“関西発”の連ドラ「大阪環状線」3シーズン目へ突入、映画も構想!?

銀幕裏の声
大正駅編の撮影で、トミーズ雅(右端)と打ち合わせする木村プロデューサー

 “関西発信”の連続ドラマとして、関西テレビで1昨年1~3月に放送された「大阪環状線 ひと駅ごとの愛物語」が話題を呼んだ。制作陣を同局のディレクターや関西在住の脚本家らで固め、俳優も関西弁を話す関西出身の俳優たちを配役。関西色を前面に打ち出した異色ドラマは深夜枠にも関わらず人気を呼び、昨年パート2が、そして今月16日から第3弾「大阪環状線Part3 ひと駅ごとのスマイル」(毎週火曜深夜零時25分)が放送される。“仕掛け人”はドラマ演出も手掛ける同局の木村弥寿彦(やすひこ)プロデューサー。「現在、関西で放送されている連ドラのほとんどが東京キー局での制作。この状況を変え、関西らしいドラマを作りたい」という一念で構想を温めてきた。関テレは今年創立60年を迎える。大学時代、自主製作映画を撮っていた木村さんは「パート4も構想中ですが、実は創立60年に向けて劇場版も計画しているんですよ」と壮大な構想を明かした。 (戸津井康之)

“オール関西”ドラマ

 「関西発信の連ドラで印象に残っているのは西郷輝彦さん主演の『どてらい男(やつ)』(昭和48~52年)ですね。関テレのスタジオで収録した国民的人気ドラマですが、それ以降、関テレでは単発ドラマはあっても全国放送される連ドラの制作が難しくなっているのが現状です」と木村さんは言う。

 現在、関西の放送局が制作し、全国放送されている連ドラは少なくないが、現実には東京在住の制作スタッフや東京の俳優たちによって東京のスタジオをはじめ関西以外の地域で撮影されているケースがほとんどだ。関西の局内ディレクターが全国放送される連ドラを演出する機会は失われつつある。

 もともと、ドラマ作りを希望し、テレビ局に入った木村さんは「このままでは関西のテレビ局でドラマ演出ができるディレクターがいなくなってしまう」と危惧し、数年前から構想を練ってきたのが「大阪環状線」シリーズで、同局の企画会議などに何度も提案し、何年もかけて局幹部たちを説得し、実現にこぎつけたのだ。

関西のディレクター養成

 関西の放送局でドラマを制作する目的、その意義について木村さんはこう力説する。

 「自局社員によるドラマ制作力を維持し、ドラマ演出ができる自局ディレクターを養成することは緊急の課題です。せっかくドラマ演出志望で入ってきたのに、バラエティーしか演出したことのないという若手ディレクターが増えてきている。彼らにドラマ作りのチャンスを与えたい」

 パート3は全10話。演出家として、関テレからはベテランの木村さんを筆頭に30代の若手ディレクターら計4人が参加。外部からの登用も、「できる限り関西在住のフリーのディレクターや脚本家たちに依頼しています」という。

 「いつでも関西でドラマ制作ができる環境を、今のうちに整えておきたいですからね」と木村さんは強調した。

動き出したシリーズ化

 寺田町駅、福島駅、京橋駅…。今月16日から放送される「大阪環状線Part3 ひと駅ごとのスマイル」は、JR大阪環状線の各駅を舞台に1話30分完結で展開する全10話のオムニバスドラマ。

 「大阪環状線は全部で19駅。1駅1話で描いてきたので、パート2でほぼ一周し、パート3では2巡目に入っています」と木村さん。1話完結型だが、3シーズン目に入り、続編へとつながるドラマも生まれている。

 16日放送の福島駅編「こども食堂はじめました」は、パート2から続く今回唯一の続編ドラマだ。

 なかなか本音で語り合えない不器用な“大阪のオカンと息子”の親子愛を描いた前作のその後が描かれる。

 パート2の「弁天町駅編」で、“こてこての関西弁”を話す親子を演じたのは、大阪市生まれの俳優、波岡一喜と兵庫県生まれの女優、キムラ緑子だ。

 「関西制作のドラマなので、できるだけセリフも関西弁にしたい。ですから大阪など関西出身の俳優の人たちを意識して配役しています」と木村さんは言う。

 前作で、父との離婚を打ち明けた母、昌子(キムラ)。息子の順平(波岡)は母と2人で福島駅近くで居酒屋を営んでいた…。

関西の俳優が名乗り

 「全ページ、ほぼ2人のセリフだけでしょう」

 福島駅編の演出を担当した木村さんが見せてくれた台本を見て驚いた。

 キムラと波岡の2人は約30分のドラマでほぼ出ずっぱり。数十枚分の台本全ページが2人のセリフだけでほぼ埋め尽くされていた。

 「大阪環状線シリーズの撮影では、ドラマ1本あたり約2日間で撮り切ります。最少人数の俳優とスタッフ。セットに頼らず、できるだけ駅前などその街でロケを行うなどし、時間と制作費を切り詰めた体制で生み出した“少数精鋭”のスタイルです」と木村さんは説明する。

 さらに木村さんが教えてくれた撮影現場での秘話を聞いて驚いた。

 「キムラさんと波岡さんは実は撮影現場で一切台本を見ていないんですよ。読んでいる姿を見たことがない。現場に台本を持ってきていないかもしれない。すべてのセリフを覚えて現場に来ているんです。大阪で撮る関西弁のこのドラマを関西出身の俳優たちが楽しんで演じてくれていることがうれしい」

 びっしりとメモを書き込んだ自分の台本を広げ、木村さんは満足げに笑顔を浮かべた。

プロデューサー兼演出家

 木村さんは昭和47年、滋賀県生まれ。地元の高校を卒業後、京都の同志社大学へ進学。映画サークルに入り、自分で脚本を書き、仲間で自主制作映画を撮っていたという。

 大学卒業後も映像制作を続けたいと考えていた木村さんは関テレへ就職。報道映像の編集などに携わった後、制作部に配属され、以来、数々のバラエティー番組などでプロデューサーを務め、現在は、人気番組「マルコポロリ!」(毎週日曜午後1時59分)、「おかべろ」(毎週土曜午後2時27分)などを担当している。

 また、プロデューサー業の一方、ドラマ演出もチャンスを見つけ、続けてきた。平成25年放送のドラマ「Y・O・U やまびこ音楽同好会」(平成25年)は、現在、映画やドラマ、CMなどで売れっ子俳優となった桐谷健太の民放ドラマ初主演作で、木村さんがプロデューサー兼演出を手掛けた作品だ。

期待が膨らむ劇場版

 自ら企画した大阪環状線シリーズでは、木村さんはパート1から今回のパート3まで、プロデューサーと同時に、必ず数話で演出も兼任してきた。パート3では、1話目で放送される福島駅編の他、トミーズ雅主演の大正駅編「KOボーイ」など全10話中3話の演出を担当し、現場で指揮を執っている。

 「かつて『どてらい男』が放送され、関西発の連ドラが全国で人気を誇ったように、関西で当たり前に連ドラを制作できる態勢を根付かせたい」と木村さんは構想を膨らませる。

 大阪環状線シリーズは3シーズン目に入り、軌道に乗ってきただけに気になるのは次の展開だ。

 「今年は関テレ創立60周年という節目の年。大阪環状線シリーズの劇場版が撮れれば…。そのときは私が映画監督を務めたいですね」と木村さんは意欲を見せた。