「うちには神様も仏様もいる」〝韓流〟宗教法人の怪ビジネス 残土処分が事件化、川汚染で法廷闘争

衝撃事件の核心
宗教法人「成田山不動院」河内長野別院には、〝本家〟との関係を連想させる「成田山」の表示がある不動明王像があった=5月、大阪府河内長野市

 「坊主丸儲け」というわけにはいかなかった。大阪府河内長野市の山中にある宗教法人「成田山不動院」河内長野別院の所有地に無許可で建設残土を捨てたとして、建設会社の元会長や法人幹部の僧侶らが5月、府砂防指定地管理条例違反容疑などで大阪府警に逮捕された。法人は韓国籍の女性が代表を務め、著名な成田山新勝寺(千葉県)とは無関係。地元でもほとんど知られていない存在で、信者不足から資金不足に陥った末に「残土処分」という怪しげなビジネスに手を出したとみられる。事件では建設会社の元会長が起訴された一方、僧侶は起訴猶予という結果となった。ただ、地元・河内長野市は現地の土砂崩れで川が濁り、水道水を取水できなくなったとして法人などを提訴した。府も違法建築を指摘するなど、この〝韓流〟法人をめぐるトラブルは絶えない。(井上浩平)

山中にダンプ行列の異様

 「ダンプカーが何台も出入りして崖に土砂を捨てている」

 昨年7月中旬、住民から府などに寄せられた情報が始まりだった。河内長野市日野の絶壁に建つ宗教法人「成田山不動院」河内長野別院。普段は交通量の少ない山道に、土砂を満載したダンプカーが行列を作る異様な光景が見られた。

 現場は開発時に府の許可が必要な砂防指定地。府と市は法人幹部で別院に勤務する男性僧侶(67)に何度も行政指導したものの、「崩れた参道を直しているだけ」と言い張り、搬入は止まらなかった。

 ところが同9月下旬、搬入した残土のうち約3千立方メートルが崩落。約200メートル下の1級河川「石川」に流れ込んだ。川は一部がせき止められ、白く濁った。

 こんな状況でも男性僧侶に反省の色はなかったという。府の担当者は「土砂の崩落に全く気付いておらず、事態を聞いても危機感はない様子だった。『土砂は搬入していない』とまで主張した」と振り返る。

 府は崩落直後、河川の原状回復を要請。残土搬入をとりまとめた建設会社が10月から、重機を使って川底などの土砂を土嚢に詰める作業を始めたが、数日で姿を消した。大阪市旭区にあった事務所ももぬけの殻となっていた。

 男性僧侶は「建設会社と連絡が取れなくなり、困っている」と被害者の立場を強調した。この態度には当時、すでに捜査を進めていた府警幹部も「建設会社が勝手にやったこと、では済まされない」と憤った。

成田山新勝寺と「全然関係ない」

 宗教法人は、鹿児島県の登記上の本部に実態がなく、大阪府東大阪市に実質的な本部がある。代表は韓国籍の女性。ホームページでは「身近な問題、病気、商売、出会い、芸能、先祖供養、改名…さまざまなご相談に乗ります」とうたった上、「健康器具などの物品は一切販売しておりませんのでご安心ください」と良心的な宗教であることをアピールする。

 ただ、詳しい教義などは分からない。男性僧侶は取材に「うちには神様もいれば仏様もいるよ」と臆面もなく答えた。法人名から、つい著名な成田山新勝寺との関係を連想してしまうが、男性僧侶は「アレは全然関係ない」とあっさり否定した。

 切り立った崖付近にある別院は幹線道路からは全体が見渡せず、近隣住民にとって不気味な存在だった。近くの40代女性は「よく分からない施設があると思っていたが、事件が起きて初めて宗教施設だと知った。信仰している人なんて聞いたことがない」と語る。

 法人関係者によると、別院は約40年前から存在していたという。女性信者は「昔、高野山で修行していたお坊さんがこの場所にたどり着き、いつまでもお経を唱えていた。それを見ていた住民たちが心を動かされ、建物を建ててあげたのです」と真顔で話す。

 別院には信者が数人しか出入りせず、檀家もほとんどいないため、資金繰りに困り果てていたようだ。

 ある信者は「韓国のやり方が入ってきておかしくなった」と悔しそうな表情を見せた。

まさかの「交通安全…」

 一体、法人内部で何が起きたのか。

 法人関係者によると、別院には数年前、韓国籍の女性代表の弟が転がり込み、「住職」を名乗って信者らに権勢をふるい出したという。法人幹部の男性僧侶はかつて貿易会社を営んでいたが、代表の教えに心酔して出家。平成26年末ごろから法人で本格的に活動を始め、別院で「住職」を支えるようになった。

 そんな別院を今春、訪れた。「座禅修行中」の注意書きが下がった入り口を進むと、地蔵や七福神などの像が通路沿いに数百体並ぶ。不動明王像の前には「交通安全 成田山」と“本家”と見まがう説明書きも。境内はちょうちんで彩られ、仏像や銅像のテーマパークのようだが参拝者はいない。

 法人幹部によると、信者や参拝客を増やそうと、ペット霊園の建設を計画したが頓挫。最近では急増する訪日外国人に着目し、座禅体験ができることをうたい文句に、1泊数千円で「民泊」を運営していた。ただ、慢性的な資金不足は解消できず、資金獲得の手段として違法な残土処分に手を染めたとみられる。

 「建設会社を別院に連れてきたのは男性僧侶だが、実際に工事(残土搬入)の契約にサインをしたのは住職だった」。ある信者はそう証言した。

「お布施」悪用の形跡も

 建設会社は昨年7月以降、別院での残土処分に必要なチケット「残土券」を発行。10トンダンプ1台当たり3万円が相場の残土券を1万円程度の格安価格で運搬業者などにさばいた。同年9月に土砂崩れが起きるまで、ダンプカーの列が尽きることはなかった。

 捜査関係者によると、建設会社の元会長らは残土搬入の直前に入信。男性僧侶らは、宗教法人の税制上の優遇措置を悪用しようとしたのか、残土の処分代として受け取った現金を「お布施」や「寄付金」として処理していたという。

 別院には処分代として約400万円が入ったが、男性僧侶は「私が受け取ったのは60万円。それ以上に土砂の撤去費用がかかった」と主張。ある信者は「残りのお金は住職がもっていった」と明かした。

 一連の事件では今年5月、元会長ら建設会社関係者5人と男性僧侶の計6人が府警に逮捕されたが、捜査線上にも浮上していたはずの住職は含まれていなかった。しかも、最終的に起訴されたのは元会長だけで、男性僧侶は起訴猶予となった。

断末魔「金さえあれば」

 川底にたまった土砂も結局、行政の努力である程度は除去されたが、すべての問題が解決したわけではない。

 河内長野市は5月、土砂崩落で水道水の取水ができず、府水道企業団から購入せざるを得なくなったとして、別院の住職と男性僧侶、同法人を相手取り、約740万円の損害賠償を求めて提訴したのだ。法人の女性代表は「取材はお断り」として、だんまりを決め込んでいる。

 さらに、府は6月12日、別院の事務所や納骨堂などが無許可で建てられた違法建築物だとして、同法人に都市計画法に基づき使用禁止命令を出した。実はこの問題も昨年秋の問題発覚当初から指摘されており、松井一郎知事は「違法建築は撤去すべきだと言い続ける。人の道を説くのが宗教の道ですから、ルール違反をやったもの勝ちという態度は、そもそも宗教法人の理念としておかしい」と糾弾していた。

 事件後も別院に残る女性信者は「神様に毎日、『何とかしてください』とお祈りしている。ここには邪心がいるので払いのけて、お寺ができた当時のすがすがしい状態に戻したい」と話す。とはいえ、金欠状態ではなすすべがなく、「お金さえあれば…。お金の力を今、ひしひしと感じている」と声を絞り出した。

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