残酷すぎる乳児産み捨て相次ぐ クローズアップされる望まぬ妊娠と孤立出産

衝撃事件の核心
大阪市内の病院で10月、生まれて間もない新生児が置き去りにされているのが発見された。母親は逮捕されたが、望まぬ妊娠と「孤立出産」の問題は社会に暗い影を落としている

 死ぬ瞬間だけでなく、出生のシーンでも、孤独にさいなまれる人たちが増えている。望まぬ妊娠と、その結果としての「孤立出産」の問題だ。大阪市内の病院では10月、生まれて間もない新生児が置き去りにされているのが見つかった。へその緒がついたままで、院内で分娩された子供ではなかった。その日のうちに逮捕された母親は「家族にも知らせていなかった」と説明した。だれに見守られることなく出産した母親と、生後数時間で捨てられる子供-。その社会的孤立は「まさに今日的課題だ」と専門家は警鐘を鳴らす。

「育てることできない」

 「赤ちゃんが放置されています」

 大阪市東淀川区の病院から大阪府警東淀川署に通報が入ったのは、10月15日の早朝のことだった。

 病院の多目的スペースで発見された男児の腹部にはへその緒がついていた。身長49・5センチ、体重2725グラムだった。

 この日午前5時10分、男児を抱えた女(27)が「おむつを替えさせてほしい」と病院を訪れ、12分後に1人で立ち去っていた。

 男児をくるんでいたタオルケットには、女の親族の名前が書かれていた。女は同日、保護責任者遺棄容疑で逮捕された。

 「家族にも出産したことを話しておらず、育てることができないと思った」。女はこう供述した。産んだのはこの日午前1時半。それから4時間足らずで病院に放置した計算になる。

 男児の父親については多くを語らなかった。女は住居不定で無職。離婚歴があり、男児以外にも子供がいるが、施設に預けているという。

 捜査関係者は「完全なネグレクト。病院なら育ててもらえると思ったのではないか」とみる。男児の命に別条はなかったが、出生時に医療を受けていなかったため、この病院で一時保護された。

望まぬ妊娠の背景は…

 乳児の産み捨ては後を絶たない。

 今年8月には、滋賀県高島市の自衛隊駐屯地で、20代の女性陸士長が隊舎の自室で女児を出産。その後女児は死亡し、滋賀県警に保護責任者遺棄と死体遺棄容疑で逮捕された。

 名古屋市では5月、高校2年の女子生徒が出産直後の女児の遺体をかばんに入れ、警察署に出頭するというショッキングな事案もあった。

 いずれも予期せぬ妊娠に戸惑い、周囲に打ち明けられないまま、医師や助産師の立ち会いを伴わずに1人で出産していた。

 「望まぬ妊娠」の背景はさまざまだ。養育に十分な経済力のないこと、パートナーの不在、不倫や性暴力の末に妊娠してしまったというケースもある。

 人工妊娠中絶を受ける選択肢もあるが、費用がなかったり、そもそも妊娠に気づくのが遅かったりして中絶に至らず、乳児が置き去りにされる悲劇につながってしまう。

ポストに遺体遺棄も

 専門家の立ち会いのない自宅出産(孤立出産)は新生児への虐待といえる-。そんな表現でこの問題の危険性を強調したのが、慈恵病院(熊本市)の「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を検証している同市の専門部会だった。

 同部会の報告書によれば、赤ちゃんポストに預けられた子供のうち、孤立出産(自宅・車中出産)の割合は近年大幅に増加。平成23年10月~26年3月の期間が12件だったのに対し、26年4月~29年3月の期間は25件に達し、全体に占める割合も86・2%に上った。

 とりわけ関係者に衝撃を与えたのが3年前、乳児遺体がポストに遺棄されたことだった。逮捕された母親の無職女は、両親と息子の4人暮らしだったが、家族には妊娠も出産も知らせていなかった。

 「自宅で産んだが死亡した。かわいそうで自分の車で運んだ」。逮捕時にそう供述した母親は後に熊本地裁で有罪判決を受けた。

識者「社会全体の問題」

 《産後間もない母親と子どもが、ゆりかごを目指して長距離を移動してくるという事例が複数見られた》

 《妊娠後ゆりかごへの預け入れを目標設定することで、多少の危険を冒しても目標であるゆりかごへ向かっている心理が窺える。ゆりかご自体は安全が確認された場所として設置されたが、預け入れ以前のこのような過程は設置当初は想定されていなかった利用状況であり、母子の生命の危険性を脅かすものとして存在している可能性もある》

 赤ちゃんポストの直近の運用状況に関する専門部会の検証報告書は、孤立出産のリスクについてこう書いた。

 部会長を務めた関西大の山縣文治教授(児童福祉学)は「子供を手放す親の多くは、家族や社会から孤立した状況にある。周りに積極的に関心を持ってくれる人が少なく、自暴自棄に陥ってしまうのでは」と指摘する。

 そして「妊娠から逃げ切れなかった女性が、最後に駆け込むのが赤ちゃんポスト」と述べ、こう強調した。

 「こういった事案では、性の乱れなど女性が批判されがちだが、男性にも妊娠させた責任がある。望まぬ妊娠は社会全体が男女の問題として捉えることが必要だ」