「フェラーリは口説きの道具」「将来は孤独死」元カレをネットで実名中傷…「公益性」めぐるドロ沼訴訟

衝撃事件の核心
インターネットの巨大掲示板に元カレの男性への中傷を実名で書き込んだ女性。男性は当然、提訴に踏み切ったが、女性も精神的苦痛を受けたとして反訴に打って出て…

 「一生独身で生きていって」。インターネットの巨大掲示板に書き込まれた誹謗中傷の数々。大阪府内に住む内科医の男性は、自身が名指しされていることを知り、息をのんだ。発信者情報の開示を受けて特定した書き込みの主は元交際相手。怒った男性は名誉毀損(きそん)にあたるとして、約320万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。一方の元交際相手も「結婚前提で肉体関係を持ったのに一方的に捨てられた」と慰謝料を求めて反訴。掲示板への書き込みは第二、第三の〝被害者〟を生み出さないためのもので「公益性があった」と主張した。泥沼訴訟の行方は-。

出会いは会員制バー

 訴訟のやりとりから、2人の出会いを振り返る。

 店名もなく、看板も出していない、大阪市内のとある会員制のバー。隠れ家的な雰囲気のその店内で、内科医の柳田良太さん(45)=仮名=は、当時OLだった本村麻紀さん(29)=同=と知り合った。

 「すごい僕のタイプ」

 「この後、飲みに行こうよ」

 まだあまり会話を交わしていないうちから、積極攻勢に出る良太さん。麻紀さんは「軽い」との印象を受けつつも、結局2人で飲みに行った。

 午前3時ごろまで別のシャンパンバーで飲み、良太さんは麻紀さんの自宅までタクシーで送った。2人は別れ際にメールアドレスと電話番号を交換。「女性慣れした人」。麻紀さんはそう思った。

 ほどなくして、良太さんから食事やドライブの誘いが来た。

 「今どこ? 迎えにいくよ」

 麻紀さんは「一度くらいなら」と応じることにした。

 良太さんの愛車はフェラーリだった。2人は神戸、芦屋、夙川などでドライブデートを重ねた。優しく紳士的だった良太さんと、ごく自然な形で交際が始まった。麻紀さんの誕生日には良太さんが40万円以上するネックレスをプレゼントし、高級レストランでお祝いもした。

 「麻紀と結婚できたら幸せやわ」

 26年8月初旬ごろ、良太さんはこうした言葉を口にするようになり、麻紀さんも意識するようになった。

 ただ、幸せな時間は長くは続かなかった。

甘い日々の終焉

 交際から数カ月で、2人の関係には亀裂が生じ始めた。

 良太さん側の主張によると、麻紀さんは交際期間中にも会員制のバーに出入りし、食事会など複数の出会いの場に参加していた。良太さんはこうした行動に嫌悪感を覚え、金銭感覚にも大きな不安を感じていた。

 一方の麻紀さんも不信感を募らせていた。

 大阪の繁華街・北新地で良太さんが派手な服装の女性と腕を組んで歩いているところを目撃したのだ。二股をかけられているのでは-。そんな不安もあり、麻紀さんは良太さんに「結婚はしないの」と尋ねた。

 すると、良太さんからは「何で俺の稼いだお金で食べさせなあかんの」と言下に否定されたというのだ。やがて良太さんの家に入れてもらえなくなり、2人は破局した。

「いらなくなった玩具を捨てるように…」

 その後、麻紀さんは別の男性と交際を始め、数カ月で結婚した。問題の掲示板への投稿はその間に行われた。要旨以下のようなものだった。

 《フェラーリは口説きの道具。車についてはド素人w》

 《自分のことしか興味がない》

 《生気のない魚の目》

 《将来は孤独死》

 良太さんの実名をさらしたうえでの書き込み。なぜこんな行為に及んだのか。

 麻紀さんの訴えによれば、良太さんとの関係を友人に相談すると「女遊びで悪評が立っている」と教えられ、すでに良太さんを非難する掲示板ができていることが分かった。

 「ひとしきり付き合いを楽しむと、いらなくなった玩具を捨てるように私に別れ話をもちかけた」とひどく傷ついていた麻紀さんは「私のようにつらい思いをする女性はもうたくさん」と、自分も書き込みに連なることを決意したという。

裁判所は「公益目的」認めず一蹴

 良太さんにしてみれば、しゃれでは済まない。

 自分の名前をネットで検索すると、こうした誹謗中傷が表示されてしまうからだ。患者や職場の同僚が閲覧すれば社会的評価や名誉が著しく損なわれるとして、良太さんは訴訟を起こした。

 一方の麻紀さんも交際中に大きな精神的苦痛を受けたとして反訴。書き込みは〝被害防止〟のためであり「公共性を有し、公益目的に基づいていた」と反論した。

 迎えた判決で、裁判所は麻紀さんの全面敗訴を言い渡した。書き込みは単なる腹いせに過ぎないと判断したのだ。

 判決はまず書き込みについて「原告(良太さん)の社会的評価を低下させる危険を有し、一部は社会通念上許容される限度を超えている」と指摘した。

 「公共性がある」とした麻紀さん側の主張に対しては「一私人の人格的な問題性をあげつらい、容貌を揶揄(やゆ)するもので、公共性が含まれることはなく、公益目的に基づくものとは認められない」と一蹴した。そして良太さんに約100万円を支払うよう命じた。

 双方控訴せず、判決は確定した。

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