「ウサギがほしいんだ」なぜかペットの飼育にこだわった結婚詐欺のニセ医者 その驚愕の理由とは

衝撃事件の核心
女性が「運命の出会い」と感じた男性は、実はニセ医者だった。家族に紹介し、役所に婚姻届も提出したはずだったのだが…

 「運命の出会い」。男は医者だと名乗り、女性はすぐ恋に落ちた。同棲し、両親に引き合わせ、役所に婚姻届の提出もした。しかし引っかかることがあった。男はなぜか、ペットを飼うことにこだわったのだ。最初はウサギ。次が犬だった。その答えが分かったとき、女性はすべてを失っていた。ハワイ挙式は幻に終わり、心身を踏みにじられたとして女性は約750万円の損害賠償を求め、裁判所に訴訟を起こした。

「運命の人」ととんとん拍子

 関西地方在住の看護師、藤原美香さん=仮名=の訴えによると、出会いは今から3年前の平成26年4月、インターネットのチャットサイトがきっかけだった。

 医師だというAに好感を持ち、オフ会でも意気投合した。藤原さんは自分の職業について話し、京都の病院で実習を受けたことがあると伝えると、Aはこう言った。

 「今は大阪の病院で心臓外科医をしているけど、十数年前にはその京都の病院で働いていた」

 そして間髪を入れずにこう告げた。「実はその頃に君と一度会っているんだ。これは運命の出会いだから結婚を前提に付き合ってほしい」

 藤原さんは初対面でいきなり結婚の話をされたことにびっくりしたが、それ以上にAの気持ちをうれしいと思った。藤原さんも「運命」を感じていたのかもしれない。

 ほどなくして、1人暮らしの藤原さんの家に、Aが越してくる形で半同棲が始まり、とんとん拍子で結婚の準備が進んでいった。

 Aは「5月が自分の誕生日だから、それまでに入籍したい」と超のつくほど積極的だった。藤原さんも承諾した。その年の12月のハワイ挙式も予約した。

 さらにAは藤原さんの実家に行き、「結婚したいのであいさつに来ました」と切り出した。藤原さんの両親も、相手が医者だと知って喜んだ。

ペットおねだり…多額の出費

 そんなAには、少し不可解な点があった。

 「5月下旬で携帯が止まってしまう。昔、女にだまされてブラックリストに載っているから、自分名義で携帯が借りられない」

 そう頼まれ、藤原さんは自分名義で携帯を購入し、Aに渡した。

 7月には突如として「ウサギがほしい」と言い出した。藤原さんは乗り気ではなかったが、ホームセンター内のペットショップでウサギとケージ、エサなど計約3万円分を購入した。

 さらにウサギを買った2日後のこと、Aは「犬を買って」とおねだりをしてきた。「金は後で払うので、立て替えておいて」。藤原さんは仕方なく、ペットショップで犬やケージを購入し、予防接種代なども合わせると、今度の出費は計約18万円にも及んだ。

婚姻届提出時に「外で待っていて」

 ウサギと犬を飼い始めた同じ月、2人は婚姻届にサインし、市役所に提出に訪れた。出掛ける前、Aはなぜか新しい家族である犬を役所に連れて行くと言い張った。藤原さんは反対したが、聞かなかった。

 役所に着くと、Aは「犬は区役所の中に入れないから、外で待っといて」と告げ、婚姻届を持って1人で庁舎内へ入ってしまった。

 まもなく戻ってきて「無事受理された。関係書類は後日できるから、また連絡が来るはず」と説明した。何ともあっさりしたものだったが、これが結婚なんだと、藤原さんは感じた。

 翌月のこと、藤原さんは職場へ戸籍謄本を提出する必要があったため、市役所に問い合わせをした。ところが、藤原さんの戸籍には婚姻に関する記載がなかった。婚姻届は受理されていなかったのだ。

 「なぜ」。藤原さんはAに問いただした。

 「不備があったのかもしれない。それなら次は、12月の(藤原さんの)誕生日に出そう」

許されざる者

 やはり、おかしい。Aがあれほどペットを求めたのは、一緒に婚姻届を提出することを避ける狙いがあったためではないか-。藤原さんはAに不信感を覚え始めていた。

 Aの口癖からしてそうだ。「立て替えておいて」。ペットの購入費用だけではない。ライブへ出かけた際の交通費や宿泊費、ウエディングドレスを試着するためのサロンへの電車賃すら、藤原さんが財布から出してきた。実家の両親に紹介したときの会食の費用も、藤原さんが持った。

 しかし8月には、藤原さんの妊娠が判明する。それだけに、Aのことを信じたいという気持ちがあったのかもしれない。翌月には藤原さんの親戚(しんせき)が住む九州へ結婚のあいさつ回りに行った。Aは同行し、そこでも「私は医師です」とあいさつをした。親戚も医師がお婿さんとは、と心から祝福してくれた。

 だが、このときの往復の交通費すら、Aのいつもの言葉により、藤原さんが支払うことになった。「後で払うから」

 このころには、Aは藤原さんに暴力を振るうようにもなっていた。友人との外出を禁じ、藤原さんが生活費を要求すると、腕をひねられた。妊娠が分かってからも暴力は続いた。

 藤原さんは、だまされたことに気づいていた。そして「このままでは殺される」と自らの命の危険も感じていた。

 藤原さんは11月に中絶手術を受け、その後は携帯の番号を変え、引っ越しもしてAとは縁を切った。やはりというべきか、この頃にはAが医師ではないこともはっきりした。

 「女性として心身ともに深く傷つけられた。堕胎によって自分を責める気持ちに苦しんでいるのに、Aが何のとがめもなく生きていることはとても受け入れがたい」

 Aは出廷せず、裁判所は藤原さんの請求をすべて認めた。

無店舗型にはリスクも

 インターネットで結婚相手に出会うことは、今や珍しいことでも何でもない。だが、リスクがあるのは事実だ。

 結婚相談所の認証機関であるNPO法人「日本ライフデザインカウンセラー協会」(JLCA、東京都中央区)の担当者によると、結婚相談所には(1)仲人が出会いを仲介する仲人型(2)会員の希望などをマッチングするデータマッチング型(3)インターネットに自分の条件などを入力するネット型-の3タイプがある。

 仲人型とデータマッチング型では、独身証明書▽身分証▽収入証明書(源泉徴収票や確定申告書)▽大学などの卒業証明書▽資格証明書(有資格者でないと就けない職業の場合)-などの提出を義務づけ、対面できるよう店舗を設けているところが大半だ。

 店舗型の相談所では、入会希望者の言動に不審な点があった場合、担当者が可能な範囲で裏を取ることもあるという。

 一方のネット型は証明書の提出を求めない無店舗型が多い。それゆえに、相手の氏素性に関するリスクは否定できないのだ。

 いったん対面し、好意を持ってしまうと心理的なバイアスがかかる。JLCAの担当者は「相手に不自然な点があっても、好意を持つと目をつぶってしまいがちになる。最初から信頼できるところで紹介を受けた方がいい」と話す。

 「運命の出会い」には要注意-。