坂道転落の始まりは今井絵理子議員との〝ロマンス疑惑〟報道 政活費不正にまみれた期待のホープ「ハシケン」

衝撃事件の核心
神戸市議のホープとして期待を集めていた橋本健氏。妻子を持つ身でありながら、アイドルグループ「SPEED」の元メンバーで自民党の今井絵理子参院議員との交際疑惑が報じられたのを機に、自らの政務活動費の不正受給疑惑が発覚、坂道を転げ落ちるように転落した

 当初は否定していた政務活動費(政活費)の不正受給疑惑について、追い詰められる形で認め、神戸市議の職を追われた橋本健氏(37)。疑惑報道のそもそもの発端が、妻子を持つ身でありながら、アイドルグループ「SPEED」の元メンバーで自民党の今井絵理子参院議員との交際疑惑だったことが不幸の始まりだった。「一線は越えていない」という2人の釈明がテレビのワイドショーの格好のネタとなり、一介の地方議員が一気に「全国区」の存在に。その後、市政報告ビラの架空発注に伴う政活費の不正受給疑惑が連日、大きく報道されるようになった。〝不貞ロマンス疑惑〟に端を発した一連のスキャンダルで、橋本氏は猛スピードで坂道を転がり落ちた。(小松大騎)

交際疑惑で認知度「全国区」に

 大阪に向かう新幹線の車内で仲むつまじく手をつないで眠る姿、同宿のホテルから別々に出た後、同じタクシーに乗り込む姿…。週刊新潮(7月27日発売)が、衝撃的な写真とともに交際疑惑を報じた2人が、神戸市議の自民党市議団幹事長の橋本氏と今井議員だった。

 発売日当日、橋本氏が市議会に姿を現し、記者会見。「自分の脇の甘さを痛感しており、軽率な行動だったと反省している」と沈痛な面持ちで頭を下げた。

 テレビのワイドショーのリポーターを含む約40人の報道陣が囲む中、橋本氏は大粒の汗を流しながら釈明を繰り返した。妻と子供2人がいる橋本氏は会見で、結婚生活が破綻していると強調し、今井議員に交際を申し込んだことを告白。ただ「不倫という自覚はなかった」「一線は越えていない」などと述べた。

 一方、今井議員は同日、「軽率な行動により多大なるご迷惑をかけ、深くおわび申し上げます」とコメントを発表して謝罪。その中で、橋本氏と知り合ったのは今井議員が初当選する昨夏の参院選で、「妻と離婚協議をしている」と交際を求められたとしたが、週刊新潮が報じた「略奪不倫」については橋本氏と同様に明確に否定した。

 この交際疑惑に加え、今後の政活費疑惑の予兆といえる騒動も報じられた。

 橋本氏は今井議員が比例代表で立候補した昨夏の参院選公示日直前に、2人が対談した記事を掲載した市政報告ビラ「ハシケン通信」約2万部を自らの選挙区で配布。橋本氏は「選挙応援には当たらない」と選挙違反を否定した。しかし、政活費でビラを作成していたことから、所属先の自民党市議団が「政活費で選挙応援したと誤解を招きかねない」として、印刷費など約30万円を返還する事態となった。

「ホープ」からの転落…

 橋本氏の神戸市議会での評判はどうだったのか。

 「若い上に顔立ちも良く、最近2回の市議選では中央区選挙区で2回連続のトップ当選している。ホープとして期待を集めていた」

 自民党市議団の関係者はこう打ち明けた。

 橋本氏は同市東灘区出身。兵庫県内でも有数の進学校、県立長田高校から大阪大歯学部卒。歯科医師免許を取得した。平成19年の市議選で初当選。23、27年にトップ当選した。

 自民党県連の一部で、橋本氏と今井議員の関係を疑う声も上がっていたという。「ハシケン通信で今井議員との対談を掲載し、たびたび東京を訪れていた。かなり親密な関係にあるのではと思っていた」とある県連関係者は振り返る。

 その上で「将来、国政進出も考えていたのだろう。離婚が成立し、今井議員と結婚して知名度が上がれば、国会への足がかりになると考えていたのではないか」と話した。

 あくまでも自民党関係者の“推測”だが、交際疑惑に続き、週刊新潮が報じた市政報告ビラ架空発注による政活費の不正受給疑惑が橋本氏の政治生命にとどめを刺すことになる。

〝新潮爆弾〟第2弾

 交際疑惑が沈静化しつつあった8月23日、この日発売の週刊新潮は、橋本氏が平成22~26年度に計8回発注したとされる「ハシケン通信」が架空発注で、その領収書を提出して政活費約720万円を受け取ったと報じた。

 橋本氏は同日会見し、「印刷したビラはあるし架空発注ではない」と否定。神戸市中央区の業者にデザインなどを依頼し、兵庫県宍粟(しそう)市の業者に印刷させ、それぞれ代金を支払ったと説明した。

 ところが、翌日の24日、中央区の業者の〝告発〟が橋本氏を追い込む引き金となる。弁護士を通じて「印刷をしていないのに、橋本氏に頼まれて領収書だけを渡した」「代金も受け取っていない」との文書を公表したのだ。

 26日には、橋本氏からの「口裏合わせ」を示唆する〝想定問答〟のメールの存在も明らかにした。

「全て認める」

 追い詰められた橋本氏は28日、自民党市議団を通じて議員辞職を表明。翌日、辞職願を郵送で議長に提出し、その日に許可された。

 疑惑解明に向けた調査を行っていた市議団は9月6日に結果を発表した。

 市議団の安達和彦団長らによると、橋本氏は不正受給疑惑について「全て認める」と回答。総額は約910万円で、22~26年度に計8回、神戸市中央区の業者が出した架空領収書計約715万円分と、26年5月に発注した同市兵庫区の業者には「3月31日」の日付で発行させた約194万円分の領収書を25年度(26年)3月分として政活費を申請し、不正受給した。

 橋本氏は、中央区の業者に対し1回(の架空領収書)あたり10万円の謝礼を支払い、宍粟市の業者には1回につき10万~20万円を渡し、ビラ5千~1万部を印刷させた-と説明。「ビラの印刷をせず、市議会の規則で禁じられている名刺を納品した」とする兵庫区の業者の主張に対しても、橋本氏は「覚えていないが、争わない」と答えたという。

 橋本氏は「差額を詐取した」と不正を認めた上で、「事務所の家賃の支払いや東京への交通費や宿泊費などの政治活動に充てていた」としている。

 橋本氏の説明に対し、中央区の業者は金の受け取りを否定した。宍粟市の業者は産経新聞の取材に「実際に印刷して納品した」と証言したが、領収書の発行や金額などについては「よく覚えていない」とした。

市議会の支給システムに問題

 橋本氏の対応や説明をめぐっては、強い批判の目が向けられている。

 疑惑を認めて議員辞職を表明した8月28日、「説明責任を果たしたい」とのコメントを出しながら、こうした発表は他人任せで、自らは姿をくらませたままだ。一方で詐欺罪などでの事件化を見越してか、神戸地検には9月6日に自ら出頭して事情を説明したとされる。

 市民からは「(公の場に)早く出てきて説明しろ」「交際疑惑に税金の詐取。市民として恥ずかしい」と怒りの声が上がる。

 市民団体「市民オンブズマン兵庫」は9月7日、週刊新潮の報道などをもとに、中央区と兵庫区の業者への架空発注で政活費をだましとったとして、橋本氏と業者2人に対する詐欺罪などの告発状を神戸地検に提出、13日に受理された。さらに市議会は同日、同様に詐欺罪で兵庫県警に告発した。

 政治資金オンブズマン共同代表で神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は、議員個人に支払われる前に会派に支給されるという神戸市議会の政活費の支給システムに問題があるとし、「チェック機能が働かなかった会派の責任が問われない限り不正はなくならず、自浄作用が働くこともないだろう」と指摘。辞職後も姿を見せない橋本氏に対しても「辞職すれば終わりではなく、説明責任をきちんと果たすべきだ」と苦言を呈した。

 同市議団の安達団長は「会派として不正を見抜けなかった責任はある。(今後の対策は)議会全体で考えていかないといけない」と語った。

 兵庫県では、政活費をめぐる不祥事が続いている。「号泣県議」で有名となった元県議が詐欺罪などで有罪判決を受けたほか、神戸市議会の議員3人が同罪で在宅起訴され、8月に相次いで辞職する事態となっている。

 政活費をめぐって相次ぐ不正。抜本的な対策を打ち出さない限り、市民の信頼は取り戻せないだろう。