路線価上昇 集客増 大阪は、もっと稼げる

西論
路線価急上昇のなんばパークス周辺=大阪市浪速区(本社ヘリから、宮沢宗士郎撮影)

 バブル時代をほうふつさせた。7月3日、国税庁が発表した平成29年分の路線価。大阪市の中心部が軒並み上昇した。上昇率に注目すると、大阪市中央区心斎橋筋2丁目で前年比36%も上がるなど、ミナミ近隣4地点が近畿10傑に入った。訪日外国人客(インバウンド)をあてこんだホテル建設、出店ラッシュが要因とされる。

 大阪の百貨店の売り上げも好調だ。業界全体では不振だというのに。関西国際空港の外国人入国者数も28年は609万人で、成田空港(682万人)を伸び率で10ポイント上回り「追い抜くのは時間の問題」と期待が高まる。久々に味わう高揚感。だが、ここは浮かれることなく、大阪の「中期経営計画」を練るつもりで考えてみたい。

 はっきりいってインバウンドの拡大は第2次安倍政権の政策によるところが大きい。ビザの緩和とアベノミクスによる円安が効いた。その恩恵に浴したにすぎないと謙虚に受け止めておきたい。

 この勢いを持続、拡大させねばならない。それには何度も来阪してくれるリピーターの獲得がカギを握る。徹底した「外国人目線」で「快適」「便利」「ストレスなし」のまちづくり、サービス充実をはかる。そこは地元の行政や産業界の仕事だ。「PDCA」(計画・実行・評価・改善)のサイクルをしっかり回して稼ぎたい。

 ◆ミナミ再起動

 すでにインバウンドの牽引(けんいん)役、ミナミでは地元企業や商店街などでつくる「大阪活性化事業実行委員会」「ミナミまち育てネットワーク」(http://www.minami-net.jp/)が取り組みを活発化させている。ミナミ唯一の新聞社、産経もメディアの発信力をいかし応援したい。

 幸い向こう5年間で集客のインフラ整備が相次ぐ。なんば駅前広場の大改修が計画されているほか、平成30(2018)年秋、高島屋の隣に南海電鉄がてがける高層ビルが竣工(しゅんこう)。31年春、精華小学校跡に商業施設ができる。31年秋、新歌舞伎座跡にホテルができる。大丸心斎橋店本館の建て替えが完了。34年にはリゾート施設や旅館の再生で定評のある「星野リゾート」が新今宮駅前にホテルを開業する。

 平成31(2019)年にラグビーワールドカップ、32年に東京五輪、33年に生涯スポーツの祭典「ワールドマスターズゲームズ」が開催され、後押しするはずだ。問題はこの後。反動による落ち込みが心配だ。大阪府・大阪市、経済団体は万博と統合型リゾート施設(IR)の誘致で一挙解決をもくろむ。このチャレンジは検討に値する。

 ◆IRは検討に値する

 モデルはシンガポールだ。カジノ導入について同国でも賛否はあったが、少ない人口、小さな国土で持続的成長をかなえる手段としてIRを2つもつくった。

 「IR=カジノ」ではない。カジノは施設面積の数%だが、その集金力で劇場や巨大な会議・展示施設、豪華なホテル、高級ブランドを集めたショッピングモール、美食家を満足させるレストランを設置、運営。「統合」の相乗効果で稼ぎを拡大させる。

 注目したいのはMICE(マイス)。Meeting(会議・研修)Incentive tour(報奨旅行)Convention(国際会議・学会)Exhibition(展示会)に集客をはかるビジネス旅行で、個人旅行より大きな消費が期待できる。

 IRは(1)「上客」を集められる(2)長く滞在させられる(3)客単価をあげられる。効率よく収益をあげられる優れた装置といえる。

 大阪にIRができたら、歴史や文化遺産を有する京都や奈良など周辺都市へのシャワー効果で、関西全体でも稼げるだろう。アジアの新興国の富裕層を取りこぼさないよう戦略的に活用したい。

 カジノは、確かにギャンブル依存症や治安の悪化などデメリットも懸念される。シンガポールは国が監督、入場制限を課し、依存症対策にもたっぷりお金をかけている。日本はこれからIRの「実施法」をつくる。先行事例に学んで世界で最も厳しい規制をかければいい。賭博場と同列に扱い、感情的に反発する人たちが少なくないのは残念だ。

 ◆機会損失は罪

 私事ながら社会人になりたてのころ、関西文化学術研究都市の建設、関空開港、国際花と緑の博覧会開催に心はずませた。メディアもバラ色の未来を描いたが、その後どうなったか説明はいるまい。

 関空から連絡橋で対岸に向かう途中、不格好な高層ビルが見える。「りんくうゲートタワービル」だ。橋を挟んで立つツインビルになるはずが、バブル崩壊で予算が足りなくなり、片方だけになった。大阪の「負の遺産」の象徴である。今、このビルについてガイドは外国人客にどんな説明をしているのだろうと思ったりする。

 今度こそ大阪は浮上しなければならない。否定から入るのはやめ、可能性をさぐる。リスクや社会的コストを最小限におさえ、最大限の利益獲得を考えてこそ真の経営だろう。「機会損失は罪」と肝に銘じたい。   (編集企画室長・安東義隆)

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