あきれた「ブラックボックス病院」 前事務方トップの〝カネまみれ〟と「若い女性」

衝撃事件の核心
大阪府東大阪市立総合病院の経費が築山秀次被告側に流れた構図。大阪府警が摘発した贈収賄事件を機に、前事務方トップの〝サイドビジネス〟による不正が露呈した

 公立病院で長年にわたり権勢を振るった男の末路は意外にもあっけなかった。大阪府東大阪市立総合病院(現・市立東大阪医療センター)の庭園整備工事で便宜を図る見返りに、出入り業者から現金50万円を受け取ったとして、5月末に収賄容疑で逮捕され、その後起訴された前病院事務局長。実家は裕福な資産家として知られていたが、自ら所有する倉庫を月額数十万円で病院にまた貸しする〝サイドビジネス〟にも手を染めるなど、立場を悪用して病院予算でやりたい放題の限りを尽くしていたようだ。別の業者からは旅行券などを複数回にわたって受け取っていた疑いも判明している。およそ「資産家」とはかけ離れたカネへの執着にはあきれるしかない。

頓挫…50万円〝取られ損〟

 「庭の管理は〝築山(つきやま)マター〟だった」

 ある病院幹部は、病院の事務方トップだった築山秀次(しゅうじ)被告(59)が持っていた権力をこう表現する。

 事件の舞台となったのは、病院1階ロビーの庭園改修工事。人工樹木の「ハワイアンフィカス」を配置するなど庭園を南国風に造り替える計画だった。

 起訴状などによると、築山被告は昨年4月ごろ、出入り業者だった同市内の造園工事会社「ホソカワストーンズ」社長、細川鉄夫被告(68)=贈賄罪で起訴=に工事の受注を持ちかけた。条件は「50万円」の袖の下。後日、市内の喫茶店で細川被告と再会し、賄賂として現金50万円を受け取ったとされる。

 病院が独立行政法人に移行する昨年10月までに庭園を造り替える予定だったが、工事が始まる矢先、病院では別の職員による1億5千万円の公金着服疑惑が発覚。上司として対応に追われた築山被告は、庭園整備どころではなくなり、工事計画は最終的に頓挫した。結局、ホ社側にとって現金50万円は〝取られ損〟の形となった。

 工事計画は、まさに築山被告のみぞ知る「ブラックボックス」の状態だったようだ。計画段階で交わしたはずの契約関係書類さえ、病院には一切残っていなかったのだ。

 病院幹部は「ほかの職員も契約の中身をほとんど知らされていなかった」と明かす。

浮かび上がった「ただならぬ関係」

 捜査関係者によると、築山被告は、庭園工事と無関係の別の契約業者の下請けに紛れ込ませる形で、ホ社側に工事代金を支払おうと画策していた。別の契約業者には予算の枠内で実際の費用よりも庭園整備工事分を上積みした額を支払うことで、つじつまを合わせる手はずだったという。

 なぜ築山被告は、病院がホ社と直接契約を結ぶことを避けたのか。背景には、両者の「ただならぬ関係」が浮かび上がる。

 《患者さまの回復を願う無限大の気持ちと思いやりをイメージしています》

 入院患者らが集まる憩いの場として利用され、石を加工した机や椅子が並ぶ病院4階の中庭。出入口付近の石碑には、患者へのメッセージとともに、「HOSOKAWA」の文字が刻まれている。

 今回の汚職事件が明らかになる約10年前、ホ社は4階中庭の整備工事も請け負っていた。病院関係者によると、その後、築山被告はホ社との関係を深め、樹木の剪定(せんてい)など庭園の手入れ全般を請け負わせるようになったとされる。

 病院関係者は「4階の中庭をデザインしたのは(ホ社従業員の)若い女性のようだ。その後も女性は病院によく出入りし、築山被告とかなり懇意だったらしい。だから(ホ社に)確実に仕事を回す必要があっただろう」と推測する。

 周囲も何となく感づいていた特別な関係。築山被告も安易に表沙汰にしたくなかったのかもしれない。

別の「儲けスキーム」も

 築山被告が吸った甘い汁はホ社からの賄賂だけではなかった。

 関係者によると、築山被告が自宅近くに所有する倉庫を、複数の業者を経由する形で病院側に利用させ、病院側の公金から年間200万円以上の賃料を得ていたというのだ。

 このスキームで重要な役割を果たしていたのが地元の電気設備会社。十数年前から病院の電気設備の修繕工事を請け負い、築山被告とは古くから付き合いがあったという。

 同社は築山被告から月額約20万円で倉庫を借り、約1万5千円の手数料を上乗せした上で、名古屋市内の人材派遣会社に転貸。派遣会社が病院に約23万円で貸していた。派遣会社の関係者は「築山被告から『公務員が病院と直接取引するのは具合が悪いから(伝票を)通してくれ』と頼まれた」と話す。病院と築山被告の間に2社を介在させることで、〝利益誘導〟が発覚しないよう工作していたというわけだ。

 倉庫は古いベッドなど病院機材の保管場所として使用していた。契約は昨年9月末まで継続し、病院側から1千万円以上の公金が築山被告に流れたとみられる。

 さらに、電気設備会社は築山被告から「出張に使う」「医師への手土産が必要」などと金品を要求され、旅行券や1個数千円の手土産を複数回渡していたとされる。

 会社は旅行券や手土産の代金について、修繕工事費など別の費用に紛れ込ませて病院に請求していた。同社関係者は「ほかの職員のいる前で頼まれていたので、周囲も知っていたはずだ」と訴える。

不祥事と決別…本当?

 東大阪市では平成27年10月、職員の親睦会費を着服したとして、土木部の幹部職員が逮捕。同年11月には建築部の部長級職員が、専門業者から200万円の賄賂を受領した容疑で逮捕されるなど、カネをめぐる幹部職員の不祥事が絶えない。いずれも、幹部職員への権限集中が事件の背景にあったとみられる。

 築山容疑者は15年以降、病院に通算12年以上も勤務。25年4月から昨年9月末までは事務方トップの事務局長を務めていた。

 同じ職場で長期間勤務させた理由について、ある市幹部は「病院は医師や看護師といった医療職が運営の主体を担っている。築山被告は事務方の中でも特に医療分野に精通しており、医療職の考えを事務職に『通訳』する存在として重用せざるを得なかった。築山被告に代わる人物がいなかった」と釈明する。

 築山被告は市の聞き取りに対し、収賄の事実を認めたという。市は6月29日、築山被告を懲戒免職にした。今後、継続的なコンプライアンスの推進強化に加え、新たな再発防止策として公益通報者保護制度の拡充を進める考えだ。

 築山被告の後任を務める田中健司事務局長は「事務方トップ自らが言葉巧みに周囲を欺き、私腹を肥やしていたことに怒りを覚える」と指弾した上で、「業者との契約の透明化を図る対策を軸に不適切な取引を一掃し、市民の皆様の信頼回復に努めたい」と話す。

 市はこの数年で職員の不祥事が起きるたび、繰り返し謝罪と改革への意気込みを発してきた。果たして本当にカネをめぐる不正と決別できるのか。市民からは早くも「どうせ、また逮捕者が出るやろ」との声が漏れ聞こえる。