神戸製鋼、かたくなな独自路線 業界再編に背を向けた末…

ビジネスの裏側
独自路線を進む神戸製鋼の東京本社。データ不正問題の出口は見えない中、次の動きが注目される=東京都品川区

 神戸製鋼所のデータ不正問題は出口が見えない。当初はアルミ製品だけとしていたが、その後は銅、鉄鋼にまでおよび、その不信感は神鋼全体に向けて広がっている。企業の大型不祥事や経営危機は、資本参加や経営統合など業界を巻き込んだ再編の引き金になるケースもある。ただ、これまでの神鋼の歩みは独自路線の歴史。「再編に乗り遅れた」と言われ続けても、かたくなに独立経営を貫いてきた神鋼の次の動きに注目が集まっている。(大島直之)

 独立経営に邁進

 「再編は考えていない」「素材、機械、電力の3本柱で十分会社としての体をなせる」。川崎博也会長兼社長は昨年5月、平成33年3月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画の記者会見でこう強調した。業界再編への立ち位置についての質問に対し、これまで掲げてきた通り、独立経営を維持する方針を重ねて示した。

 神鋼の将来の事業戦略に注目が集まるのは、この10年間でさまざまな業界で起きている業界再編に対し、一貫して距離を置き続けてきたためだ。近年、顧客のグローバル化により、競争相手も国内だけでなく海外メーカーにも広がっている。高機能や厳しい品質が要求され、生き残りに向けた激しい競争が繰り広げられている。

 特に神鋼は現在、全社的に見ると各事業部門でいずれの業界でも上位・中堅クラスで位置するものの、これといった突出する事業部門は少ない。10年前の神鋼は、業界でそれなりの存在感を示していたものの、各事業で業界内再編により大型プレーヤーが誕生。現在、各業界では、以前よりもその存在感が低下しているのだ。

 再編に乗らず3位

 鉄鋼業界では23年2月に当時の新日鉄と住友金属工業が合併計画に合意し、翌24年10月に2社合併で新日鉄住金が誕生した。これにより神鋼は、高炉で新日鉄住金、JFEグループに大きく引き離された3位になった。さらに今年3月、高炉最小規模だった日新製鋼が新日鉄住金の子会社になり、神鋼1社が取り残された格好となっている。

 また、神鋼はそれまであった大手との関係でも距離を置いた。14年に新日鉄、住友金属工業と買収防衛を目的に相互出資協定を結び、3社で株式を持ち合っていたものの、27年3月までに、それまでの保有株の大半を売却。これにより資本関係が薄まり、新日鉄住金との関係が深まる可能性も低くなった。

 業界の予測を覆す

 また、神鋼はアルミ事業でも鉄鋼同様、それまで提携関係を結んでいた会社があったにも関わらず、結果的に再編に加わらなかった。

 25年10月に当時、アルミ圧延で首位の古河スカイと、2位の住友軽金属工業が合併し「UACJ」が誕生。鉄鋼ではそれぞれグループ系列にある新日鉄と、住金の合併に引きずられるように大型再編が起こった。

 実はそれまで神鋼は、住友軽金属と生産相互委託や、技術面で提携関係にあった。厚板の神鋼、薄板の住友軽金属と互いに違う強みを持つ補完関係にあった。「再編があるなら、神鋼と住軽の組み合わせだ」と大方の業界関係者が予想していただけに、覆ったことが大きな話題となった。

 現在の神鋼のアルミ圧延品のシェアは約60%も持つUACJに大きく離れた2番手。航空機、自動車など付加価値の高い厚板を得意とし「業界再編が起こるなら、仕掛ける側だ」とされていたが、鉄鋼同様に再編に取り残された格好だ。

 突出する事業なし

 神鋼のデータ不正問題が広がる中、高炉を始め各業界が再編に向けた動きを注視している。だが、その多様な事業分野や、独立志向の強い社風もあり一筋縄ではいかないとの見方も多い。

 また、おしなべてみると鉄鋼、非鉄のように業界内で上位・中堅クラスの事業が多い。溶接材料事業では世界でもトップグループに入るほか、鉄鋼でも線材など一部の個別製品では高いシェアを持つ。ただ、建機、産業機械など他の事業も鉄鋼、非鉄と同様で業界を主導するまでの規模はない。

 SBI証券の藤本誠之客員マーケットアナリストは、現在の神鋼について「いろんなことをやっているけど、どの事業も突出はしていない」と分析する。今回の不正騒動が、神鋼の行方を左右し、また各業界の動向を突き動かすのか。これまでかたくなに貫いてきた独立経営の岐路に立たされている。