京都で唯一の路上靴磨き青年、邪険にされながらも「心まで磨き上げるサービス」信条に「モノを大切にする気持ち良さ」訴え

 
東急ハンズ京都店の店先で靴磨きをする寺島直希さん=京都市下京区

 街の路上から靴磨きが消えつつある中、京都で道行く人の靴を磨き続ける「シューシャインボーイ」の大学生がいる。京都産業大4年の寺島直希さん(23)。「お客さんがその日一日を気持ち良く過ごせるように」。確かな技術と気さくな話術で、靴だけでなく客の心まで磨き上げるサービスが信条だ。(宇山友明)

京産大生の「シューシャインボーイ」 料理人の父が包丁研ぐ姿を見て

 多くの人々が行き交う繁華街・四条烏丸。寒空の夜、東急ハンズ京都店(京都市下京区)の店先で、小さな椅子に座った寺島さんが、客と談笑しながら膝の上に載せた靴を磨いていた。旅行や洋服など、多彩な話題で場を和ませつつ、手は休めない。約15分後、靴は見違えるようにピカピカになった。

 「原点」は、料理人の父親の存在。幼いころ、自宅で包丁を研ぐ姿を見て、自分も愛用する野球グラブを欠かさず手入れするようになった。ファッション好きだったこともあり、大学生になると革靴に魅了され、丹念に磨くのが趣味に。一つの「モノ」を大切にする気持ち良さを知った。

 「道具は手をかけた分だけ変化するし、応えてくれる。多くの人に自分と同じ気持ちを感じてもらいたいと思った」。アルバイトしている大阪の靴磨き店の店長の後押しもあり、約2年前からJR京都駅(京都市下京区)や京阪祇園四条駅(同市東山区)などで、路上での靴磨きを始めた。

「行政の許可取ってるのか」「邪魔だ」…水をかけられたことも

 ただ、当初は駅の職員や近くの土産物店の店主らから「行政の許可をとっているのか」「通行の邪魔だ」と邪険に扱われた。終戦直後に戦災孤児が生業にしていたというイメージからか、年配者からは「そんなことで食っていけると思っているのか」と、水をかけられたこともあったという。

 市役所や警察署に路上での活動許可を求めたが取り合ってもらえず、途方に暮れたが、見かねた常連客が知人を通じて東急ハンズ京都店に交渉、場所を提供してもらった。現在は火・金曜の週2回、同店の前で活動している。

アルバイト先の靴磨き店に正式採用決まる

 料金は1足千~1500円。個々の靴に合わせて仕上げ方を変えるなど細かい仕事が評判を呼び、サラリーマンやOLなどリピーターが増加。今では週30~40人が足を止めてくれるようになったという。

 今春、大学を卒業後はアルバイト先の靴磨き店に正社員として採用されることが決まっており、路上での活動もいったん区切りをつける。「普通の学生だったら巡り合えないような人や価値観に出合い、人生の幅が広がった。また機会があればやりたい」と目を輝かせた。

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