対局相手・澤田六段の師匠は「伝説の棋士」村山九段育てた名伯楽

藤井聡太四段28連勝
子ども将棋教室で指導する森信雄七段=兵庫県宝塚市

 藤井聡太四段(14)の活躍で注目が集まる将棋界で、21日に歴代1位タイの28連勝を果たした藤井四段と対局したのは澤田真吾六段(25)。その師匠は、愛媛県生まれで5月に第一線を退いた森信雄七段(65)だ。自らの勝負より伝説の棋士、故村山聖九段らを育てた名伯楽として知られる。「僕を追い越すのが弟子入りの条件」と、引退後も「師匠業」は続投している。

 「何のために攻めたか考えんとな」「うん、なるほど」。森さんが兵庫県宝塚市で月2回開く子ども将棋教室。初心者の小学生約20人が集まる。森さんは3人同時に対局し、先をよく読んで指した子に笑顔を見せた。

 幼い頃はいじめられっ子だったという。高校卒業後、工場勤めをしたが、ミスが続き「役立たず」と思い込んだ。唯一の取りえだったのが将棋。24歳で棋士になった。しかし「成績が上がらず、次の目標もなかった」とマージャンに夢中になった。

 そんな中、30歳のとき初めての弟子になったのが当時13歳の村山九段。「とにかくかわいかった」。腎臓に重病を抱え29歳で亡くなるまでの短い人生に向き合いながら、将棋に懸ける姿に「勝負への情熱が違う」とプロとして恥ずかしくなり、「師匠として将棋に関わっていこう」と考えるようになった。

 指導で重視するのは「自己コントロール能力」。棋士には、生活リズムが乱れていないか確認し、棋譜を見て感想を伝える。棋士を養成する奨励会所属の弟子は月4回、自宅に集め研究会を開くが、直接の対局はほとんどしない。「教えてもらう」という姿勢になるのを恐れるからだ。

 「人はつらい時でないと素直に助言を聞けない」。弟子ごとに性格や対局の進め方を観察し、「ここぞ」というタイミングで弱点を指摘する。「真剣に丁寧に接すれば、師匠だけが持つ『魔法のつえ』が使えるんです」

 引退後も、初心者からプロまで教室や研究会を通じ成長を見守る。山崎隆之八段(36)や竜王のタイトル獲得経験もある糸谷哲郎八段(28)ら、森さんを超える目覚ましい成績の弟子もいるが、嫉妬はと問われても「全くない」と言い切る。「強くなる、その可能性が面白いんです」。