九州北部豪雨 止まない雨に「不気味さ」、土砂・濁流言葉失い

取材の現場から
警察官に抱きかかえられて安全な場所に向かう子供たち=7月6日、福岡県朝倉市(恵守乾撮影)

 まるで津波に襲われたかのような惨状だった。

 九州北部が記録的な豪雨に見舞われた7月、取材班の一人として、大きな被害が出た福岡県の山間部にある朝倉市に入った。レンタカーで進めるところまで向かい、途中からは、車を降り、山から崩れた土砂や大量の樹木に足を取られながらも進んだ。ある集落にたどり着いた。

 思わず言葉を失った。目の前に広がったのは、一面を覆う土砂に、冷蔵庫などの家電製品や乗用車が点々と埋まる光景。住宅のコンクリートの基礎だけが残っていた。不謹慎かもしれないが、東日本大震災の際、津波ですべてを流された被災地と重なった。

 周囲の山々を見回すと、何カ所も土砂崩れを起こし、茶色の土が斜面に沿って、爪で引っかいたようにむき出しになっていた。河川では、土砂崩れを起こした山から大量の樹木が流れ込み、水をせき止めてしまい、氾濫があちこちで発生していた-。

 あの取材からまもなく半年。濁流に飲まれた住人が約50キロ離れた有明海で遺体で見つかり、今月3日には、35人目の遺体が見つかった。被害の大きさを改めて感じる。

 朝倉市に並び、被害が大きかった大分県日田市の知人によると、現在も至るところで山肌がむき出しとなり、仮設の道路も多く残る。「復旧にはまだ時間がかかる。今も雨が降ると怖いし、天候が悪くなりそうなら遠出は控えている」といい、住民の心にも大きな傷跡を残す。平成28年の熊本地震に続き、故郷の九州がまたも大きな自然災害に直面し、胸が痛む。

 取材時、一向にやむ気配のない雨に不気味さを感じた。数時間ごとに天気図を確認していたが、東西に伸びた帯状の雨雲が九州北部にかかり続けていた。

 それこそが、大雨の原因となった「線状降水帯」だった。積乱雲が次々と発生して幅20~50キロ、長さ50~300キロの帯を形成。局地的にゲリラ豪雨のような猛烈な雨が続く現象だ。

 近年、豪雨に限らず甚大な被害をもたらす自然災害が多発している。地震も含め発生の時期や場所の予測は難しく、私たちが暮らす関西をはじめ、どこが次の被災地となってもおかしくない。九州北部豪雨の被災地では、自主的な早めの避難が生死を分けた事例も多かった。命を守るために、一人一人が防災意識を高めることが大切だ。(井上浩平)