミサイルによるもので、攻撃を迎撃するには十分だが、イージス艦のように動けず固定目標となることで存在位置を知られてしまう。とはいえ、弾道ミサイルさえ撃ち落とすイージス・システム本体に打撃を与えられるような“攻撃方法”がいまのところないのも事実だ。

 弾道ミサイル対応

 政府はこうした海陸のイージスの能力をさらに強化する方針だ。SM3よりも長射程で対空はもちろん巡航ミサイル迎撃や対艦ミサイルとしても使えるSM6についても平成30年度予算で21億円を確保し試験弾を取得する。

 また現在、海上自衛隊のイージス艦が装備するSM3ブロック1A(射程1200キロ)より強力なブロック2A(射程2000キロ)の取得には440億円を計上。米政府も1月9日、ブロック2A(4発)を日本に売却する方針を議会に通告するなど、導入への動きは本格化している。

 時代は「圏外・長射程」へ

 こうした従来のシステムの延長線上にある施策とは別に、全く新しく始まったのが「スタンドオフ・ミサイル」の導入だ。敵の防空システムの圏外から発射できる長射程・高精度ミサイルのことで、政府は3種を予算計上した。うち一つはノルウェーなどが開発中の「JSM」(ジョイント・ストライク・ミサイル)で、戦闘機に搭載し、対艦攻撃と地上目標攻撃の能力を持つ。射程は500キロで東京-大阪の直線距離(約400キロ)を上回る。今年度から航空自衛隊に配備されるステルス戦闘機F35に装備される予定だ。

 残る2つは、米国製の対地ミサイル「JASSM-ER」(ジャズム・イーアール)と対地、対艦両用の「LRASM」(ロラズム)だ。それぞれ「ジョイント・エア・トゥ・サフェイス・スタンドオフ・ミサイル-エクステンデッド・レンジ」と「ロングレンジ・エア・トゥ・シップ・ミサイル」の略となる。

 JASSM-ERは米ロッキード・マーチン社が2014年12月に本格生産を始めた最新鋭巡航ミサイルで、レーダーに映りにくいステルス性を持っており、射程は約1千キロ。この長射程には重要な意味がある。

 米国では中国の「接近阻止/領域拒否」(A2AD)に対抗する中核の兵器としてJASSMを大量装備(1千発以上)しており、その長射程版がERとなる。命中精度は3メートル以内、軍用GPSに加え赤外線画像データで目標を照合し、レーダー波の死角となる低空を飛行するなど、最新最強の巡航ミサイルといえる。JSMより良さそうに思えるが、実はF-35の胴体下兵器倉(ウエポン・ベイ)に内蔵するには全長が長すぎるため、JSMをF-35専用として採用した。JASSM-ERはF-15やF-2など現有装備の戦闘機に装備予定だ。

 もうひとつのLRASMは長距離対艦ミサイルで、米軍では現ハープーン・ミサイルの後継と目されている。航空機はもちろん、イージス艦の垂直発射システムでも運用できる。センサーの開発元のBAEシステムズ社では「最新の防空システムで守られた敵艦船群のなかの標的(空母や指揮艦)を攻撃できる」とする。

 また開発の中心となる米国防高等研究計画局(DARPA)は「高度な敵の防空システム内部に侵入するため、外部プラットホームやネットワークリンクへの依存を減らす」としており、軍用GPSや味方航空機などの情報をデータリンクで得ずとも目標を識別できるとされる。

 両ミサイルとも、敵の地上・海上の防空システムの対応範囲外から発射できることを重視しており、発射母機となる戦闘機や攻撃機の生残性に大きく寄与しているのが特徴だ。

 国産も

 米国最新兵器の導入が次々と決まるなか、一方で国産装備品でも年末に大きな動きがあった。2003年から開発を進めていた超音速対艦ミサイル「ASM3」の開発が終了し、2019年からの量産開始が決まった。その速度はマッハ3以上。水平線下から突然レーダー探知圏内に現れる対艦ミサイルは、探知されてから命中までの時間が短いほど、撃墜される危険性が減るとされる。音速以下の巡航ミサイルとは性格が異なるため、侵攻してくる敵部隊を撃退する方法の多様性を得られる。

 こうした長射程化は専守防衛の範囲を超えるとの批判はあるが、北朝鮮の度重なる弾道ミサイル発射にともない事態は変化している。もし北朝鮮が明らかに日本攻撃の意図を示してミサイル発射準備に入った場合、発射基地など「策源地」の攻撃でしか日本国民の安全を確保できないのは事実だ。

 政府ではこうした北朝鮮情勢や中国の海洋進出に対処するには、米国から長射程ミサイルを購入するだけでは不十分だとして国産化を検討しており、平成34年度の試作品完成を目指す。