ウルトラセブン50年ー〝モロボシ・ダン誕生秘話〟 森次晃嗣さんがいま明かす

銀幕裏の声
「50年たってもウルトラセブンの魅力は色褪せない」と森次晃嗣さんは力説した(寺口純平撮影)

 昭和42年の放送開始以来、今も語り継がれる特撮ヒーロー、ウルトラセブン。地球を守るため、セブンに変身して戦う宇宙人・モロボシ・ダンを演じた俳優、森次晃嗣さんは「50年たっても古くならない。『ウルトラセブン』は50年前に今の時代を描こうとしていたのではないでしょうか…」と振り返る。ドラマの制作背景や特撮セットの舞台裏を写真パネルやジオラマなどで紹介する特別企画展「ウルトラセブン 放送開始50年記念~モロボシ・ダンの名をかりて~」が8月2日、大阪市中央区の大阪高島屋7階で開幕する。当時の制作秘話、そして“モロボシ・ダン誕生秘話”を森次さんに聞いた。

(戸津井康之)

モロボシ・ダン誕生!!

 「50年もこの人気が続くなんて…。当時はこんなに大勢の人に愛されるなんて想像もしませんでしたね」

 74歳となった森次さんは感慨深げにこうしみじみと語り、制作当時を振り返りった。

 42年10月1日に放送された第1話「姿なき挑戦者」は33・7%という高視聴率を記録。ウルトラセブンとともにモロボシ・ダン、そしてダンを演じた森次晃嗣の名は一躍、世に知られるようになる。

 「ウルトラQ」や「ウルトラマン」など人気特撮「ウルトラシリーズ」の新番組の主人公に大抜擢されたのが当時、24歳の若手俳優、森次さんだった。

 「当時、私は俳優としてはまだ駆け出し。とても役作りどころではなく、とにかく今の“森次晃嗣”のままで突っ走ればモロボシ・ダンになれるはずだと信じ、夢中で演じました。だって役作りといわれても宇宙人という誰も見たことがない役を演じるんですからね」と森次さんは苦笑しながら打ち明ける。

妥協なきシナリオ

 「毎週、脚本が届くのですが、こんな難しい内容が果たして子供たちに理解できるのだろうか、と思うことが度々ありました。重厚で骨太の社会的メッセージが込められていたからです」

 この森次さんの危惧通り、43年まで全49話が放送されたが、途中、視聴率が10%台後半まで落ち込んだ時期があった。

 41年から42年にかけて放送された「ウルトラマン」は30%から、ときに40%を超える高視聴率を記録していた。

 「大人気だったウルトラマンに比べ、視聴率が約10%も落ちていたんですよ。しかし、現場の制作陣は、あえて視聴者に迎合するようなテコ入れはせず、そのままの制作姿勢を貫きました。正義、勇気、希望の大切さを徹底して描き続けたのです」と森次さんは説明する。

 その後、何度も再放送され、50年後も国内外で多くのファンに支持されている結果が、当時の制作陣の信念が正しかったことの証明といえるだろう。

最終回、渾身の演技

 「最も印象深い作品? やはり最終回ですね」と森次さんは、前・後編でウルトラセブンのラストを締めくくった「史上最大の侵略」を挙げた。ウルトラシリーズを支えた名脚本家、金城哲夫さんがシナリオを書いた傑作だ。

 ウルトラセブンは過酷な戦いを続け、満(まん)身(しん)創(そう)痍(い)だった。

 「もうエネルギーが残っておらず、変身したら死んでしまうといわれていたのに、ダンは死を覚悟して地球を守るために戦うのです…」

 手探りの状態でモロボシ・ダン、そしてウルトラセブンを演じ続けてきた当時24歳の若手俳優、森次さんにとっても、まさに“命懸け”の渾(こん)身(しん)の演技だったと振り返る。

 ダンは死を覚悟しウルトラセブンに変身、最後の力を振り絞って、空の彼方へ飛んでゆく…。

 「明けの明星が輝く頃、一つの光が宇宙へ飛んで行く。それが僕なんだ…」。ダンが残した最後のセリフだ。閃(せん)光(こう)を見送る警備隊の隊員たち…。最終回の放送後、涙を流しながら空を見上げる子供たちが全国にいたという。

 低迷していた視聴率は、この最終回で28・5%まで回復した。

7人目の仲間

 ウルトラセブンのタイトルには実はこんなメッセージが込められていた。

 地球を守る「ウルトラ警備隊」の隊員は6人。“赤い宇宙人”の正体を知らない隊員たちは、セブンを7人目の仲間「ウルトラセブン」として受け入れる-。当初、こんな設定が脚本に書かれていたというが、劇中で描かれることはなかった。

 7人目の隊員となったセブンは人間と力を合わせて地球を守る。「セブン=ダン」を演じた森次さんはこう明かす。

 「私の役は宇宙人。だから警備隊員役の共演者と仲良くならないよう、いつも撮影現場では隅の方にいました。仲良くなってしまうと、どこかで人間的な素の部分が出てしまいますからね」

 50年たっても色あせないウルトラセブンの魅力の秘密は、この森次さんの言葉に凝縮されているように感じた。

 「当時、脚本を読んで何度もこう思いました。描こうとしている世界観は、かなり先の時代を行っているのではないか。それが今、改めてこう思うんです。50年前、すでに『ウルトラセブン』は現代の社会を描こうとしていたのだと…」

生きている限り“変身”する決意

 ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念作品として、平成18年に劇場公開された映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」の中で、森次さんはウルトラセブン役で出演している。

 神戸・六甲の牧場経営者として身を隠していたモロボシ・ダンが、地球を守るためにウルトラセブンとして復活する姿には、阪神大震災から復興を遂げた神戸を応援する-というメッセージが込められていた。

 また、今年公開された「劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!」にも元気な姿を披露。50年たっても老いることを知らないウルトラセブンの健在ぶりを強くアピールした。

 「私にとって、24歳から続けてきたウルトラセブンは、もう切っても切れない分身と言える存在。呼ばれたらいつでも駆けつけたい。だから老いることはできません。生きている限り続けますよ」