鉄道車両、神鋼部品に高い専門性 メーカーは不信抱くも切り替えに二の足 

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記者会見で頭を下げる神戸製鋼の川崎博也会長兼社長=10月26日、東京都千代田区(川口良介撮影)

 神戸製鋼所の性能データ改竄(かいざん)問題で、不正製品を使用している鉄道車両メーカー各社が神戸製鋼から提出されたデータを元に、車両の強度など安全性の確認を進めている。実車での検査は解体を伴うため、書類のみの検査を行っているが、現時点では多くが「安全に問題がない」と判断。神戸製鋼製の部品を排除する動きまでには至っていない。鉄道車両の製造は専門性が高く、簡単に供給元を切り替えられない事情があるようだ。(織田淳嗣)

組み立てでも気づかず

 国内最大手の日立製作所の広報担当者は、今回の不祥事での対応について「簡単にすぐに、仕入れ先を他のメーカーに切り替えることはしない」と話す。車両の安全性自体は確認されていることが理由のひとつだ。

 日立製作所が阪急電鉄に納めた車両では、アルミ製の車体を構成する、1枚1枚のアルミ板の接合部分の仕様が、発注と異なっていた。しかし日立製作所では溶接して組み立てる段階で、担当者は仕様とのずれに気づかなかったという。

 日立製作所が出荷前に行った非破壊検査では、溶接部分の安全性に問題はなかった。また車体の厚さが、発注よりも0・数ミリ厚くなっていたことが判明したが、強度は高められる結果となり、重量にも問題はなかった。

 JR東海子会社で国内3位の日本車両製造(名古屋市)の広報担当者も「現時点で、一律に排除することは考えていない」と話す。

鉄道会社の意向で採用

 鉄道会社側も動きは慎重だ。納入された新幹線の台車部品に不正のあったJR西日本、JR東海も「安全性には問題がない」との認識で、運行は継続している。今後1年以内に行う定期検査で随時部品を交換していく方針だが、JR西では「神戸製鋼製の部品を今後も使う、使わないという意思決定は行っていない」(広報担当者)と説明。部品を交換する段階では「神鋼部品」が維持される可能性がある。

 東京商工リサーチの10月20日の発表によると、神戸製鋼グループでデータ改竄を行ったグループ7社の販売先企業は1次、2次合計で3143社にのぼる。

 担当者は「建材など比較的、他の会社からも調達しやすい部品については、神鋼製品の採用を見送る動きがある」と解説。一方で、鉄道車両に関しては「専門性が高く、精密なものが多いため、扱える企業の数は限られてくる」と“神鋼離れ”が進みにくい状況について説明する。

 ある車両メーカー関係者は「鉄道会社の意向で、デザインによっては特定の会社の部材を採用しなくてはならない場合もある。車両メーカーの一存では取引先を決められない場合もある」と話す。

オンリーワンの義務

 ただ、今後の取引の維持のためには、迅速で正確な情報提供が急務だ。

 鉄道車両で国内2位の川崎重工業の金花芳則社長は10月27日、東京都内で開いた記者会見で、今後の取引について「原因究明と対策の中身を見て検討したい」と話し、不信感を示している。

 日立製作所によると9月12日に神戸製鋼から「データの改竄があった」とする電話連絡があり、同14日に書面が送られた。ただその内容は「まったく具体的な説明になっていなかった」(関係者)という。その後、データが続々と提出され、両社がデータを突き合わせながら、ようやく状況を把握した。納品先のJR東海に、新幹線の台車部分の部品で不正があったことを報告したのは同21日だった。

 近鉄グループの近畿車両(大阪府東大阪市)では神戸製鋼の不正の発覚後、資材部門が中心となり、過去に納入された部品の製造番号の洗い出しを進めている。データが提出された際に迅速に対応するためだ。広報担当者は「安全性に関わるデータなので、判明次第できるだけ早く出してほしい」と話している。

 鉄道車両製造の世界で、神戸製鋼が「オンリーワン」の存在であればあるほど、真摯(しんし)な説明は強く求められる。神戸製鋼で営業を担当した80代のOBは「不正をしたのは悪いことだ」とした上で、「神戸製鋼の技術者は製品の安全性や機能について、もっと説明すべきではないか」と話している。

(11月20日掲載)