敵の砲弾を迎撃し、レーザービームで反撃… 米国の「新型戦車」開発構想

軍事ワールド
米軍のM1A2戦車(米陸軍HPより)

 米陸軍が約40年ぶりとなる新型戦車の開発に強い意欲を示した。ロシアの新型戦車「アルマータ」など諸外国が次々と新技術を取り込んだ“新世代”戦車を導入していることを考慮した動きだ。米軍幹部の構想では、主武装に火薬を用いる大砲ではなくレールガンやレーザービームを、防御には敵弾を撃ち落とすアクティブ防御はもちろん、新素材を用いた驚異的な装甲が採用される可能性があり、実現すれば陸戦の概念を覆す新戦車が誕生する。   (岡田敏彦)

 ライバルはアルマータ

 新戦車構想は7月末に行われたワシントン市内での講演で、米陸軍のミリー参謀総長が言及した。現行のM1エイブラムス戦車とM2ブラッドレー歩兵戦闘車がいずれも採用から約40年経ち、性能が陳腐化したことで、ロシアなど他国の戦車に対する優位性を失いつつあることが背景にある。

 ミリー参謀総長はロシアの新型戦車T-14アルマータを例に出し、「(アルマータには)積極的な防御システムがある」と指摘。さらに「現在の装甲と同レベルの防御力があり、かつ大幅に軽量な素材が発見できれば、重要な(技術的)ブレークスルーになる」と強調した。

 特に防御面に注目しているのは、現行のM1戦車など米軍の戦闘装甲車両が「改良の袋小路」にあるからだ。

 矛有利の時代

 戦車の防御(装甲)は、敵の砲弾から車内の乗員を守るためにある。第二次大戦では、大まかにいえば固い鉄の塊(砲弾)を高速で敵戦車にぶつけて装甲を貫き、弾の破片が装甲内で跳ね回って内部を破壊するというものだった。

 そこで各国とも装甲を厚くして防御しようという発想で新戦車を開発していった。第二次大戦末期に運用されたティーガー2戦車の車体前面装甲は150ミリを誇ったが、こうした考え方は東西冷戦時代に“過去の遺物”となった。

 ひとつはAPDS弾の誕生だ。戦車の要目で「主砲:120ミリ砲」と記されている場合、主砲の砲口の直径は120ミリだが、弾の直径は120ミリの半分以下なのだ。砲弾は特殊合金を用いた細長い棒状で、そのまわりに装弾筒(サボ)という、使い捨ての支えがついている。発射直後に「サボ」は地面に落ち、細長い“金属の棒”が敵戦車に向けて飛翔するのだ。

 敵戦車に着弾した際、砲弾の持っていたエネルギーは装甲に当たって熱に代わる(エネルギー保存の法則)。この熱が装甲と砲弾の双方を“溶かし”ていく(正確には、高温高圧化で相互侵食を起こす)。溶けた部分を砲弾が進み、また溶け…。最終的に装甲は貫通、溶け残った砲弾が装甲内で跳ね回り、内部を破壊する。

 これでは装甲を少々厚くしても無駄だ。砲弾の“長さ”を上回るほどの厚い装甲を戦車に施せば、そんな戦車は重すぎて動くこともままならない。

 このAPDS弾と並んで無視できないのが、歩兵用対戦車ロケット兵器として使われるHEAT弾(モンロー効果で高熱のメタルジェットを一点に集中させ装甲を貫通する)だ。砲弾の威力は砲弾速度に依存しないため、RPG系列のロケットランチャーなど、歩兵が持ち運べるサイズで運用可能だ。こちらも常識的な厚さの装甲では防げない。「盾と矛」のバランスは圧倒的に矛が有利だった。

 この極端な状況を幾分改善したのがM-1や英チャレンジャー、独レオパルト2、日本の90式といった「第3世代戦車」だった。

 特殊装甲

 装甲に分厚い一枚板ではなく、薄い特殊装甲を空間を空けて重ねたものや、熱に負けないセラミックを用いるなどの工夫をしてAPFSDS弾(APDS弾の改良型)やHEAT弾を防げるようにしたものだが、やはり重量がかさむため車体前面など被弾しやすい部分にしか用いられていない。

 そこで米軍などの戦車や装甲車は、HEAT弾の早期触発(装甲に当たる前にメタルジェットを噴出させる)を目的に柵状の「スラットアーマー」を車外に張り巡らすなど改良を重ねてきたが、弥縫策の感もある。事実、こうした改造でM1タンクの総重量は導入当初の約60トンから10トンも増加。M2ブラッドレーは25トンから40トンに増加したと米軍事情報サイト「ブレーキング・ディフェンス」は指摘する。

 こうしたなか、別の方法を探ったのがイスラエルやロシアだ。

 イスラエルは第四次中東戦争の教訓から、1980年代に爆発反応装甲(リアクティブ・アーマー)を開発、導入した。装甲板の上に爆発物の入った箱を設置し、砲弾が当たった瞬間に爆発し砲弾を吹き飛ばすというものだ。APFSDS弾への効果は疑問視されているが、HEAT弾に対しては高い有効性が示された。こうした実績を下地に、さらに積極的に敵砲弾を無効化しようとイスラエルが開発したのが「トロフィー」システムだ。レーダーで敵砲弾を探知し、金属の散弾を発射して破壊する。

 ロシアも「ドロースト」という類似のシステムを経て、「アフガニト」というアクティブ防護システムを開発、実用化した。アルマータに装備されているのはこのアフガニトだ。レーダーで敵弾を探知し、発射体と呼ばれるものが車体斜め上へ飛翔し、EFP(自己鋳造弾)を発射、敵弾を破壊するというものだ。現在、APFSDS弾にも一部有効だとするロシア側の情報に対し旧西側諸国の軍事専門家らは懐疑的な意見を持っているが、ロシアが今後改良を重ねていくのは間違いない。

 ミリー参謀総長は、こうしたアクティブ防御を新型戦車に採用する必要があると強調。加えて斬新な軽量装甲の必要性にも触れた。戦車や歩兵戦闘車の総重量の軽減は、空輸を含めた迅速な展開を可能とするほか、橋梁や道路などの重量制限をクリアできる。

 火薬から光、電気へ

 一方で主武装には、火薬を用いた大砲に別れを告げる可能性がある。ミリー参謀総長はレーザー光線やレールガンの技術に触れてその優位性を強調した。レーザー光線は既に米軍が実証実験を繰り返しており、ネックだったサイズについても、軍需企業大手レイセオンが小型化に成功。今年4月にニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験場で、戦闘ヘリ「アパッチ」に搭載しての試験を行い、無人目標車両の“攻撃”に成功している。そのサイズは、増加燃料タンクとほぼ変わらないほどだという。

 一方のレールガンも米海軍がBAEシステムズなどと試作、試験を実施。すでに音速の約8倍(秒速2・7キロ)での発射に成功している。火薬を用いた大砲の場合、エネルギーの多くが熱として失われており、初速は秒速約1・7キロ。射程も大幅に伸びるとみられる。

 レーザーとレールガンのいずれもが激しい電力消費を伴うものだけに戦車へ搭載するには発電機でもブレークスルーが必要とみる向きも多いが、こうした新技術が実用化された場合、「次世代の戦車」は、大型輸送機から空中投下され、敵の砲弾が届かない遠距離からレーザーやレールガンで攻撃する。さらに“天敵”の地上攻撃機をレールガンで迎撃したり、空からのミサイルをレーザーで迎撃するような性能を持つ可能性もあり、将来的に陸戦の様相を一変させるかもしれない。