韓国と北朝鮮 映像で精強ぶりをアピールも、その内幕は…

軍事ワールド
北朝鮮の国営メディアが発表したプロパガンダ映像。B-1B爆撃機にミサイルを当てることができるというアピールだが、合成処理のレベルの低さが目立つ(AP)

 核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮が24日、新たに米国を“挑発”する映像を公開した。米空軍の爆撃機B-1B「ランサー」を撃墜したり、ホワイトハウスを弾道ミサイルで炎上させる場面が合成で描かれたもの。一方の韓国は建軍記念日のイベントで瓦割りを披露する隊員たちを公開。南北とも映像で“精強”ぶりをアピールするのだが、内実は正反対とも言えそうな貧弱ぶりも伝わってくる。映像合戦の“内幕”は-。(岡田敏彦)

 準ステルス

 北朝鮮が仰々しく公開した映像では、米国の大型爆撃機B-1Bを空対空ミサイルで撃墜する様子が映っていた。ネット上では「合成のつくりが雑すぎる」と話題になったが、北の防空・迎撃体勢も同様に粗雑だった。

 9月23日、米軍がグアムのアンダーセン空軍基地に配備されているB-1Bを今世紀に入ってから南北の軍事境界線を越えて最も北方まで進入させ示威飛行を実施したが、北朝鮮軍は気付いていなかった。ロイター通信は韓国情報筋の話として「北朝鮮では電力不足でレーダーを常時稼働させることができないためだ」と説明しているが、北が反応できなかった理由はB-1Bの“ステルスぶり”にもありそうだ。

 ステルス機とは敵レーダーに映らないよう、機体の外形や素材を工夫した航空機で、世界で最初に実用化されたF-117ナイトホークは1991年の湾岸戦争でレーザー誘導爆弾による精密爆撃で名を馳せた。一方でB-1Bは、純然たるステルス機ではないものの、ある程度のステルス性能は備えている。最初に開発されたB-1「A」は米軍の方針転換で開発中止されたが、「B」として開発計画が復活する際にステルス性を付与されているのだ。

 レーダーに反応する強弱を示す指標として「レーダー反射断面積(RCS)」が用いられる。米軍などの資料では、1960年代のベトナム戦争に使われたB-52はRCSが100m2で、ジャンボジェット機とほぼ同じだ。対極のF117は0・025m2と昆虫レベル。そしてB-1Bは0・75~1m2と、ミグ29(露)やラファール(仏)といった小型戦闘機の2~3m2よりも、さらに“見えにくい”。米海軍の艦上戦闘機FA-18Eスーパーホーネットや人(1m2)と同じレベルの映りにくさ=発見の困難さとなる。

 一方、北朝鮮の対空ミサイルは1960年代に最新鋭だったS200。北大西洋条約機構(NATO)名でSA5とされるもので、レーダーも同時代のシステムのまま更新されていないとみられている。旧式レーダーのうえ、電力不足で100%の性能を発揮させられないのだからB-1Bが“見えない”のも当然。これでは北朝鮮発表の映像のようにミサイルでB-1Bを撃ち落とすのは不可能だ。

 そして万一、実戦となった場合は、RCSが0・1m2のB-2「スピリット」ステルス爆撃機に加え、レーダー電波などを強力に妨害するAN/ALQ-99戦術電子妨害ポッドを備えたEA-18Gグローラー電子戦機が戦場に投入されるため、北に勝ち目はない。

 韓国版「このハゲー」

 一方の韓国は、F-15Kなど米軍供与の兵器が幅を利かせるが、モノではなくヒト、つまり軍人のスペックに対して問題が指摘されている。

 朝鮮日報(電子版)など現地メディアは8月、王様気分で下級兵士をこきつかっていた韓国陸軍大将が職権乱用などの容疑で摘発されたと報じた。

 韓国陸軍には、将官クラスの官舎に下級兵士が住み込み、家事などにあたる「公館兵」という制度がある。大将と妻は、この兵士たちに腕時計型の呼び出し装置を付けさせ、雑用の度に呼びつけたあげく、熱々の鍋の具(モチとの説あり)を素手でとらせたり、料理が下手だと怒鳴りつけて炒め物を投げつけるなどの虐待行為を行っていたという。

 軍の将官には“お付き”の兵隊がいるのはよくあることだが、将官の妻の雑用係までこなすのは韓国軍ならではか。

 日本でも、立場が上であることを“利用”して部下を怒鳴りつけるセンセイが話題をさらったが…。

 そんな韓国の同盟軍である米軍のトップ、マティス国防長官は現役の将官時代、戦場で誰よりも早く起きて迷彩服に自分でアイロンをかけ、軍用携行食糧のレトルト食品を粗末な携帯コンロで温め、満足げに朝食を作っていたというエピソードがある。もちろんアイロンがけや「レトルトではない食事」の用意を当番兵に命じることができるにもかかわらず、だ。

 自分のことは自分でこなすという、軍隊に必要な自己完結の境地が備わっているか。突き詰めればリーダーシップの問題でもある。

 朝鮮戦争時、マシュー・リッジウエイ中将は前線を視察した際、重い砲弾を運んでいる兵士を見て「ちょっと待て、靴紐がほどけているぞ」と呼び止めた。

 軍の教育訓練所なら、教官から「たるんどる、腕立て100回」と怒鳴られるところ。兵士は紐を結び直すため、あわてて砲弾を地面に下ろそうとしたが、リッジウエイは「いや、そのまま」と言いながら、兵士の足下にかがみこんで靴紐を結び直し、立ち上がって一言「これでよし」。

 こんな米軍と歩調を合わせて韓国軍が戦えるだろうか。寄せ集めの徴兵と特権階級を気取る将官では、北朝鮮の“飢えた”兵士に勝てる確証は見えてこない。

 「見えない敵」

 実は韓国にも「ステルス兵器」はある。究極のステルスとは潜水艦のことだと言われる。ステルス機は低空で接近してくれば肉眼で見えるが、潜水艦は物理的に見えないためだ。だが、韓国KBSテレビ(電子版)が3日報じたところによると、この10年で潜水艦乗組員の69%にあたる500人が「狭いうえにシャワーも週1回」といった環境に嫌気がさして、潜水艦勤務から去っていったという。

 テレビカメラの前で瓦を割ったり、テコンドーの演舞をしている「やる気満々」の兵士は普段、どこにいるのか気になるが、実は映像などの晴れ舞台に出てくるのはエリートの中のエリートで、一般兵士、ましてや徴兵された下級兵士とは大きな隔たりがある。そんな兵士たちの日常が今夏、明らかになった。

 韓国通信社の聯合ニュースによると、8月22日に夜間訓練中の部隊が山中でスズメバチに襲われ、13人が刺された。夜間だったためハチの姿も見えず、参加した兵士は「痛い、という悲鳴が聞こえてきて、そのうち自分も刺された」という。慌てて山を下りたが、戦闘服の中にハチが入り込み悲惨な目に遭う兵士もいた。だが、彼らは普通の兵士ではなかった。

 雨が好きな兵士

 訓練していたのは「予備軍」の兵士たち。韓国では約2年間の徴兵制度を済ませたあとも、8年間は「予備兵」という立場を国から強制される。事あれば現役兵として即、招集される身分なのだ。

 このうち最初の6年間は、年に数日(2泊3日など)、訓練に呼び出されるのだ。招集令状は現代らしくメールで来ることが多いが、訓練内容はアナクロそのもの。にわか編成の部隊で夜間行軍や敵陣奪取などの訓練を行うのだ。ただし雨が降れば室内訓練に切り替わり、これが体力的に楽なため、雨は歓迎される。ちなみに勤め先には公休として認められるという。

 こんな部隊が夜間に山岳地で訓練というだけで絶望的だが、そこへハチの襲撃では“全滅”するのも無理はないか。

 刺された兵士は「痛みを訴えたが、軍の担当者は右往左往するだけだった」と批判し「20~30分経ってから、救急車ではなく普通のバスで病院へ移動した」。しかも「バスに乗ってから『呼吸困難やめまいはないか』と質問したのが応急処置の全てだった」と怒り心頭の様子。

 病院まで20分以上かかったことについても「もっと近い病院があったろうに」と怒りは収まらなかったという。