震撼の検索キーワード…むごすぎる猟奇シェアハウス殺人事件、性的虐待背負うネット中毒女の精神構造

衝撃事件の核心
シェアハウスのルームメートだった女性に対する強盗殺人などの罪に問われ、1審の裁判員裁判で無期懲役が言い渡された森島輝実被告=平成27年12月、大阪市中央区の大阪府警本部

 「涙も鼻水も止まりませんでした。途中から覚えていません」「好きでやったわけじゃないです」。静まり返った法廷で、女がすすり泣いた。大阪府門真市のマンションで平成27年、アルバイト店員の渡辺佐和子さん=当時(25)=の切断遺体が見つかった事件で、強盗殺人などの罪に問われた森島(長田に改姓)輝実被告(31)。殺害への関与は一貫して否認しながら、酸鼻を極める遺体損壊は認めるという不可解な展開となった。悲しい出来事ははじめからなかったことにする-。弁護側はむごい虐待を受けて育った被告の性格特性から弁論を試みたが…。

「てるみん」と呼ばれて 

 始まりは大阪府門真市のシェアハウス。27年8月、すでに男女4人が暮らしていたその部屋に、後から森島被告が引っ越してきた。「てるみん」と、あだ名で親しげに呼びかけてくれるルームメートの1人が、被害者の渡辺さんだった。

 被告は短期の派遣業務や風俗の仕事をすることもあったものの、定職には就いていなかった。借金もあった。

 「部屋にいることが多くて、あまり会わなかった」と、シェアハウスで同居していた男性は証人尋問で回想した。被告はネット中毒だった。被告人質問で「夕方から朝方まで、ネットをして過ごしていた」と答えた。

 弁護人「どんなジャンルに関心があった」

 被告「グロテスクなものが好きだった」

なりすましの犯罪

 シェアハウスに越してまもなく、森島被告はある犯罪に手を染めた。渡辺さんへの「なりすまし」だった。

 渡辺さんの免許証を入手し、消費者金融で11回キャッシングした。銀行のキャッシュカードも作り、計61万円を引き出した。

 「ばれると思わなかった」。犯行手口は大胆そのものだ。化粧をして、めがねを外し、つけまつげをした。逆に言えば、その程度のなりすましだった。だが自信に満ちた態度が、周囲の目をくらませた。

 「窓口では堂々としていて、まさか他人ではないと思った。(免許証の顔写真と違っていたとしても)女性は化粧と雰囲気で変わるので…」

 銀行の窓口担当者は供述調書でこう述べている。

 だが、なりすましにも限界があった。不正に入手したカードは融資限度額に達し、新たな借り入れができなくなった。借金の額は合計で約220万円に達し、返せるめどはなかった。

 検察側は、この犯罪と借金の存在が渡辺さん殺害の主たる動機だったとみる。そして渡辺さんの痕跡をこの世から消し去る「完全犯罪」を計画した-。

イブの日の事件

 その年の11月、森島被告は早くもシェアハウスから転居し、近くのマンションに移った。そして12月24日のクリスマスイブに事件が起きる。

 被告自ら、シェアハウス仲間とのクリスマスパーティーを企画。その準備をしようと渡辺さんを誘った。スーパーで買い物をして、2人で被告の自宅マンションに立ち寄った。

 そのころ、シェアハウスの男性が渡辺さんに電話をかけると、渡辺さんはこう応じた。

 「今、てるみん家(ち)いて、もうちょっと時間がかかる」

 それから10~15分後、被告が単独でシェアハウスにやってきた。「佐和ちゃんは、まだ部屋で準備している」と言って、5分ほどで立ち去った。

 ほどなくして、男性の端末にLINE(無料通信アプリ)のメッセージが届いた。差出人は渡辺さんだった。

 《ごめん遅くなって。急用で帰れなくなった》

 今からパーティーなのに。まさかのドタキャンだった。何かあったのかと、男性は被告に電話をかけた。

 「帰ってきたら佐和ちゃんがいない。きょう元カレから何回か電話があったぽくて、会いに行ったんちゃうかな」

 メッセージは、渡辺さんの携帯から被告が送ったものだった。すでに渡辺さんは息絶えていた。

 判決によると、被告は24日午後7時52分から同25日午後0時55分ごろまでの間に、自室で渡辺さんの首を絞め、窒息死させた。

 一方、被告側は、自宅に戻ると渡辺さんが倒れていたと主張。シェアハウスまで行って戻ってくるまでの「空白の15分間」に第三者が殺害したか、もしくは病死だった可能性を指摘している。

3日かけて遺体をバラバラに

 さて、ここから事件の猟奇性が際立ってくる。以後の死体損壊・遺棄については、森島被告側も認めているのだ。

 25日午後、被告は近くの大型量販店に向かった。そこで冷凍庫▽においを取る砂▽トイレ用洗剤▽ペティナイフ▽折りたたみ式のこぎり▽まな板▽バケツ▽ごみ袋-を購入。さらに生ごみ処理機、フードプロセッサーも買った。

 それから3日かけて、遺体をバラバラにした。一部は生ごみ処理機にかけ、マンション敷地内のごみ置き場に捨てた。圧力鍋でゆでたりもした。遺体をなくしてしまうことで、失踪に見せかけようとした。

 だが、その計画はあっけなく破綻した。

 12月29日、渡辺さんの行方不明届の提出を受けた大阪府警は、被告のマンションを訪問し遺体の一部を発見。被告を逮捕した。

赤ちゃんをダムに

 弁護側によると、森島被告は大阪府寝屋川市出身。小学3年のときに広島県福山市に引っ越した。家族は母親と弟2人。高校を卒業するまで福山市で暮らしていた。

 母親の内縁の夫から、ひどい虐待を受けて育った。幼いころは3時間正座させられ、バッドで殴られることもあった。

 小学5年のころからは、性的虐待に変わった。しかし母親が悲しむと思い、打ち明けなかった。そして高校1年の夏に妊娠。母の内縁夫からは「堕ろしてくれ」と言われたが、すでに中絶できる時期を過ぎていた。

 結局、家族にばれないように自宅で出産した。死産だった、としている。赤ちゃんは男がダムに捨てた。

 つらく、悲しいことがあれば、なかったことにする。それが被告の性格なのだと弁護人は主張した。飼い犬が死んだとき、母親を悲しませたくなくて、死んだとは言えず、隠したこともあった。

 弁護側は「渡辺さんの死は突然のことで、どうしていいか分からず、なかったことにしようとした」と訴えた。

今を形作るのは…

 森島被告が渡辺さんを殺害したとする直接的な証拠はない。検察側は状況証拠を積み重ねた。

 その一つが、ネット中毒という被告の検索履歴だ。事件直前に打ち込んだキーワードは以下のようなものだった。

 《人間解体》

 《死体の廃棄方法 ゴミ業者ばれる?》

 《骨を粉々にできる》

 《気絶させる方法》

 《人の殺し方 完全犯罪》

 《失踪したら、口座は?》

 《睡眠薬大量に飲むと》

 渡辺さんの遺体からは、被告が直近に処方された睡眠薬成分が検出された。

 一連の履歴について、検察側は「犯行の計画としか考えられない」と指摘した。弁護側は「ネット中毒の人にとって、検索は日常のこと。殺害計画と結びつけるのは飛躍だ」と反論した。

 6月30日、裁判員裁判の判決で無期懲役が言い渡された。白いハンカチを握りしめて証言台の前に座った被告は、うなだれて判決文を聞いた。

 直後のなりすましメッセージなど、前後の状況から殺害への関与を認定。極めて残虐な手口を踏まえれば「人格特性からは到底説明できない」とした。

 遺体はいまだに両親のもとに帰ってきていない。被害者参加した渡辺さんの父親はこう訴えた。

 「1日何回も思い出す。小さい女の子、若い女性、すべて佐和子と重なる。どうして殺そうと思ったのか。なにか悪いことをしたのか」

 「不遇な境遇だったが、今はあなた自身がつくりあげた」

 被告は7月10日、判決を不服として控訴した。