「元カノ」遺体ベランダに放置し女性と暮らす?逮捕の男、「下水の臭い、窓開けるな」とクギ

衝撃事件の核心
河本智旭容疑者(フェイスブックから)

 一体どれくらいの年月、都市の片隅で野ざらしにされてきたのだろうか。大阪市阿倍野区にあるマンションのベランダで10月、白骨化した遺体が放置されているのが見つかった。女性用下着のみを身につけ、毛布にくるまれていた。大阪府警は遺体の身元を、7年前から行方不明になっていた女性と特定。当時の交際相手で、この部屋を賃貸契約していた無職男を殺人容疑で逮捕した。男は「心中しようと思った」と容疑を認めているが、特異なのは「元カノ」の遺体が見つかるまでの間、この部屋で複数の女性と同居生活を送っていたという事実。ベランダに近づこうとすると、男はこう言って制止していたという。「下水の臭いがするから、窓を開けるな」

家賃滞納の部屋で見たものは

 現場は大阪市営地下鉄御堂筋線の昭和町駅から徒歩1分の7階建てマンション。その部屋の間取りは1Kで、月4万2千円の家賃が数年間にわたり滞納されていた。

 これまで滞納が許されてきた理由は不明だが、家賃の保証会社が代わり、10月から督促に乗り出すことになった。しかし入居者と連絡が取れなかったことから、同26日に社員2人が明け渡し作業のために部屋に入り、ベランダの遺体に気がついた。

 捜査は初動から大きな展開を見せる。室内にメモがあったからだ。平成22年ごろに女性の首を絞めて殺したこと。心中しようと思ったが、自分は死にきれなかったこと-。

 入居者は無職、河本智旭容疑者(28)。当時は元妻(23)の自宅に身を寄せていたが、遺体発見の当日、通話アプリのLINE(ライン)でこんなメッセージを送り、姿をくらました。

 《出て行く。荷物は全部捨ててくれて構わない》

逮捕時の所持金、わずか70円

 河本容疑者がこの部屋を借りたのは22年11月。当時交際していたのは1歳年上の比(ひ)楽(らく)あゆみさんだった。

 比楽さんは居住地の大阪市浪速区から生活保護費を受けていた。ところが、この年の12月以降は所在が分からなくなり、打ち切られていた。

 大阪府警阿倍野署捜査本部はベランダの遺体について、11月15日に比楽さんと特定した。「家賃を滞納していたくらいだ。金銭的な余裕はなく、遠くには行けない」。捜査幹部らは当初からそう推測し、捜査の網を狭めていった。

 そして翌16日朝、阿倍野区内のファストフード店で河本容疑者を発見。現場マンションから約1キロしか離れておらず、当時の所持金は70円だった。

 捜査員が任意同行のうえ殺人容疑で逮捕状を執行した。比楽さん殺害の時期は22年12月から23年ごろまでの間とされた。

「大卒、代理店経営」は真っ赤な嘘

 河本容疑者は堺市内の高校を中退し、家庭内のトラブルから家を出た。コンビニで働いていたこともあるが、定まった職はなかったようだ。

 本人のものとみられるフェイスブックには関西の私大卒との記載があるが、母親(65)によると、これは虚偽だという。

 「父親と同じ大学の経済学部を出て、広告代理店を立ち上げてから、もうすぐ3年になる」

 小中学校の同級生の男性(28)は3、4年ほど前に、河本容疑者から唐突に連絡があったことを覚えている。そのときは何も疑問に思わなかったが、今回の事件の報道で高校中退と聞き、河本容疑者のかつての振る舞いが頭をよぎった。「昔からつかなくてもいいような、どうでもいい嘘をつく癖があった」

>ベランダの遺体、長年放置の可能性

 比楽さんの遺体は実に7年もの間、ベランダに遺棄され続けてきたのか。

 この点について、河本容疑者は室内に残したメモに「風呂場に置いたが、臭いが気になり、ベランダに移した」と書いており、長期間にわたり現場で放置されていた可能性が高い。ただ近隣住民は「臭いはしなかった」と首をかしげた。

 河本容疑者の元妻は26年夏ごろから今年3月まで、この部屋で同居生活を送っていた。その後、阿倍野区内の別の住居に移ったが、河本容疑者も後を追うように元妻の家を生活拠点にするようになった。2人が離婚したのは28年のこと。その後も同居を継続しており、このあたりの2人の距離感はよく分からない。

 元妻は事件発覚後、河本容疑者にミニバイクを提供し、逃走を手助けしたとする犯人隠避容疑で逮捕されている。容疑を否認し、河本容疑者について「殺人事件の犯人とは知らなかった」と供述。ベランダの遺体と死亡の経緯を認識していたかどうかが今後の捜査のカギになる。

 捜査関係者によると、河本容疑者は元妻以外にも、複数の女性とこの部屋で生活していたという。

 ある女性(31)は4年ほど前に、2週間ほど現場の部屋に滞在したことがある。そのとき河本容疑者から「下水の臭いがするから、窓を開けるな」と言われたことを覚えている。

 もう一つ強く印象に残っているのは、河本容疑者が比楽さんとみられる「元カノ」の存在に、しきりに言及していたことだ。

 このころ比楽さんはすでに殺害されていた。遺体はすぐ目の前のベランダにあった可能性が高い。河本容疑者はこの女性に対し「元カノ」についてこう表現していた。

 「めっちゃ、かわいそうな子なんや」

 捜査本部は比楽さん殺害の動機や遺体遺棄の経緯について全容解明を急ぐ。