かくて偽装は行われた…東洋ゴム子会社社長が法廷で“告白”した事情とは

衝撃事件の核心
初公判を前に枚方簡裁に入る東洋ゴム化工品の森下敏彦社長ら=9月26日、大阪府枚方市

 神戸製鋼所、日産自動車、スバル、三菱マテリアル、東レ-。今秋、大企業の不祥事が相次いで発覚した。内容は性能データの改竄(かいざん)に無資格検査など、日本の名だたる企業とは思えない行状ばかりだ。「係長以下で行われた現場の習慣」「このやり方が正しいと悪意なく続けてきた」。一連の不祥事で各社が語った釈明は、よく似ていた。何か共通する要因や背景があるのだろうか。平成27年に発覚した東洋ゴム工業(兵庫県伊丹市)による免震ゴムデータ偽装事件で10月、法廷に立った製造元の子会社「東洋ゴム化工品」(東京都)の社長の“告白”から、探ってみた。

「人数少ないのが原因」

 10月16日、大阪府枚方市の枚方簡裁。傍聴席わずか24席の小さな法廷の検証台に立ったのは、東洋ゴム化工品の森下敏彦社長。深々と頭を下げ、「免震ゴムという安全安心を求める製品で虚偽の記載が発覚し、申し訳ない」と謝罪した。

 東洋ゴム工業の免震ゴムデータ偽装事件は、27年3月に発覚。検察の論告によると、東洋ゴム化工品は26年9月、枚方寝屋川消防組合(枚方市)の新庁舎に設置する免震ゴムが国の性能基準に適合していないのに、数値データを偽った検査成績書を作成し、施工業者に交付したとされ、不正競争防止法違反(虚偽表示)罪で起訴された。

 今年9月の初公判で森下社長は起訴内容を認めており、10月の公判では被告人質問が実施された。

 まず尋問を行ったのは弁護側。事件が起こった原因について問いかけた。

 --弁護士「今回の事件が起こった原因は?」

 --森下社長「1人の社員が不正の評価に携わっていた。多種多様なゴム製品があり、一つ一つの製品に携わる人数が少なかったのが原因に挙げられる」

 複数の商品を取り扱う中、関与する人数が足りず、特定の社員に業務が集中していたのが背景にあったというのだ。

 さらに、製品のチェック体制について問われると、「不十分だったとしか言いようがない。管理部門や上司のチェック機能が働けばこういうことはなかった」と陳謝。「1つの業種、部門で1人しか分からない状況があった」と言葉を継いだ。現場に任せっきりだったとの批判を浴びても仕方がない状況だったといえよう。

「引き返すこともできた」

現場の不正を本社側が是正できない。把握していても黙認してしまう。こうした図式は、最近の不祥事にも当てはまりそうだ。

 アルミニウム製品などのデータ改竄が明らかになった神戸製鋼所。11月に公表した調査結果報告書は、閉鎖的な組織や改竄、捏造(ねつぞう)を可能とする検査プロセス、監査機能の欠如などを不正の原因と結論づけた。

 同社では現場の社員は部門を越えて異動することがなく、入社時に配属された工場で多くの社員が会社人生を終えるという。川崎博也会長兼社長は「人事が固定化し、独自の誤った考え方が醸成されたのではないか」と話した。

 人事の固定化で会社の風通しが悪くなったということだろう。東洋ゴム工業の免震データ偽装事件の被告人質問でも、この点が取り上げられた。

 --裁判官「会社として下から上に言いにくいということはないのか?」

 --森下社長「全ての部門でそうではないが、中には(言いにくい状況が)あったので、こういうことが起こった」

 --裁判官「引き返す(不正をやめる)ポイントはあったのではないか」

 --森下社長「事業を始めるときに技術力が不足している、できなかった物(不良品)は出さない、途中で(不正に)気付いたなら止める、など、引き返すポイントはあった」

「会社として隠そうとしたわけではない」 

 11月下旬に製品検査データの改竄を公表した東レでは、平成28年7月に事実を把握していたが、公表まで1年以上を要した。東洋ゴム工業の事件では、25年6月ごろから性能偽装の事実を把握していながら、27年3月まで公表していなかった。この点もどこか似通っている。

 同社の外部調査チームによる最終報告書には、社内会議で一度は出荷停止を決めたものの、「別の条件で数値を補正すれば基準に収まる」として出荷継続を決定していたことが記されている。東洋ゴム工業の公判で検察側は、こうした会社の対応をを突いた。

 --検察官「事後対応は遅きに失したのではないか?」

 --森下社長「役員を含め上位の者に知見がなく判断に遅れが生じた」

 --検察官「改竄発覚以降の対応も良くなかったのでは?」

 --森下社長「化工品の最終判断者も知見がなく、判断できなかったと思う」

 森下社長はこの後も検察側の質問に、「会社として隠そうとしたわけではなく、判断できなかったということ」と同様の弁明を繰り返した。

不正続出も「自発的に出た」「明るい兆し」

 今秋明らかになったほかの企業の不祥事では、不適合製品を顧客の了承を得た上で納入する「特別採用(トクサイ)」と呼ぶ日本独自の商慣行が背景に存在していた。現場のモラル低下と安全優先意識の欠如が目立ち、何より消費者軽視の姿勢が見て取れる。

 東洋ゴム工業では、今年2月にも、新たに産業用ゴム製品の検査不正が明らかになった。被告人質問で検察官が、同社で不正行為が相次いでいる点を指摘。森下社長は「一連の問題はいわゆる内部告発で明るみに出た。自発的に出てきたのは明るい兆しかなと思う」と主張したが、視点のずれた回答に思えてしまう。

 検察側は論告で、こうした企業の姿勢を厳しく指弾した。

 「高度な技術を用いた製品の性能評価は専門知識が必要で、製造業者には高い見識と技術が求められる。にもかかわらず、会社は発覚に至るまで偽装を繰り返しており、顧客、国民の信頼を裏切った」

 そして、会社幹部にも矛先を向ける。

 「幹部は重大性を認識していながら、何とか公表せずに済ませたいなどといった身勝手、無責任な理由で迅速な対応を怠った」

 検察側は「国民の生命身体の安全をないがしろにするもので、厳しく非難される」とし、東洋ゴム化工品に罰金1千万円を求刑した。

 判決公判は12月12日に予定されている。