ガールズバーの店長は16歳少女、ネオンの陰に消えた彼女たちのエレジー(哀歌)

衝撃事件の核心
ネオンがまぶしい京橋駅周辺の街並み=大阪市都島区

 大阪市内の繁華街の一つである京橋エリア。飲食店や風俗店が軒を連ねる激戦区で10月末、あるガールズバーがひっそりと店を閉じた。切り盛りしていた雇われ店長は16歳の少女A。キャスト(従業員)として支えたのは13歳を含む未成年の女子中高生たちだった。警察の摘発を逃れるため年齢を「ハタチ」と偽って集客を目指したが、1年弱で経営難に。11月には大阪府警の摘発を受けてAは逮捕され、キャストも補導された。給与は完全歩合制で、実入りがいいと言えるほどのものではなかった。「お兄さん、お兄さん、ガールズバーとかどうですか」。あまりに若すぎる店の実態は-。

「お前に任せる」

 大阪市都島区東野田町の雑居ビル。エレベーターで4階に上がると、店の看板がピンク色のネオンに照らされていた。

 「今度の新しい店、お前に任せるからやってみろ」

 少女Aは、ある男に見込まれ、今年2月に店長に抜擢(ばってき)された。

 この男は当時、主に京橋エリアで無許可ガールズバーなどを展開していたグループの中心人物だった。後に風営法違反事件などで府警に逮捕され、有罪判決を受けて現在は服役している。

 Aはもともと、男が経営する別の飲食店で勤務していたが、一生懸命な働きぶりが評価されたのだ。

 Aは店長就任にあたり、SNS(会員制交流サイト)などを使って、地元の後輩や知人を従業員に勧誘した。声をかけられた少女のほとんどは実家に寄りつかず、夜の街を徘徊(はいかい)しているようなタイプだった。

 「お金が欲しい」「ブランド品を持ちたい」。そんな中高生なら誰でも抱きがちな思いからAの誘いに乗り、働き始めたという。府警によると、「将来は自分の店を持ちたいと思っていた」と話す少女もいたという。

破れた夢

 少女らの説明によればキャストは全員で15人ほど。Aの後輩人脈がもとになっているため成人はおらず、最年長でも18歳だった。

 「お兄さん、ガールズバーどうですか」。路上での客引きや接客にあたり、Aの指示は徹底されていた。未成年であることがばれないよう、客に年齢を聞かれた際には「20歳」と答え、パトロール中の警察官を見かけた際は、そのままコンビニに入って買い物客を装うよう言い聞かせていた。

 店は昼夜2部制。夜の部の取り分は以下のように決められていた。

 ・店長(A)総売り上げの10%

 ・副店長 総売り上げの5%+自分の客が支払った代金の40%

 ・キャスト 自分の客が支払った代金の40%

 つまり従業員の給与は完全歩合制で、固定給はなかった。その日の収入は客引きにかかっていたことになる。

 府警の調べに対し、Aは自身の取り分について「月約24万円の収入があった」と供述した。従業員らは月に数回の勤務で、最大で5万円程度だったという。

 未成年を売りにしていたわけでもなく、その意味では“正統派”のガールズバーとして競合他店としのぎを削っていた。しかし激戦区の京橋で、年端もいかない少女たちばかりの店が立ちゆくわけもなく、売り上げは徐々にしぼんでいく。Aが「テナント代」の名目でオーナー側に納めなければならなかった月々の90万円も滞り、ついに10月末に閉店。少女たちが夢を重ねたガールズバーは、あっけなく夜の闇に埋もれた。

 府警はそれに先立つ9月初旬、深夜徘徊や未成年喫煙で補導していた当時13歳の中学2年の女子生徒が、京橋のガールズバーで働いているとの情報を得て捜査を開始。閉店後の11月15日に店舗を捜索し、12月6日までに、この女子生徒を店で働かせ、酒を伴う席で男性客に接客させたとして、児童福祉法違反などの疑いでAや副店長で定時制高校に通う別の少女(16)を逮捕し、従業員だった13~16歳の6人を補導した。

 府警幹部は「未成年が働かされていた事件は過去にもあるが、店長が16歳だったのは驚きだ」としながら「少女たちを継続的に指導することで、重大事件に巻き込まれないように見守っていく」と話した。