「伊賀の森友問題」に揺れる“忍者の里”…市が議員の仲介で借りた土地に「19年で8千万円」の賃料 

関西の議論
市が土地を借りて新たに設置した近鉄伊賀神戸駅近くのバス待機場。土地の賃借契約が市議会で問題視されている=平成29年12月20日、三重県伊賀市

 「忍者の里」として知られる三重県伊賀市が、駅前の土地の賃借契約をめぐって揺れている。市が工業団地の通勤用バスの待機場(バスの転回されるスペース)として民間から約3千平方メートルの土地を借りたが、貸し手は有力市議の親族が関係する会社で、市が支払う借地料は約19年で8千万円余りに上る。しかも市には交渉に関する詳しい資料が残っておらず、「伊賀の森友学園問題」との批判が出ている。市議会は調査特別委員会(百条委員会)を設置し、年初から契約の経緯の検証を進めており、“忍者市長”として市をアピールしてきた岡本栄市長の政治姿勢が問われる可能性もある。(川西健士郎)

「記録は存在しない」

 特急が停車する近鉄大阪線の伊賀神戸駅。ここに市内の工業団地「ゆめぽりす伊賀」の従業員送迎のためのバス待機・転回場が設置されたのは、工業団地の立地企業連絡会が平成28年6月、設置を求める要望書を市に提出したことがきっかけだった。

 これを受け市は同年12月、駅から約200メートル離れた約3千平方メートルの土地をバス転回場として市内の会社から借りる契約を結び、29年1月から賃借が始まった。駅前のロータリーは朝の通勤時間帯、周辺住民の送迎の乗用車で込み合い、そこにバスが入ると事故の危険性が高まる-。バス転回場の必要性に関する市の説明だ。

 しかし、市議会ではこの土地賃借を問題視。市議会総務常任委員会で追及されたのは、市が負担する月額36万円の賃料だ。賃借は19年3カ月に及ぶ長期契約で総額8千万円以上に上る。委員会は転回場として必要な面積は借用地の3分の1程度で足りるとし、「賃料は高すぎる」と批判する。

市に貸す前提で購入か

 さらに賃借の経緯も疑問視。同委員会によると、問題の土地は27年春に有力市議の妻が役員の会社が大手商社から購入し、28年11月に市議の長男が直前まで役員だった別会社に所有権が移転された。その直後に市との賃貸借契約が成立している。

 市によると、長男の会社との交渉は土地所有権移転前の28年7月から行い、市議が仲介を担当したという。

 また問題の土地はもともと一部が農地だったが、立地企業連絡会がバス転回場を要望するより以前に用途転用の申請が市の農業委員会に出され、転用の許可が下りていた。申請書の転用の目的欄には「大型バスの駐機スペース」とあった。

 29年の9月定例市議会で最初にこの問題を指摘した公明市議は「市は以前に大手商社に問題の土地の買い取りを打診したことがある。市議側はそうした事情を知り、賃貸料収入を見込んで土地を購入したのではないか」と話す。

 その後、同委員会で追及が始まったが、委員会が市に交渉過程の記録を求めたのに対し、市は「記録は存在しない」と回答。これが百条委設置のきっかけとなった。

 市はこれまで、バス転回場の設置は駅前ロータリーの混雑解消のためだとし、用地が必要以上に大きいのでは-との指摘には、「用地は間口が狭く奧に長いため、道路に面した手前の敷地だけを借りると、奧の敷地が道路に面しない『袋地』となり使用できなくなる。このため土地所有者と交渉の結果、すべてを借りることになった」と説明。岡本市長は「バス転回スペースは企業誘致のためにも必要な施策だが、賃借料の額は議論し直す余地はある」と話す。

 ただ工業団地は約20年前からあり、なぜこの時期にバス転回場の要望が出てきたのかを疑問視する関係者もいる。

 一方、市議は本紙の取材にこう答えている。まず土地取引の経緯については、「橋渡しをしたのは確かだが、市の方から用地を借りたいと頼まれてのこと。(こちらから市に)借りてほしいという働きかけはしていない」と説明。また、「事前に土地の転用許可を取っているが、(妻が役員の)会社は市がバス転回場として借りることを知っていたのか」という疑問には、「(将来)農地から他の用途へ転用しやすいように行政書士の指導でバス駐機スペースとして申請しただけ」と答えた。

必要性に「?」

 ところで、バス転回場は本当に必要だったのか。先の公明市議は「実は27年以降、バス転回場の必要性はぐんと薄れている」と指摘する。駅前に入るための大きな道路と橋が27年3月に完成し、ロータリーは以前のように混雑しなくなったというのだ。

 記者が昨年12月の平日午前7時半から8時半までの通勤時間帯に同駅前を確認したところ、ロータリー内に同時に入る乗用車は多くて2、3台。バスが1台停車していたが、数台停車していたとしても混雑するほどではない。

 一方、同時間帯にバス転回場を利用したのは大型バスとマイクロバスの2台だけで、どちらかがいた時間は計1時間足らず。ロータリーでも十分対応できそうだった。

 ちなみに周辺の駐車料金は乗用車の場合、1日で200~250円。月36万円(1日当たり1万円以上)の借地料はこうした“相場”と比べて高いとの指摘もある。

市長は元テレビアナ

 市の契約は妥当だったのか。1月5日にあった百条委の初会合では今後、市から経緯を聞き取った上で、地権者など関係者を証人喚問する方針で一致した。

 市議は現在5期目で、27年4月~28月4月には議長を務めた。岡本市長の国への陳情にもたびたび同行しており、市長に近い議員とみる市の関係者も多い。

 一方、岡本市長は元関西テレビアナウンサーで、24年11月に市長に就任。28年11月の市長選で再選を果たし現在2期目。市庁舎やイベントで自ら忍者装束になるなどし、忍者にゆかりの伊賀市を「忍者市」として観光アピールしてきた。

 根回しをしない政治スタイルで知られ、それがクリーンなイメージにもつながっている。半面、市議会との摩擦もあり、市議24人のうち「市長派は数人」(議会関係者)と少ない。

 百条委の検証とも合わせ、岡本市長が今回の問題についてどう説明するのか注目される。