「○○○は最低最悪の人間」〝美形〟研修医が病院のトイレに貼り回った中傷ビラ ネットに乱れ飛んだ憶測

衝撃事件の核心
知人男性を中傷するビラを病院のトイレに貼ってまわったとして逮捕された女性研修医。テレビ番組にも出演する〝美形女医〟だっただけに、インターネット上では事件の動機や人物像についてさまざまな憶測が飛び交う騒動に発展した

 エリート街道をひた走ってきたはずの女性研修医に何が起きたのか。大阪市内の病院のトイレに知人男性を中傷するビラを貼ってまわったとして、大阪府警は6月上旬、名誉毀損(きそん)の疑いで、奈良県内に住む女性研修医(25)を逮捕した。後に示談が成立して不起訴となったものの、出演を予定していたNHKの番組は放送中止となり、インターネット上に女性研修医の顔写真や経歴が拡散。ネット掲示板には今回の事件のみならず、プライベートについてもさまざまな憶測が飛ぶなど、計り知れない影響があった。女性研修医は釈放後、自宅で謹慎し、憔悴(しょうすい)しきっているという。彼女の〝暴走〟がもたらした代償はあまりにも大きかった。

ビラに「存在価値ない」

 5月30日、大阪市内の病院内の複数の女子トイレに、A4判の用紙が貼り付けられていたのを病院関係者が見つけた。

 「○○○(20歳代の男性の実名)は最低最悪の人間です。存在価値がありません。」

 すぐに病院関係者が実名を挙げられた男性に連絡。その日のうちに男性は警察署に駆け込んだ。男性は「紙を見て怖くなった」として被害届を提出。府警は名誉毀損容疑で捜査を始めた。

 防犯カメラの映像などから、奈良県内の公立病院に勤めていた女性研修医が浮上。被害男性の知人だった。女性研修医は6月4日、名誉毀損容疑で逮捕された。「すべてその通り、間違いありません」と素直に容疑を認めたという。

 女性研修医を駆り立てたものは何だったのか-。動機などの解明に向けて捜査が始まった直後の7日、被害届は取り下げられ、女性研修医は釈放された。示談も成立し、20日には不起訴となった。

 府警は女性研修医の逮捕を発表した際、被害男性との関係や犯行現場などの具体的な情報の公表を控えた。捜査関係者によると、こうした措置は被害男性側の強い要望があったためという。釈放もあって事件の詳しい背景は分からずじまいで、捜査幹部も「示談になったので、何が原因だったのか、きちんと捜査するまでには至らなかった」と明かす。

番組放送3日前の逮捕劇

 女性研修医の逮捕は、思わぬところに混乱をもたらした。

 実は、逮捕の3日後にあたる6月7日の放送予定だったNHKのテレビ番組「総合診療医ドクターG」に出演予定だったのだ。

 NHKのホームページによると、同番組は、誰にでも思い当たるような症状で、見逃しがちな難しい病気について、実際にあった症例をもとに、全国各地で奮闘するえりすぐりの若き研修医たちが診断するという人気番組だ。

 女性研修医が出演予定だったのは、「立ちくらみでふらつく」と訴える患者の病名を3人の研修医によるカンファレンス(話し合い)で突き止めていくという内容だった。

 NHK広報局によると、女性研修医の逮捕を受け、7日の放送は急遽(きゅうきょ)、再放送分に差し替えられた。事件については警察の発表で覚知したといい、「事件を受けて総合的に判断し、番組を差し替えた。今後の放送予定は未定」と説明した。

 収録も終え、放送が間近に迫った日の突然の逮捕劇に、担当者は「今回のようなことはあまり例がない」とコメントした。

患者思い、熱心な先生なのに

 女性研修医が勤める奈良県内の公立病院の担当者によると、女性研修医は昨年から同病院で初期臨床研修医として勤務を始めた。これまで内科や救急などで研修を重ねてきたという。

 「地元で医師として働けることはこの上ない喜び」「充実した研修生活を送っています」「医療従事者という職業は、想像以上に大きな責任感を伴うもの」

 病院のホームページに掲載された医師臨床研修の案内には、女性研修医が顔写真付きで研修医としての仕事を熱く語っている。

 病院によると、事件が起きた5月30日は、奈良県内の別の病院で研修予定だった。釈放後、女性研修医とはほとんど話ができておらず、事件当日の状況は不明のまま。女性研修医は内部処分が出るまで自宅で謹慎を続けるという。

 担当者は「患者さん思いの熱心な先生なので、事件を聞いて驚いた。本人も今は相当落ち込んでいて、憔悴しているようだ」と話した。

ネット民はヒートアップ

 「なんでこんな陰湿なことをしたのか」

 「いくらプライベートでつらいことがあったとしても、逮捕につながるようなことをしてしまうと患者さんが不安になる」

 女性研修医が逮捕されたとの報道が流れると、即座にインターネット上ではさまざまな声が上がった。捜査や報道で事件の動機が解明されず、謎だけが残っただけに、「痴情のもつれ説」を中心に憶測が乱れ飛んだ。

 女性研修医を「特定した」として、SNSなどから引用した顔写真や経歴がネット上に掲載されると、書き込みはヒートアップ。「かわいらしい顔をしているのに」「事情もなく悪いことをするような顔じゃない」など、容姿が〝美形〟というだけで擁護する人まで現れた。

 逮捕から3日で釈放され、不起訴になったにもかかわらず、ネット上には依然、今回の事件とともに、女性研修医のプライバシーが掲載され続けている。

 捜査関係者は「こんな行動に出ること自体、何か思いつめるものがあったのかもしれないが…。ここまで事態が大きくなってしまったのは、正直いたたまれない」と、女性研修医の今後を心配する。

 ただ、ストーカーまがいのような今回の事件は、一歩間違えれば殺人事件に発展するケースもある。警察としては当然、放置するわけにはいかない。

 「被害男性は『ここまでするのか』と怖くなって被害届を出したのかもしれないが、知らない仲でもないし、冷静になって、すぐ被害届を取り下げたのだろう。それでも、取り返しのつかない事態に発展する前に摘発できてよかった」

 捜査幹部はこう話し、胸をなで下ろした。

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