クローゼットの紙袋に大量の札束…大阪のマルサが1年間で暴いた脱税の手口あれこれ

衝撃事件の核心
居宅敷地内の蔵に、現金入りの段ボールが無造作に置かれている

 悪質な脱税者を摘発する「マルサ(国税査察官)」。大阪国税局査察部では今年、テレビCMで有名なビル型納骨堂「梅旧院(ばいきゅういん)光明殿(こうみょうでん)」(大阪市浪速区)を舞台とした脱税事件が注目された。同国税局が直近の平成28年度に摘発した近畿2府4県の脱税額は50億円近く。過去5年間で最多だ。脱税者は複雑な手口で儲けを仮装・隠蔽し、あの手この手で課税逃れを図っているが、資金の隠し場所は無造作に置かれた段ボール箱やタンスの中の紙袋なんていう、意外と単純なケースもあり…。

こんなところに1億円超

 大阪国税局査察部のとある調査先。散らかった様子の蔵の内部には、たくさんの荷物が放り込まれていた。だが、実はその中にあった段ボール箱に札束が隠されていた。内訳は1千万円の束が12束。百万円の束が20束。しめて1億4千万円だ。

 この調査先では、ほかにも、クローゼットの中に置かれていた紙袋から1億5千万円以上の札束が見つかり、室内のボストンバッグでも封筒で小分けされた5千万円以上の現金が見つかった。その方がかえって見つかりにくいとも思ったのだろうか、あまりに無造作な現金の隠し方だ。

 同国税局が摘発した事件では、脱税者らはさまざまな場所に不正資金を隠していた。ただ、こういう無造作に隠匿する例はあまりないといい、金庫に保管されていることが多いという。

 実際、福岡国税局が摘発した事例では、関係先の押し入れの床が電動でせり上がる仕組みになっており、床下の隠し金庫から計約1億円が見つかっている。

刑事告発は建設業が最多

 国税庁によると、28年度に、全国の国税局が事案について刑事告発の可否を決める「処理」を行った件数は計193件で、脱税額は前年度より約23億円増え、約161億円に上った。

 これを大阪国税局管内(近畿2府4県)でみると、処理件数は前年度より1件増えて41件とほぼ横ばいだったが、脱税額は約15億9千万円も増えて約49億9千万円に。1件あたりの脱税額は約1億2千万円だ。

 ちなみに脱税額の近年の状況は、24年度=約31億2千万円▽25年度=約26億1千万円▽26年度=約35億3千万円▽27年度=約34億円。28年度は直近の5年間で“最高額”になっている。

 告発された脱税者の業種は、前年度に続いて建設業がトップで6者。次いで時計卸売が3者で、不動産業▽金属製品製造▽商品、株式取引-がいずれも2者で続いた。

消費税脱税の取り締まり強化

 また、28年度の脱税額を税金の項目別でみると、消費税が約26億1千万円で半分以上を占めた。これは同国税局が「消費税は国民の関心がきわめて高い」などとして積極調査したことが背景にある。

 中でも名古屋市内の宝飾品販売会社が消費税の「輸出免税制度」を悪用していた事案は、同国税局が摘発した消費税の脱税事件としては、過去最多となる総額約17億円を脱税していた。

 事業者の場合、消費税は、売り上げにかかる税額と仕入れにかかった税額の差額を納税する。国内で取引される商品やサービスに課税され、輸出取引には課税されない。国内で仕入れた商品を輸出した場合、輸出業者は仕入れ時にすでに支払った税額を申告することで、還付を受けることができる。これが消費税の輸出免税制度だ。

 捜査関係者によると、同社の関連会社3社が国内で仕入れた高級腕時計を、香港の別の関連会社に輸出したように装って税務署へ申告し、国から消費税の還付を受けていた。高級腕時計をいったん香港に持ち出した後に、同社の社員らが税関を通さずに国内へ再び持ち帰るという大胆不敵な行動を取っていたという。

 事件では、同社前社長と法人としての同社が消費税法違反罪などで起訴され、大阪地裁で公判中だ。

太陽光設備めぐる脱税も

 新たな分野が標的になった事件もあった。

 国が太陽光発電設備の導入を促進するために創設された「グリーン投資減税」で、一定の条件を満たせば、導入コストの大半が経費として認められる。

 この減税制度を悪用したとされたのが、大阪府内の鉄筋工事会社。同制度は太陽光発電の設備が稼働する前には利用できないのだが、関係者によると、同社は設備の稼働開始時期を前倒しし、稼働しているように装って同制度を利用したという。

 同社は設置工事費の水増しも合わせ、2年間で約2億4300万円の法人所得を隠したとして刑事告発された。

 大阪国税局が摘発した脱税事件では、脱税によって得た不正資金の多くが現金や預貯金、有価証券として留保されていたが、家や高級外車、高級腕時計の購入費やギャンブルなどの遊興費のほか、海外のコンドミニアムの取得費用に充当されたケースもあった。

 大阪国税局は「社会情勢の変化に合わせ、年々、脱税の手口も巧妙化している。今後も脱税事件に目を光らせていく」としている。