想定外の問題浮上…京都「シャッター通り」商店街、インバウンドターゲットで人気回復も

関西の議論
外国人観光客を取り込む努力を続け、にぎわいが戻りつつある稲荷繁栄会=平成29年12月、京都市伏見区

 「シャッター通り」化に悩む日本各地の商店街。かつてのにぎわいを取り戻そうと新たな客層を開拓する動きが散見されるが、観光都市・京都の商店街も例外ではない。京都市内の歴史ある商店街が狙いを定めたのが、年々増加するインバウンド(訪日外国人客)。スマートフォン用アプリを導入し、日本語が分からなくても買い物しやすくする工夫に余念がない。この狙いが的中し、店舗が回復する商店街もあるが、別の問題が浮上。復活を願う関係者らの悩みは深い。(桑村大)

アプリで買い物快適に

 買い物客らでにぎわう三条会商店街(京都市中京区)。京都を代表する商店街の一つで、堀川三条から千本三条までの東西800メートルの通りに約180店が軒を連ねる。

 ある昼下がり、青果店や電器店など、昭和時代のレトロな雰囲気が残る店で、1組の外国人カップルが物珍しそうに店内をのぞき込み、カメラのシャッターを切っていた。2人は香港からの旅行者でアンドリュー・デラノさん(41)とヨニー・ホーさん(34)。「過去と現代が融合したような雰囲気がいい。店主との距離も近く、人間味がある」と興味津々だ。

 100年あまりにわたり地域住民の生活を支えてきた同商店街に近年、ある変化が起きている。外国人観光客が足を運ぶようになっているのだ。周辺に民泊施設が急増したことで、自炊のために食料品を買い求めるケースが多く、外国人客の数は急増している。地域の少子高齢化などから地元客は減る一方なだけに、商店街は活気を取り戻した。

 そんな外国人たちにもっと快適に買い物してもらおうと、三条会商店街振興組合は平成29年12月、京都市のITベンチャーと組んでスマートフォン用アプリ「iLoca(イロカ)」の運用を始めた。

 各店舗の人気商品やメニューなどが日・英・中3カ国語で確認でき、音声による自動翻訳機能も付いている。利用者は自分の現在地を高精度に把握でき、商店街や店が発行するクーポンも取得できる。組合の田中正人理事長(53)は「これまで商店街を訪れなかった層にも浸透し、さらなる活性化つながってほしい」と期待を寄せる。

需要をすくい切れず

 かつては住民の生活を支えた商店街も、住民の高齢化や大型店の郊外への出店などで客足が落ち、「シャッター通り」となっている地域が少なくない。

 中小企業庁が全国の商店街を運営する組合を対象とした27年度の調査によると、商店街が「繁栄している」と答えた組合は、わずか2・2%。「繁栄の兆しがある」も3・1%だった。一方、約7割が衰退を危惧していることが明らかになった。

 要因の一つが、固定客の高齢化。調査結果によると、客層で最も多いのが「高齢者」で37・2%だった。一方で、28年には年間約2400万人の外国人が日本を訪れ、旅行消費額は計3兆7500億円。この巨大な財布を逃す手はない。

 ただ、インバウンド需要を取り込めていないのが実情だ。近畿経済産業局は、活性化を図る取り組みで成果を上げている商店街35カ所について調査を行った。その結果によると、約7割が客に占める外国人の割合が「増加ないし増加の兆しが見られる」と回答。しかし、外国人対策を取っている商店街はわずか2割にとどまる。潜在的なニーズがありながら、対応し切れずに需要を取りこぼしている現状がうかがえる。

復活も地元客と軋轢…

 そんな中、インバウンドの取り込みに成功し、かつてのにぎわいを取り戻しつつあるのが、伏見稲荷大社(京都市伏見区)のおひざ元に展開する稲荷繁栄会だ。設立当初の昭和26年、大社前の本町通を中心に約150店が立ち並んでいたが、平成24年にはわずか15店まで落ち込んだ。

 存続が危ぶまれたが、2014(平成26)年に世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」が、伏見稲荷を日本の観光地の「人気1位」として紹介したことをきっかけに、外国人観光客が急増。この機会を逃すまいと受け入れ環境の整備に力を入れた。

 外国の文化や習慣への理解のため、講師を招いて店主らが日本と外国の違いを学んだうえで、守ってほしいマナーやルールを店先に掲示した。さらに、インバウンドからの需要が高い公衆無線LAN(Wi-Fi)を整備。商店街や観光ルートを日・英・中3カ国語で紹介するホームページも立ち上げ、Wi-Fiに接続すると、自動でアクセスできるように設定した。

 こうした対策が実を結び、今では26店舗にまで回復した。稲荷繁栄会の大谷英之参与理事(49)は「これまで見えていなかったターゲットにすべき客層が鮮明になった」と手応えを感じている。

 ただ、別の問題も浮上した。外国人客の急増は地元客との摩擦を生み、両者の共存が大きな課題になってきたのだ。60年近く稲荷繁栄会を利用してきた女性(88)は、活気ある様子に懐かしさを感じる一方、「急に立ち止まってスマートフォンで撮影する観光客が多く、ぶつかってしまうことがある」と困惑する。

 さらに、レンタカーを利用する外国人客も増えたことから、交通にまつわるトラブルも後を絶たない。混み合う場所で事故が増えたり、店の駐車場に勝手に車を止められたりすることもあり、商店街は対策に追われている。

 「インバウンドも大事だが、地元の人にも愛される商店街でいたい」と大谷さんも語る。新たな課題は、稲荷繁栄会だけの問題ではない。近畿経済産業局の担当者は「地元の利用客と外国人観光客が互いに気持ちよく利用できるよう、バランスのとれた商店街づくりが大切になる」と話している。