漫然と見過ごす企業文化に愕然 神戸製鋼の「データ改竄」相次ぎ発覚 

回顧2017関西経済(1)

 小高い丘を切り開いた約26万平方メートルもの広大な敷地に、巨大な生産棟が軒を連ねていた。10月下旬に訪ねた神戸製鋼所大安工場(三重県いなべ市、現・大安製造所)。一連のデータ改竄(かいざん)が行われた舞台の一つだ。

 「品質管理と言っても結局、コスト削減になる。品質を良くしたって、もうけにならないから」

 この工場に長年勤めた元従業員の60代男性の言葉から、品質よりもコストを優先する現場の空気が伝わってきた。

525社に波及

 神戸製鋼の製品性能データ改竄問題は、3連休の中日だった10月8日の緊急記者会見で公表されて以降、次々に明るみに出た。不正は疑いも含め21件。アルミ・銅、鉄鋼、機械部門の国内外の拠点に広がり、納入先は525社に及んだ。

 不正の多くは、顧客が求めた仕様を満たさない製品を、合格品のように装うものだ。工業製品の品質や安全性の基準となる日本工業規格(JIS)を満たさないケースもあった。

 幸い、不正発覚後は顧客側から安全宣言が相次ぎ、これまでのところ事故には至っていない。だが、4拠点がJIS認証の取り消しや一時停止の処分を受け、製品への信頼性が揺らいでいる。

生産者のプライド希薄化

 今年、神戸製鋼を端緒に三菱マテリアル、東レと素材メーカーで同様の不正が立て続けに発覚した。近畿大経営学部の中谷常二教授(ビジネス倫理論)は「競争がグローバル化する中、製品の先にユーザーがいるという想像力が欠如し、生産者としてのプライドが希薄化した結果だ」と批判する。

 実は神戸製鋼が全社的な調査に乗り出したのは、昨年6月に別の不正が発覚したことがきっかけだった。関連会社の神鋼鋼線ステンレス(大阪府泉佐野市)がJIS規格に満たない製品の検査データを改竄。今回の不正と同様の手口だった。

「なぜ始めたか分からない」

 神鋼鋼線の問題に、一連の不正の手がかりを求め取材を続けた。あるグループ会社幹部に問うと、あきらめ顔でこう返ってきた。

 「過去から引き継いだことを、ただ漫然と続けていた。担当者も、なぜ始めたか分からないそうだ」

 最初は出来心だったかもしれない。だが、当事者が気付かぬうちに不正行為が企業文化として根付いていた実態に、愕然(がくぜん)とした。

 神戸製鋼は11月10日に中間報告を公表したが、真相究明は弁護士らによる外部調査委員会に一任した。年内に調査結果や再発防止策をまとめる予定だ。

 ただ、今後の事業立て直しには、不正を見過ごす文化を根絶する意識改革が不可欠だ。(藤谷茂樹)